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家内騒乱 2

・三人称です。

・一人称だとアクションシーンを上手く書けないみたいなところある。

・じゃあ三人称なら上手く書けてんのかよって言われるとそれは知らないけど。

・特に関係ないけどNetflixで水曜どうでしょう見ながら書いてます(初見)




 どちらが先に動いたか。

 糸で引き寄せ合うように距離が縮まり、戦いが始まった。

 騎士の両手剣、暗殺者の双剣が刃を交わす。


「ネズミ風情が正々堂々って柄じゃねぇだろ! お仲間はどうしたおいっ!?」

「さてな。今もお前を後ろから狙っているかもしれんぞ」

「抜かせやっ!」


 苛立ちをそのままにウィリアムは刃を振るう。

 組み立ては雑、だがそれ以上に鋭い。


「ようもやってくれたよ。てめぇらのせいで領内めちゃくちゃだ、泣いて詫びて死ね」

「仕事なのだから仕方あるまい。俺だって本当はこんなことしたくなかったんだ、心が痛む。被害者の皆には申し訳なく思っているよ」

「よし分かった、黙って死ね」


 ウィリアムが力の限り剣を振り下ろし、交差した双剣がそれを受け止める。

 だがただでさえ膂力で劣る以上、そこに重力が加わればじわりじわりとエンタープライズが押され始める。


「これは無理だな」


 エンタープライズは保たないと判断、腹部に蹴りを入れ斜めに力を逃がし後方へと身を引く。


「ちっ!」

「相も変わらず怖い怖い、怪我をしたんじゃなかったか?」

「お前がさせたんだろうが!」


 ウィリアムは追撃し連撃を繰り出し、エンタープライズは受け流すことに注力する。

 激しい剣戟を交えながら徐々に押され始めたのはやはりエンタープライズだった。

 元より暗殺者は正面戦闘に向かない、ウィリアムの負傷というハンディを加味してもその差は埋まらなかった。


「……っ」


 エンタープライズの顔が苦痛に歪む。

 灰色の外套が裂け、血が飛び散る。


「はっ、てめぇみたいな奴でも血は赤いんだな」

「俺は血も涙もあるれっきとした人間だが?」

「心が無ぇ奴ぁ畜生って言うんだよ!」


 攻め立てるウィリアムを止める術をエンタープライズは持たない。

 右腕の種は既に割れているし、心理的な揺さぶりが通用するほど戦場でのウィリアムは優しい性格をしていなかった。

 激情を誘引しても視野はそのまま苛烈さが増すだけ損だ。


「……強いなやはり、もう少し楽できる予定が大誤算だ」


 エンタープライズは既に体力の少なくない割合を消費している。

 明確な戦力差を前に多少の出血を犠牲に致命傷だけは避ける戦い方にシフトしていた。

 だがそれも、長く続くはずがない。


「そろそろ何を企んでるか白状しろやっ!」


 この男が何の策も無しに正面から挑んでくるはずがないということをウィリアムは理解していたし、何かを企んでいることも察知している。

 察知した上で馬鹿正直に戦っている。

 なぜならここはアブソルート侯爵家。誰が呼んだか猫屋敷。

 数多の絡繰りが鼠を追い詰める仕様になっており、それは人手が多かろうと少なかろうと変わりはしない。

 あれらの難関を突破するのは正直ウィリアム一人を倒すよりよほど難しい。

 だから安心して、目の前のクソ野郎をぶちのめすことに集中していた。


「これは散歩をしていたら火事場泥棒するのに最適な家があったからつい不法侵入を試みてしまっただけだ。衝動的な行いであって、そこに計画性は無い」

「もうちっとマシな嘘はつけねぇのか」

「ひどい誤解だな。俺は人生で嘘をついたことがないというのに」

「その台詞こそが何より嘘つきの証明だろうが!」

「っ……!」


 怒りの一閃。雷光のような軌跡を描きウィリアムの剣がエンタープライズの双剣を腹から叩き折った。


