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潜入開始

・そういえばさ

・なんで ジョー ウィリアム ピーター ときて サクラ なんでしょうね。

「うっわ、ここにも警備の兵いるじゃないですか。きっしょ」


 領地の境、いや国境と言っても良いかもしれません。

 アブソルート侯爵家領を出発してから一日と少し、面倒な山越えも終えての森林地帯。

 ここから潜入するぞーって思ってたんですけど、初っ端から滅茶苦茶警戒されてます。

 ……なんで? しかも犬もいるし……。

 いやどーせクソ野郎あたりの入れ知恵でしょうけど。忌々です。


「どうする?」

「別に倒しても良いですけど、一人でも取り逃がしたら面倒ですよね。地味に数が多い」

「まあざっと見えてるだけで三十人はいるな」

「ということでここに取り出しますはクマのプーちゃんです」

「GAAAAAAAAH!!!!」


 おお、良い咆哮です。迫力満点バッチグー。


「……なにこいつ?」

「プーちゃん」

「いやそうじゃなくて……」

「あれ? 一年ぐらい前に関所を荒らす熊の話とかしませんでしたっけ?」

「え、あれこいつなのか!?」

「調伏しました」


 ぶい。

 ちなみにプーちゃんは全長3mで赤茶色の毛を持つツキミグマという夜行性のちょっと不思議な熊です。長く鋭い三日月のような爪が特徴。強くて格好良い。

 蜂蜜が好き。


「えー……」

「この子をあそこの警備隊のど真ん中に突っ込ませるので、相手が混乱している隙に後方に回り制圧します。各自準備を」

「……了解」

「さあプーちゃん、あなたに決めました。そこです! すてみタックル!」

「GROOOOOOOOOOOOH!!!!」

「本当に捨て身じゃねぇか!?」

「プーちゃんがやられる前にやりますよ! 散開!」






 *****




「もうあいつ一匹で良いんじゃないかな」

「正直すまんかったと思ってます」




 ******






 大砲を地面に平行に発射するとあんな風なんでしょうね。

 トップスピードに乗ったプーちゃんの速いこと速いこと。

 大地を駆ける砲弾。質量×速度は正義って感じで大変気持ちが良うございました。

 ちなみに餌あげてからぶっぱしたので誰も食べてないよ。食べては。

 一暴れ満足したのか堂々とした足取りで山へと帰って行きました。


「そしてここに取り出しますはクロエ特製の自白剤」

「ふひひ……」

「大丈夫かそれ……」

「極めて強力です」

「いや副作用の方」

「極めて強力です?」

「で、です……」

「没収」

「にゃんと!?」


 作るの大変なのに!?


「ウィリアム」

「おいさ」

「えーとサクラ、リーを借りる」

「え、あ、はい」

「そこのテントでやるぞ」

「はーい、一名様ご案内~」

「────!!!?!?!?!」


 そう言いながら捕まえた敵兵を適当に一人選んで引きずって兄上たちは野営用のテントの中に消えて行きました。え、怖い。

 選ばれなかった人たちも顔を青くして怯えています。

 ……まあ、いいか。


「ハジメ、前から気になってたんですけどその荷物の中身なんです? というかそれ最初からありました?」

「蜂の巣でござる」

「スズメ?」

「スズメでござる、さっき取ってきました」

「………………」


 ……まあ、いいか。


「クロエ、その容器なんですか?」

「こ、こっちが催涙弾で、こ、こっちが催淫弾です……」

「催淫」

「は、はい……」

「………………」


 ……まあ、いいか。


「カレン、このカトラス刃こぼれがひどくありません?」

「はい! いえ! こうすると傷痕がボロボロになって良い感じなのですよー!」

「レオーネ、その、ナックルになに塗ってるんですか?」

「唐辛子だぜお嬢様!」

「………………」


 ……まあ、いいか。


「………………」


 あ、悲鳴……。


「にゃお?」

「チーちゃん! 煮干し食べます?」

「にゃ」

「チーちゃんは可愛いですねぇ……」

「にゃ~お♪」

「お~よしよしです」


 ぶっちゃけノリで連れてきちゃいましたけど可愛いは正義ですね。

 お腹もっふもふ。


「………………(お嬢様)」

「あ、ヘイリー」

「………………(おやつを両手に抱えている)」

「そうですね、暇ですしお菓子でも食べましょう」

「………………(ホットミルクを差し出す)」

「おお、戦利品ですか。良いですねぇ、ヘイリーも可愛いですねぇ」

「………………(躍動する猫のポーズ)」

「ああ……美味しい……」


 お、今日は月が綺麗ですね。空が澄み切っています。


「にゃ」


 チーちゃんもそう思いますか。

 明日は満月ですね。


「こんな綺麗な夜なのに、みんな物騒ですねぇ……」

「………………(遠い目)」




 ***




 さてはて、三十分ぐらい経ったでしょうか。

 チーちゃんは食べて遊んで寝ちゃいました。

 仕方ないので肉球をぷにぷにしているとテントから三人が疲れた表情で出てきました。


「だいたいのことは調べがついたぞ」

「あ、兄上、終わりましたか」

「ああ。正直、口が軽い連中で助かった」

「ペラペラペーラのぺラペーラですか」

「だなぁ……奴さん、自分が誰と戦ってるのかも理解してなかったぜ?」

「忠誠心というものは感じられませんでしたね」

「ほへー」


 急に召集されて急に配備されて目的も知らされぬまま警備に当たっていたと。

 兵の掌握ができてなさそうで良いですね、やりやすくて。

 やっぱり一部の暴走ってことで正解みたい。

 やったぜ。


「まあでも隊長格は一応の位置関係とか防衛体制とかは把握していたからな、これで進むのは大分楽になる」

「こちらに簡単にですが写してみました」


 リーが取り出したのは簡素な地図。


「ナイトレイ伯爵家の爺とその関係者はいま本邸に集まっている、メーテルがいるのもここだな。ジェシカがいるのは別邸だ。どちらも警備に一部帝国兵も混じってそれなりに強化されている。グレイゴーストは、ちっとよく分かんねぇな。いるのは間違いねぇが」

「……クソ野郎は別邸ですね、間違いない」

「理由は?」

「絶対に襲撃されるリスクが低い方にいますよ、ああいう手合いは」


 だってクソ野郎だもん。


「道理だな」

「なら二手に分かれましょうか。義姉上がいるなら兄上は別邸。私もクソ野郎を叩き潰したいので同行します。あとは……めんどいからみんな本邸で良いです?」

「雑w」

「いやでも戦力比を考えたらそうなりません? それに物理的に手が必要なのは本邸の方ですから人数も特に問題はないと思いますよ?」

「……確かにな」


 あと私メーテルに会いたくないです。

 断食中、最後にあった時の眼が怖くてですね……。

 飢えた獣の眼でしたよ。いや実際餓えてたんですけど。


「分かった、それで行こう」

「じゃあリー、頼みましたよ」

「お任せください」

「あ、そこは俺じゃないのね……」

「ウィル兄は……暴れられると良いですね、隠密の足引っ張らないようにしてくださいよ」

「へいへい」


 では、行きますか。





・どっちから書こうかしら。

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