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15 酒場アルドーニ・シニカと実年齢

席につきながら周りの様子をうかがう。


客の容姿、年齢、性別はバラバラで十代後半ぐらいの若い人間から上は見た目八十上のおじいさんまでいる。


この店は特にターゲットというのもないのかと思っていたら男女問わず全員が共通して武装をしていることに気づく。


「ここには普通のモンスター討伐依頼が来たりするのでそれを受ける人たちが集まるんです」


俺の考えを知ってか知らずかシャーネが説明を入れてくれる。


「そうなんだ。それってやっぱり表向きが傭兵ギルドだから?」


「はい。まあ、そうすることで上に根回しをしてもらってるってのもあるんですよ」


俺は少しわからず「?」と首を傾げていると後ろから肩を軽く叩かれる。


振り替えると同時に頬に指と思われるものが刺さった。


「こんにちは、コウヤ」


「あ、はい、どうも・・・」


満足そうに笑うシニカさんに俺は苦笑いで返す。


「シャーネさんの言う上っていうのはね?ギルド連盟のことよ」


「ギルド連盟?」


教えてほしいという意図も込めて復唱する。


シニカさんは予想通りというか、楽しそうに答えてくれる。


「アタシたちが存続するためには土地とお金が必要なんだけど商売をするにもその権利とかは全部ギルド連盟が管理してるの。だからアタシたちがギルド連盟に普通より大きなお金を納める代わりに存在の黙認とたまに後始末を手伝ったりしてくれるってわけ」


なんとなくわかった・・・


「・・・あ、あと遮音結界使ったからいいけどあんまり外でこういう話は控えてね?」


「え?、あ、はい。スミマセンデシタ・・・」


付け加えるように注意したシニカさんに頭を下げる。


確かに迂闊だった。自分の立場を考えなければ。


気がつくと何人もの目線がこちらに向いていた。もしかしてまずい状況なのか?


「あ、あの・・・めっさ見られてるんですが、もしかして漏れてましたか?」


俺はシャーネとシニカさん両方に向けて小さい声で問う。


「あぁ、いつものことだから大丈夫よー」


「シニカさん、すごくモテるんですよ!」


明るく言ったシャーネにシニカさんは困ったような顔をしながら目線の方を向く。


「アタシみたいなお婆ちゃんなんて好いても仕方ないと思うのだけど・・・」


ボソッと呟いた言葉に俺は啞然とする。


・・・え?、お婆ちゃん?


見た目はどう考えてもお姉さんのそれだ。胸だってこう・・・しっかりとハリがあるし。


す、少なくともお婆ちゃんには決して見えない。胸を除いても綺麗で艶のある黒髪や真珠のような白い肌からは一切の老いを感じさせなかった。


引っかかることといえば・・・ピンと尖った長い耳だろう。


というかそれがすべてを物語っているといっても過言ではなかった。


「・・・コウヤ?、そんなに見つめて。もしかしてアタシの年齢が気になるの?」


「え?!、い、いえ!。けしてそんなことは・・・」


なんとなくすごい年齢を言ってきそうだがやっぱり少しだけ気になる。


「コウヤになら特別に教えてあげるわ。遮音結界も張りっぱなしだしね」


そう言って俺の耳に顔を近づけてくる。


近い近い近い!!、あれ今日こんなこと多いな!


耳元までゆっくりと口を持ってきてゆっくりと口を開く。


「今年で・・・千二百と少しになるわ」


・・・思っていた十倍はありました本当にありがとうございます。


「アタシは教団ができた当時からここにいるのよ?、誰よりも先輩なんだから」


見た目よりもさらに若々しいいたずらっぽい笑顔でそんなことを言う。


いや、全然笑えないっす・・・


俺は歪な愛想笑いを浮かべながら助けを求めるようにシャーネを見る。


「・・・え!?、そ、そんなにいってたんですか!?」


いや、あなたも知らなかったんかい。


女の子としてはなかなかアウトな驚き方をするシャーネを見て若干気持ちが落ち着く。


「このアルドーニ・シニカも百年前くらいに私が作ったんだけど、常連さんはいまだにアタシが親子三代でやってると思ってるらしいのよ。都合はいいけどさすがに気付かないのにびっくりよね」


いやいや、誰も何百年も生きてるなんて考えないって。しかも実年齢は千年超えだし・・・


「・・・っと、お話が長くなっちゃったわね。アタシはお店の様子を見に来ただけだからもう行くわね。ここのご飯は本当においしいからたくさん食べてね。オススメはクリームシチューよ」


そう言いながら手をひらひらさせて俺たちが入ってきた出入り口の奥へと姿を消した。


嵐が過ぎたかのような静寂と疲労感に襲われ何とも言えない気持ちになる。


「・・・さて、注文しましょうか。光夜さんは何にしますか?」


「クリームシチューにするよ。せっかくオススメされたし」


「わかりました」


そう言ってシャーネは店員を呼んで注文をする。


その後注文を済ませたシャーネと他愛のない話をしながら俺たちは料理が運ばれてくるのをまった。

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