閑話 日常
・閑話って言うほど閑話でもない。
・短いです。
・シリアスくんは火葬して埋めた。彼はもう戻ってこない。
レッツスニーキン。
などと言ってみはしたものの、その前に色々とやることがあります。
まあそれは追々、巣穴が見つかってから準備するとしてとにかくまずは荒れた屋敷の掃除でもしましょうかね。
しかし、何が面白いかってあいつらが盗んでいった骨董品や芸術品は、特に高名な職人の作品や歴史的価値のある代物ではなく、家族が街の市場で適当に気に入った作品群を並べていただけなので多分そんなに金にならないところですね。
将来的に作者が有名になって価値が上がることはあるかもしれませんが。
この家に金は無いぞ。ざまーみろ!
……言ってて悲しくなってきた。
「あーサクラちゃんだー! おかえりー!」
「母上! ただいまです!」
気が付けば、窓の外からは月ではなく太陽の光が射しこんでいました。
新しい一日の始まり、暁の空。
母上の起きる時間です。
「大丈夫ー? 怪我してなーい?」
抱きしめられながら撫でられます。
声がぽやぽやしてて目があんまり開いていないので本当に寝起きみたいです。
ぐっすり眠れたようなので部屋の防音加工にこだわった甲斐がありました。
「へっちゃらです!」
「そーおー? 良かったー!」
完全に声が間延びしてらっしゃる、このまま私を抱き枕に二度寝しそうなぐらい。
それでもいいですけど、とにかく体調は悪くないみたい。
むしろメーテルの方が体調悪いまである。
「あーっ、ジョーもいるじゃない! ひさしぶりー! 元気してたー?」
「……はい、母上。帰ってきました」
「おかえりー! ご苦労様でしたー! 大変だったでしょー?」
「……はい」
兄上はメーテルと母上を見分けられなかったことに対してばつが悪いのか、ちょっと視線があちこち彷徨っています。
「ウィリアムは──」
仄かに夢見心地のまま周囲を見渡してウィル兄を見つけて一瞬、目を見開いて真顔になります。
まあウィル兄は一人だけ一見重傷なので心配になるのも当然でしょう。
ですがすぐにまた目がふにゃって感じにへにゃってなりました。
「まー……たぶん大丈夫ねー」
「起き抜けの母が辛辣」
「事実ですし」
「そうだけども」
けっこう痛いんだぞーと、ウィル兄は不満気な表情をします。
まあでも明日にはケロッとしてそうだし、うん。
「あ、そうそうみんな、おはよーございます!」
「「「おはようございます」」」
「ぐぅ……」
「本当に寝ちゃった!(小声)」
母上は私の肩を枕にするとそのまますーすーと寝息を立てて眠ってしまいました。
「あれ? いま「おやすみ」って言ったっけ?(小声)」
「いや「おはようございます」って言った、間違ってない(小声)」
「おはようからおやすみまで、この間二秒である(小声)」
「やめろ馬鹿(小声)」
言いながら、どっちの兄上も笑っていました。
う~ん、日常。
なんだか私も眠くなってきましたね……というかもう寝──
「……ん? あ、寝てる」
「まじ? サクラが寝落ちって珍しくねぇか?」
「あー……たぶん一週間ぐらい寝てない上に王都からここまで走ってきたからな。普通に疲れたんだろ」
「……何kmあると思ってんだ……?」
「180km強……ちなみに馬より速い」
「……妹の人間離れが著しいな」
「お前も大概だぞ?」
「ちょっと固いだけじゃん」
「だけってなんだよ、だけって。俺はなんもないぞ」
「…………………」
「少しは否定しろ」
「事実だしなぁ……」
「……まあいいか。とりあえずベッドに運ぼう」
「おっけーおっけー」
・弟の人間離れ(仏様)も近い。
・次回から「ラスバだよ!全員集合!」が始まります。メーテルはいないけど。




