7 いざ町へ
2018/12/26 誤字修正しました。
もらったライトアーマーを着て腰にナイフ、背中に長剣をつけた俺は倉庫の部屋を出た。見渡すと村長たちの姿はなくシャーネとダインだけになっていた。
どうやらお礼も済んだからさっさと帰ったらしい。
「すみません、遅くなりました」
「ああ、それはいいが・・・兄ちゃん大丈夫か?、顔色悪いが」
「いえ、それよりも少し聞きたいことがあるんですが・・・」
「どうした?、答えれることならなんでも答えるが」
俺は息を整えてから口を開く。
「黄木春吉について教えてもらえますか?」
「は?、ボスのことか?」
俺の質問にダインも後ろに立っていたシャーネも驚いたような様子を見せる。
「知らないのか?、まあ遠くから来たなら仕方ないのかもな」
そういってダインは立ち上がり俺に一枚の写真を手渡した。
そこには黄木を中心にして数十人の人間が並んで写っていた。
「ボスはな、どこからともなく突然現れて俺たちにこう言ったんだ、『儲け話がある』ってな。最初は意味が分かんなかったがあの人はこのへんには絶対ないような娯楽や料理、そして商売方法を教えてくれた。それでできたのがこのハンディマン・ショップだ。チェーン店っていうのもボスがやりだした戦略なんだぜ」
なるほど。つまり黄木は元居た世界の知識を使ってこの店をたった五年で作り上げたのか。
・・・えらくいい身分じゃないか
「・・・そういえば最初に兄ちゃんが売ってくれた服と同じ服を着ていたんだ。だから驚いたんだが聞くのを忘れてたんだよ。兄ちゃんとボスってもしかして知り合いなのか?」
「あ、ああ・・・一応は」
「そうかやっぱり!!、だと思ったんだよ!。ボスが言ってたんだよ、『俺と同じ境遇の奴がいたら知らせて連れてきてくれ』って、いやーまさか本当に現れるとは思わなかった」
そんな上機嫌なダインの言葉に俺は引きつった笑みで返す。
「お前たちは町に行くんだろ?、ならちょうどいい。町の中にあるオウキ商会ってところに行ってくれ。俺の名前を出しとけばたぶん入れると思うから」
「そ、そうですか」
結局最後まで引きつった笑みで会話をしながらおまけに傷薬などももらって店を出た。
「・・・私はお前のことがさっぱりわからん」
「あはは・・・すみません」
どこか呆れ気味のシャーネの声に俺は苦笑いで返す。
そうしながら歩きだそうと足を出したとき、俺の頭に石ころが当たる
「いてっ」
頭をさすりながら石の飛んできた方を見るとそこには俺たちを睨みつけながら涙を流す男の子がいた。
その眼にはまるで部屋でゲームに浸っていた時の俺と同じような怒りと憎悪に濁った瞳が浮かんでいた。
「お父さんを・・・お父さんを返せ!!、この人殺し!!」
キンと響く声で叫ぶ。おそらくはさっきまで狩っていた残党の誰かの息子だろう。
「やめなさい!!、す、すみません!息子はまだ子供なんです!、どうか、どうか命だけは・・・!」
後ろから走ってきた母親と思われる女性が男の子を抱きしめ俺たちに許しを請いながら頭を下げた。
・・・またこの感覚だ。抜けている気がする。
今の俺には普通の人間に必要なはずの罪悪感が浮かんでこなかった。
それがたまらなく気持ち悪かった。
そんな感覚のせいで黙り込んでいた俺の代わりにシャーネが前に出て言った。
「大丈夫だ、慣れている」
この短い言葉にどれだけの重みがあるのかは知らない。
それでも、彼女の言葉にこの場にいる誰もが息を吞んだ。
「・・・いくぞ」
そういって歩き出したシャーネの後ろを何も言わずについていく。
無言で歩くこと数分、気がつけば柵をこえてすでに村の外に出ていた。
「ここからは魔物も出る。いつでも抜刀できるようにしておけ」
「あ、はい」
その言葉とともに再び歩き出したシャーネの横を歩きながら俺は様子を伺う。
なにか話した方がいいのだろうか。
道は彼女のことだろうからおそらくは大丈夫だと思うが・・・
「暗殺者とはこういう仕事だ」
突然口を開いたシャーネの方を見る。
彼女が少しうつむいて見えるのは気のせいじゃないはずだ。
「私たちは大のために小を捨てる。だからこそ、ああやって私たちのせいで不幸になる人間もいるんだ」
ぽつぽつと聞こえる呟きはどこか年相応の雰囲気を帯びている。
「でも・・・救われる人間もいるんですよね」
俺がそう言うと彼女は俺の方を見た。
驚きのせいか何も言わない彼女の代わりに足を止めずに続ける。
「俺は、万人を救いたいとは思わないんですよ。とりあえずは自分が、自分の守りたいものが幸せであってほしいと思うんです。それがたとえ見ず知らずの人間の不幸になるとしても、それが最終的に自分の利益に・・・幸せになるのだとしたら」
俺は今、人として最低なことを言っている。
だが、傲慢なのかもしれないがそれこそが幸福の本質なのだとも思う。
「・・・お前は本当に、暗殺者になるために生まれてきたかのような男だな」
そう言いながら笑うシャーネの声にもう辛さは感じられなかった。
「お前の言う通りだ。迷いは刃を鈍らせる。殺すときは絶対に躊躇うな、いいな?」
「はい」
なんとも明るい声でとんでもなく物騒な会話をする。
だが不思議と不快には感じなかった。
「・・・そういえば仮面はいつ取るんですか?」
ずっと疑問に思っていた。もう入団は決定しているのに素顔を見せてもらっていない。
もう俺に拒否権はないのだから別によくね?、とか思っていた。
「その・・・少し事情があってな、任務が終わるまでは取れないんだ。だから教団につくまでは待ってくれ」
彼女にしてはやけに歯切れが悪い気がする。まあ、別にそこまで彼女のことを知っているわけではないんだが。
そんな風に考え込んでいると横からシャーネが手を出したのでそれを見て止まる。
「・・・魔物だ」
見ると三体の武装した骸骨がこちらに向かって歩いてきていた。
動きからしてこちらに気づいているようだ。
彼女が腰の片手剣を抜くのを見て俺も背中の長剣を抜く。
中学の時にやっていた剣道が役に立つといいが・・・実戦ではそうもいかないだろう。
「・・・来るぞ!!」
俺はシャーネの声を合図に地面を勢い良く蹴った。




