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8 長剣と短剣の舞

2018/12/26

誤字修正しました。

やっと出てきたファンタジーらしい魔物に若干の興奮を覚えたのは事実だ。


剣は軽く、敵の動きは少しだが遅く見える程度には反応速度も上がっている。


戦闘特化の身体強化はちゃんと働いているようで何よりだ。


しかし


「くっ!!」


「何してる、その程度の魔物に苦戦してるのか?」


実は今、骸骨の親玉らしきものとタイマンはって若干押されている。


シャーネ曰く「これも訓練だ。この程度勝てなければ秒で死ぬ」とのことなので必死こいて応戦しているが部下の骸骨とは違い大きな曲剣と隙のない踊りのような動きが俺の目を惑わせていた。


骸骨は骨だけとは思えない身のこなしで体を捻じりながら右へ左へと縦横無尽に剣を回す。


それを何とかギリギリで避けたり剣で受け流してはいるのだがそれでも体力の限界はあり少しずつ追い詰められていく。


こんなことなら体力無限とかも欲しかった。


体力自体上がってはいるようだが無限ではないらしい。息切れはするし、集中し続ければ能が焼き切れそうになる。


「っっ!!」


長剣が弾き返され後ろへよろめく。


そこにとどめとだと言わんばかりに骸骨が大曲剣を振りかぶる。


さすがに今度こそ不味いと思う。


その時、自分の腰に短剣がさしてあるのを思い出す。


よろめく足をなんとか踏ん張り身を落としながら左手で短剣を抜く。


大曲剣の刃に短剣を滑らせ衝撃をすべて下に下ろした。


「・・・ほぉ」


シャーネが興味深いと言わんばかりの感嘆の声をあげるが俺はそれに集中している暇などない。


大曲剣を滑らせてできた一瞬の隙をついて胸のコアに長剣を突き立てる。


少しの固い感覚とサクリとした手応えと共に骸骨は消滅し、そこには大曲剣と輝く石が残った。


「はぁ、はぁ・・・なんとか勝てた」


「なかなか面白い剣技だな」


言われてハッとする。何気なく短剣を左手に持って使ったが意外にしっくりくるものだ。


「思い付きだったんですが結構しっくりきて、これなら攻守のバランスが片手剣のみよりとりやすいかと」


そう言って軽く左手の短剣を振ってみる。


この感じならば短剣で相手の攻撃の受け流しと少量の攻撃、長剣で主攻撃と隙の一瞬のとどめと案外バランスがとれている。


偶然にしてはなかなか洗練されていた。


おそらくこれも身体強化の恩恵で上がった技量のお陰なのだろうが。


「いいんじゃないか。お前がそれを一番強いと思うのならばその技を信じてもな」


「はい」


俺はシャーネの言葉に誓いにも似た返事を返す。その時先ほど骸骨の落とした石が目に入りそれを手に取る。


「あの、これは?」


シャーネに問うとすぐに返答が帰って来た。


「それは魔吸鉱という鉱石だ。かなり珍しくその鉱石で作った武器や防具は持ち主の魔法に共鳴する。それが基礎魔法言語エレメンタルに近ければ近いほどその真価が発揮されるそうだ」


「へぇ・・・」


なんかすごくカッコいいというのはわかった。


俺が何気なく魔吸鉱を覗いているとシャーネは呆れたような声で「・・・記念に持っておけばいいんじゃないか?」と言った。


そんなシャーネの反応に少し恥ずかしくなり「そうします」と短く答えて布袋野中に入れた。


「この曲剣はどうします?」


俺が指差したのは魔吸鉱と一緒に落ちた骸骨の大曲剣だ。


「教団に大曲剣を使う奴がいる。土産ついでに持っていってやろう」


そう言ってシャーネは懐から紙の巻物を取り出して広げる。


瞬間、その紙が光を放ちシャーネはそのなかに大曲剣を入れた。


「・・・それは?」

首を傾げる俺を見ながらため息をついて説明を始める。


「これは『ストレージ』という魔法のスクロールだ。スクロールとはある特定の方法で魔法を紙媒体に移植したもののことだ。そんなことも知らないとは・・・お前は一体どこでどうやって生きていたんだ」


「す、すみません」


なんだか理不尽に怒られた気がするが気にしてはいけない。


「便利なんですね」


「まあな。値段は高いが使い勝手が良いし、何より証拠が残りにくい」


なるほど、必須アイテムということか。覚えておこう。


そんな風に思いつつ脳にメモしながら町に向かって歩く。


途中で町行きだと言う馬車を拾いそれに乗って移動していた。


「町についたらなにするんですか?」


馬車の荷台で荷物に挟まれながらシャーネに問う。


「とりあえず教団に戻る。そうしないとお前も私も自由に動けないのだからな」


自由に動けないとはつまり顔バレがまずいということなのだろうか、その辺は教団に行ってみないとわからなさそうだが。


「入団試験もあるし教育係も決めなきゃならない。それにお前も私の仮面の下が気になるだろ?」


彼女の言葉にビクリと肩を震わせる。動揺しすぎだ。


「え、ええ、まあ、一応は・・・」


「まあ、おそらく相当驚くと思うが気にしないでくれ。事情もそのときにしっかり話してやる」


素顔に何かあるのだろうかと再び首を傾げつつ彼女の横を歩く。


ふと前を見るとちょうど少しだけ大きい建物が数件見えてきた。


「あそこが教団の本部があるフゼーメ城外商業町だ」


どうやらあの青い建物が並んでいる町こそが俺がこれから入る暗殺者教団の本拠地らしい。


武者震いか、それとも恐怖か、少しだけ震える左手を右手で押さえながら俺はフゼーメに入った。

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