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いつもの会話

・申し訳程度の更新。

・そういうこともある。

・だいたい入院とか卒論とかが悪い。

・今は反省している。




 それは、炭水化物と脂質の塊が恋しくなる時間のこと。

 私は気づいてしまったのです。


「……兄上」

「……なんだ」

「持って来たおやつ、全部ヘイリーが管理してるの忘れてました」

「知らんが」

「知ってて」


 迂闊。なんたる油断。ドーナツ食べようと思ってたのに。チョコファッション。

 それはそうとお腹が空きました。アゲイン。


「我慢しろよ」

「兄上は私に人間の三大欲求の一つを我慢しろと仰せですか?」

「仰せですが」

「鬼」

「携帯食料ならあるぞ」

「粘土」

「単語で会話しようとすんな」

「携帯食料は美味しくないから嫌です。不味いものを不味いと知りながら食べるのは人間の本能に反します」

「人間の美点は理性。本能の抑制にあると知らんのか」

「知らない」

「知ってて」

「でも携帯食料ばっかり食べてた時のメーテルめちゃくちゃ気味悪かったですよ?」

「あいつはそもそも存在自体が気味悪いだろ」

「それもそうでした」


 てへっ。


「それはそうと」

「さっきから何が言いたい」

「別邸に着いたら先にキッチン行って良いですか?」

「………………張り倒すぞお前」

「……なんで?」

「コソ泥とやってること変わんねぇからなお前それ」

「情状酌量の、余地があるとは思いませんか?」


 ふっふ~♪


「ねぇよ」

「……こんなにもお腹が空いてるのに?」

「……そんなにもお腹が空いてるのに」

「鬼」

「無限ループは怖いぞ?」

「やめときます」

「妹が聡くて兄は嬉しい」

「それはそうと」

「まだなんかあんのか?」

「着きました」


 てってれてって てってれてってってー! べっていー!


「……まじか」


 それなりの時間が経っていたことに気づいていなかった様子、やはり会話は時間の加速装置でありましたか。時計百倍速。


「兄上、まだ緊張してます?」


 ちょっと前まですごい肩肘張ってましたからねぇ。まあ事情が事情、とても異常でしたけど。


「………………はっ、してねぇなぁ」


 兄上は軽く笑って天を仰ぐと、そう言いました。


「それはようござんした」


 では張り切って別邸攻略に挑んで行きましょう。

 目標は笑顔で帰ることです。

 ……それはそうとお腹は空きました。リターンズ。


「ほら、携帯食料」

「……臭いからして不味い」




 ***




 さて別邸。さあ別邸。べってー。

 とは言いつつもそこは、貴族の別邸と言って普通想像するような代物ではなく、十年前までは宗教国家だっただけに修道院のようなビジュアルをしております。聖堂付き。

 というか多分再利用したんじゃないですかね。

 森の中に静かに佇む神の子の家、なんか物語がありそうでワクワク。


「随分とお粗末な警備だな、こんなもんか?」


 それはそれとして兄上が外周の警備をしていた数人の兵士達を足蹴にしながら言います。


「まあ、十中八九罠じゃないですかね。入ってみないと分かりませんけど」

「その心は?」

「いくら夜だからって屋敷が静か過ぎですよ。一人や二人は夜の番がいるはずなのに外から見る限りどの部屋にも灯りがついていない。こういうの、『眠っている』ではなく『息を潜めている』と言った方が正しいんじゃないですか」

「そんじゃあ馬鹿正直に正面から入ると──」

「待ち構えていた弓兵によって五秒でハリネズミ、とか?」

「だろうなぁ……」


 ウィル兄じゃないんだからそんなことはしませんけども。


「義姉上どこにいると思います?」

「さて、俺もこっちにはあまり来たことないからな。分からん」

「ふむ。じゃあ急襲拉致逃走のピンポンダッシュ作戦は厳しそうですね」

「そこだけ聞くと野盗の類みてぇだな」

「まあ基本的に言い様ですよね」


 ここからどうしましょうかね。

 そこら辺の木の上で鳴いてる森の賢者さんとかなにかアイデアないです?


『ホー?』


 ないですか、そうですか、知ってた。

 然らばやることはいつも通りですね。


「兄上」

「ん?」

「窓は」

「入口」

「槌は」

「鍵」


 ふむ。


「「うぇーい」」


 はいたーっち。


「常識だな。まあそれしかねぇか」

「ええ。たぶん隠密は無理筋だと思うので急襲速攻で数を減らしましょう」

「どれから入る?」

「まあ玄関で待ち構えてそうですから、その上の天窓とか良さげですよね」

「オーケー、それで行こう」

「……私たちの見せ場は此処が最後です。兄上、そろそろ格好良いとこ見せてくださいね?」

「抜かせ。兄より優れた妹なんざいねぇことを証明してやるよ」


 不敵に笑う兄上。

 いつぞやもそのようなことを言っていた気がしますが、まあ今日は本当に見れそうなので良しとしましょう。


「では行きましょう、狩りの時間です」





・反省はしているがそれが活かされるかというと人類の歴史を辿れば必ずしもそうでないことが分かると思われる。

・タイタンフォール2やりたい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 兄妹の会話狂おしいほど好きです [一言] 入院や卒論にもめげずに更新ありがた感謝ぁ! 早朝からサクラニウムガンギまりで今日もハッピーになりそうです。
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