6 出発準備
数時間前、俺は晴れてアサシン(見習い)になった。
・・・はい。
今俺とシャーネが何をしているかというとニネットが残した残党をとことん狩りまくっている。
それも容赦ない蹂躙。
というかシャーネがアホみたいに強い。
本人曰く彼女自身は攻撃魔法を持っていないが自身の姿と足音を完全に消す『インビジブル・アーク』という上位の魔法が使えるらしい。
それが滅茶苦茶に強い。
それはもう敵の後ろから暗殺者よろしくショートソードでサクッと・・・
「・・・おい、何をボサッとしてる。もう片付いたぞ?」
「あ、はい」
とまあ一瞬にして残党を片付けてしまうので俺の出番はほとんどないのである。
俺は何をしているかというとシャーネの邪魔にならないようにちょこちょこ動きながら取り逃しというかおこぼれをもらう感じだ。なんだろう、この圧倒的小物感。
「た、助けていただきありがとうございました」
子供を抱えた女性が俺たちに頭を下げる。
この村の三分の二は普通の村人で先ほど倒した奴らはこの人たちを人質にしていた。で、姿を消してない囮である俺に向かって吠えている間に後ろからシャーネがサクッとやっちゃったわけだ。
というか最初、服とかを売りに行くときに感じてた村の男たちからの目線ってこいつら残党のだったのか・・・
こういうのにも気が付けるようにしなきゃいけないな。
「これで全員だな」
「そうですね、アシミットの部下が持っていた名簿を見る限りこれで全員です」
名前は正直わからなかったが人数的にこれで全員だ。数え間違えてなければ。
とりあえず名簿だけもう一度確認してからシャーネとともに民家を出た。
民家を出るとそこには結構歳がいってそうな背の低いおじいさんが立っていた。
「お二人とも、ありがとうございました。これでまたこの村に旅の方が来ていただけます」
「いえ、私たちは仕事をしただけなので」
おじいさんの言葉にシャーネは丁寧に対応する。
「えっと・・・貴方は?」
俺はとりあえず誰かと尋ねておく。なんだかTRPGをしている気分だ。
いや、死んだらマジで終わりのリアルデスゲームなうえに俺TRPGとかやったことないんだけど。
さらに言うならばTRPGを一緒にやる友達すらいなかった。そもそも前の世界にいたときはそんな心理状態じゃなかったはずだし。
「私はこの村の村長です。お礼に何か私たちにできることはありませんか?」
おぉ、テンプレだぁ。
中学生ぐらいのころはそれなりにRPG系のゲームもやっていたのでここで報酬的なものがもらえるとなんだかワクワクする。
そんな俺をよそにシャーネは答える。
「そうですね・・・ではこいつに装備品を見繕ってやってください」
あ、そういえば俺今ナイフと奪った魔法ぐらいしか戦闘用の装備品ないんだっけ。
実は残党からもいくつか魔法をぶん盗っている。
雷の槍を飛ばせる『雷槍』、魔力を剣の形にして振るう『イマジナリーソード』、痛覚を鈍感にする『ダメージコントロール』の三つだ。
正直『ダメージコントロール』以外は少し使いにくそうな魔法だ。奪っといて酷い言いぐさだ。
「装備品・・・そうですか。このへんには魔物も出ますゆえ、この村で一番いいものをお渡ししましょう」
そう言って歩き出した村長の後ろを俺たちはついていく。
というわけでついたのは俺が制服などを売った万事屋のハンディマン・ショップだった。
「ここはこの村ゆういつの装備屋で町や王国などにも多数出店しているチェーン店なんですよ」
「へぇ・・・」
個人店舗かと思っていたがまさかチェーン店だったとは・・・
そう思いながら店に入るとそこには俺の制服を高値で買ってくれたおっさんがいた。
「やあ、ダインくん」
村長がおっさんに声をかける。それに気づいてこちらを向くと驚いたような顔をする。
「村長!、外が騒がしくて何かと思っていたんだがそこにいるのはさっき珍しいものをいっぱい売ってくれた兄ちゃんじゃねぇか」
この店は村の端の方にあるというのもあり騒ぎには気づいても状況は把握してなかったようだ。
・・・というかこのおっさんダインって言うのかよ。
「この人たちは私たちを助けてくれたんだよ」
