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という設定だった。

・前から考えてはいたんですがこれは超展開になるんですかね。

・そうじゃないといいな。

・でも最初から滅茶苦茶なので今更どうでもいいか。






 前回までのあらすじ。

 【速報】サクラ・アブソルート、ニャカデミー賞主演女優賞待ったなし!

 成功の秘訣はメソッド演技!?



 ***



「騙されてやんの! 騙されてやんの! バーカ! バーーーカ!! バーーーーーカ!!! ざまーみろ! ざまーみろ!!! ざまーーーーみそらしどーーー!!!!!」


 私はグレイゴーストが消えて行った先を見据えながら叫びます。

 手前らが性格の悪い事なんてこっちは百も承知なんですよ!

 誰が何の対策も立てずに屋敷を留守にするもんですかバーカ!


「さ、サクラ? どういうこと?」


 戸惑いながら兄上が聞いてきます。

 あー、そう言えば説明してませんでしたね。


「兄上、あれ母上じゃありません。全然知らない人(メーテル)です」


 なんか変装得意とか言ってたんでさせてみました。

 いやー便利ですね、あれ。


「まじ?」

「じま!」

「なんで俺知らされてないの?」

「敵を騙すにはまず味方からって言うじゃないですか」

「…………」


 あ、すっごい眉間に皺寄せてる……。

 かわいそう。


「というか言わなくても分かるかなって……」


 実の母親の顔を見分けられないなんてそんな。

 ねぇ?


「いやでも体格とか顔色とかちょっと似過ぎだったろ」


 兄上の言うようにメーテルと母上は身長こそ近いですが、まあ母上は『THE 華奢』って感じで、メーテルの方は至って健康的で肉感のある体つきではあります。

 なので、


「毒キノコ食わせた後に十日間絶食させてたので似ますよね」

「死ぬだろ」

「それが死なないんですよねぇ……不思議」


 ちなみに強制はしてないです。

 自主的にやったんですよ、本当に怖い。


「まあ多少似てなくとも、十年近くも社交界から遠ざかっているのですから正確に顔を知っている人間なんてそういませんけどね」


 遠くからしか見たことが無いのであれば、特徴さえ外さなければあとは状況証拠で信じ込ませることができるでしょう。

 アブソルート侯爵家の屋敷の奥深くに厳重に警護されている、体の弱い薄幸の美人ってね。


「いやーしかし兄上、ナイスでした。必死過ぎて信憑性増し増しでしたよ。グッジョブ!」

「…………うん」

「ついでに奴らの跡は屋敷猫を三人使って追わせているので安心してください!」

「…………そっか」

「……?」


 なんか元気ないですね、兄上。


「あとは……ウィル兄、生きてます? 生きてます?」


 倒れ込んでる二番目の兄上にこう、ペシペシっと。

 すると寝てたのか本気で気絶していたのかは知りませんが、ゆっくりむっくり起き上がります。

 顔がボッコボコですね、痛そう。


「大丈夫ですか?」

「あー……痛ぇ、あいつらボコスカ殴りやがって。馬鹿になったらどうすんだよこれ」

「ウィル兄は既に馬鹿なのでノープロブレムです」

「起き抜けに妹が辛辣」


 しっかし、ウィル兄もさっきのクソ野郎の姿に負けず劣らずボロッボロ。

 重傷っぽい?


「立てますか?」

「余裕」


 すくっと立ち上がるウィル兄。

 余裕ですか。一日寝れば治りそうですね。

 心配して損した。


「んー……打撲ぐらいですかねぇ、なんで骨折れてないんです?」

「……折れててほしいのか?」

「単純に疑問です」

「昔騎士団で折られまくったら逆に強くなったんだよ」

「人体の神秘」


 ハンスとかルドルフも大概意味分かりませんがウィル兄も意味分からんのですよね。

 どんな体の構造してるんでしょう。血は赤いみたいですけど。

 いやー人間って不思議。



 その後、他の場所を担当していた衛兵さんとか侍女さんとかの様子を見てきましたが勝てそうになかったら適当に戦って負けてくださいと言っていたので大きな怪我をしてる人はほぼ皆無でした。


 本当は私が間に合ってその場でボコれたら最高だったんですが、まさか本気で我が家に乗り込んでくるとは予想してなかったのでこれは私のミスですね。

 いやメーテルを生贄捧げクソ野郎にダイレクトアタックでも良かったんですがね。

 まあ、予想外でも想定内だったので良いでしょう。

 何も慌てる必要はありませんし、これもこれで中々どうして悪くありません。

 なにせ──


「今度こそは巣穴ごと潰してやる……」


 ──ことができるのですから。


「なぁサクラ」

「はい? なんですか兄上」

「今回のこれさ、知らなかったの俺だけか?」

「全員が全員知ってる訳ではありませんけど、この場にいる人間で知らなかった上に気づかなかったのは多分兄上だけです」

「……そうか……そうかぁ……」


 なにやら兄上がため息混じりにひどく落ち込んでいます。

 確かに蚊帳の外は寂しいですもんね、でもあの迫真の交渉は素晴らしかったですよ。

 負けてたけど! 見透かされてたけど! 笑うの我慢するの大変だったけど!

 ぶっちゃけ最後あたりでぷるぷるしちゃったけど!


「どんまいです!」


 次がありますって!


「お前本当にそういうとこだぞ?」


 どういうとこです?


「……………………それで、母上は実際何処にいるんだ?」

「え? 部屋で寝てますよ、たぶん。屋敷の奥の奥にある隠し部屋で」

「……屋敷の構造ってバレたんじゃなかったのか?」

「いや私だってそこまで情報リテラシー甘くはないですって」


 家族以外に話す情報はどれだけ親しかろうがもう一段裏があるようにしてますし。

 あまり舐めないで頂きたい。


「その部屋の存在、俺知らない……」

「え、だって兄上の口から情報が洩れたら最悪じゃないですか」

「……お前、俺が情報部員だって知ってて言ってる?」

「えー……だって兄上、身内に甘いところあるし……」


 そもそも発端、義姉上なんでしょ?

 兄上完全に騙されてたじゃないですか。

 ……騙されてたって言い方が正しいかは分かりませんけど。


 私、ケーキ屋でクソ野郎にエンカウントした時からちょっとナイトレイ家は怪しいなって思ってましたもん。

 あれねー、多分ねー、ロイドさんと同じ境遇だと仮定して義姉上の行動を考察すると「最後の抵抗」だったと思うんです。

 あそこで私にグレイゴーストを捕まえてほしくて、あの店に行こうと提案したんだと、私は考えています。

 まあね、あの時は逃がしちゃったけど!


「なんも言えねぇ……ってか、俺役に立ってねえなぁ……」


 涙目でいじける兄上、このまま放置してると部屋の隅でうじうじしそう。

 正直、兄上は人が足りない時には活躍するけどこう、人手と準備が万全な時はまあ便利な人って感じだからなぁ……。

 でも、


「何言ってるんですか兄上」

「……なんだよ」

「兄上には囚われのお姫様を救出する役割があるじゃないですか」


 私があのクソ野郎共を蟻の巣を埋めるが如くに消し潰しますが、

 兄上は義姉上をロイドさんと同じように助け出す役割があるのです。



 レッツスニーキン!





ウィリアム(やべぇ……俺も母上って分かんなかった……)

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