そう言って村長はダインにニネットことアシミットのことも含めてすべて話した。
「そうか・・・あのニネットがそんなことをしていたなんて」
「私も気づいていたんだが、家族を盾に脅されていてな・・・他の者もそうだった」
あ、知ってたんだ・・・
ダインは村長の話を聞き不甲斐ないといった風に歯を食いしばる。
「俺は使えるからうまい具合に利用されてたわけか・・・」
「仕方ないだろう。あれに気づいたら君はもっとひどい目にあっていたんだ。それよりダインくん、彼に一番いい装備一式を用意してくれ。代金は私持ちだ」
半分置いてきぼりだったのに突然話題を戻されて俺は視線をダインに向ける。
「なるほどな・・・わかった。兄ちゃんのサイズに合う合金のライトアーマーと武器をやる。武器は何がいい?・・・まあ、あるものしかやれないがここにあるもので好きなのを持って行ってくれ」
まさかの選択肢に超迷う。
というか俺って武器なんてほぼ使ったことないからどうしたらいいかわからない。選ぶとしたら直剣だろうか、槍とかボウガンとかもあるにはあるが扱える気がしない。
・・・でも恩恵である程度の技能補正はかかっているよな。
「・・・あの、シャーネさん。俺は何を選んだらいいんでしょうか」
「は?」
素で呆れられた。思ったよりも心に刺さる。
「お前って戦えるんじゃないのか?」
「え?、あ、そ、そうだけど・・・何言うかアサシンになるのにこういう武器がいいみたいなのがあるのかなーと・・・」
俺の苦しい言い訳にシャーネはため息をつく。
仮面で顔は見えないがなぜかシャーネがいまどんな顔をしてるか見える気がした。
「お前が私たちにどんなイメージを持ってるかは知らないけれど任務に支障が出なければどんなものだっていい。本部に行けばお前のその勝手なイメージなんて粉砕されるからナイフだとかの小さい武器などに固執せずに自分の一番扱いやすい武器を選べ」
なんかすごい夢を壊された気がする。
アサシンってなんかこうナイフとかで影とかから人知れずサクッと始末するもんだと思ってたんだが・・・
もしかしてこの世界のアサシンは俺の思うのとは違うのだろうか。
さて、こうして振り出しに戻るわけだが・・・
「・・・これにしよう」
俺は考えることをやめていた。
すぐ目の前にあった自分の身長の半分ちょいくらいの片手用の長剣。
デザインは簡素で目立った装飾はされていない。鞘から抜くと綺麗に磨かれた白銀の刀身がキラリと光った。剣は重みを感じるが身体強化の恩恵のせいか見た目ほど重くなく振り回すには何ら問題ない。
「なかなか見る目あるな兄ちゃん」
「え?」
ダインの言葉に俺は振り返る。
「その剣はこの店では一番いい剣だ。少し前に仲間のつてで仕入れたんだが買い手がいなくてな・・・可哀想だったんだよ」
なるほど。旅人が来ないって言ってたしこういうはなかなか売れないのだろう。
そう思うとなんだかすごい運命的な出会いのような気がしてきた。・・・適当に選んじゃったけど。
「じゃあ、これをもらっていいですか?」
「ああ、大切に使ってくれ。それじゃあこいつも渡しておく」
俺はダインの持っていたライトアーマー一式を受け取る。こちらも綺麗に磨かれていてそれなりに高品質なものだとわかる。
「着替えてきていいですか?」
「ああ、奥の部屋を使ってくれ」
俺はそう言われカウンターの奥にある部屋に入る。
そこは倉庫のようになっており液体の入った瓶や鉄の装備品などが置いてあった。
なんとなく物珍しさで辺りを見回してみる。すると壁にかけてあった出店承認書が目に入った。
「う、嘘だろ・・・?」
そこに書かれていたのは俺のかつてのクラスメイトで直接的な関与はなかったが常に風見のメンバーの中にいて俺を何度も見捨てた・・・
「黄木春吉・・・?!」
アクサスが言っていた他の三人の生き残りであるクラスメイトの名前があった。
どもども、神刃千里です。
これから強奪した魔法が増えていくのでそのうち一番上に所持魔法の一覧とその効果を書いておきたいと思います。
新しく増えるたびに追加していくのでわからなくなったりしたらそちらを読んで探して見てください!