「安物使ってんなぁおい!」

「ちっ……また出費か、嫌になるな」


 たたらを踏みつつ後ろに下がる。

 折れた双剣を捨て、エンタープライズは懐から取り出したサバイバルナイフを構えた。

 斬撃をいなすことには使えても、重い剣を受け止めることはできない。

 回避の失敗は即ち致命を意味する。


「金より命の心配をしろよ」


 ウィリアムの突進からの振り下ろし。

 技もへったくれもないが、積み重ねた基礎の反復により高みに至った必殺の一撃。

 寸でのところでその一撃をやり過ごしたエンタープライズが引き換えに突き出した鋭い刃は、首を傾げるだけの最小限の動きで回避される。

 そしてその伸びた右腕を、剣から素早く手を離したウィリアムの右腕が完璧に捉えた。


「……ツカマエタ」

「……離してはもらえんか」

「断る」


 悪魔のような満面の笑み。

 右腕がミシミシと音を立て始め、エンタープライズは拘束を外そうともがくが、ウィリアムの体は地面に根を張ったように動かない。

 やがて、ナイフを取り落とした。


「…………クソッ」


 そして、武器を捨ててのゼロレンジ。

 要するに、物理での殴り合い。


「ボディがお留守だよなぁ!?」

「………………っ」


 騎士の左腕が暗殺者の脇腹を抉る。

 鈍い音と共に骨が折れる、声に出さずとも表情は苦悶に歪む。

 同時にウィリアムはエンタープライズの足を踏みつけその場に固定、退路を奪う。


「オラオラオルァァァッ!!!!」

「………………っちぃ!」


 RUSH!

 RUSH RUSH RUSH!!!

 RUSH RUSH RUSH RUSH RUSH!!!!!

 RUSH RUSH RUSH RUSH RUSH RUSH RUSH!!!!!!!!!!!


「腕が下がってんぞおいっ!」

「……うるさいぞ、少し黙ってろ」


 無限に続くかのような連打。

 ウィリアムに拳闘の経験はない。技術もない。知識もない。

 ただただ体の頑健さに任せただけのゴリ押しだ、最初の一発以降はクリティカルもろくに決まってはいない。カウンターだって幾つか貰っている。

 それでも削られているのはエンタープライズだ。

 後退することができず、また他の暗器を出す暇もない。

 ガードのために掲げた腕は少しずつ下がり始め、既に感覚はほとんど残っていない。


 今のエンタープライズは明確に、余裕を失っている。

 ふざけた口が廻らなくなったのが何よりの証拠だ。


「ぶっ潰れて死に晒せオラァ!」


 ──それが最後だった。

 ガードを抉じ開けて、頬に拳を突き入れる。

 会心だった。まともに喰らったエンタープライズは靴から足が抜けるほどの衝撃によって吹き飛ばされ、顔から地面に転がった。

 もはや立ち上がる力も残ってはいない。


「終わりか、殴り足んねぇな……」


 ひん曲がった唇の端に揺れる血を拭いながらウィリアムは吐き捨てた。

 考えるのは今すぐに殺すか、情報を引き出して殺すかの二択だ。

 個人的には今すぐ殺すべきだと思っている。遺言だって聞いてやる義理は無い、災いの火種は燻っている内に消すべきだ。

 だが、


「……すべきかするべきでないか人が悩む時、それはしたくて仕方がない時だとどこかで聞いたな」


 これはまあまあ私情だ。

 ウィリアム個人がこのクソ野郎が嫌いで、それ故に殺したがっているという事実は否定できない。もちろん死刑は当然だが、今が最善かという保証はどこにもない。

 しかもウィリアムは自慢じゃないが学力という意味で頭が悪い。

 その自覚自体はあるので紙上に兵を談じて山に登ったりする頭の良い馬鹿よりマシだが、そんな自分が独断と偏見で判断を下してよいのだろうか。

 そんな迷いがウィリアムにはある。


 しかし、しかしだ!

 だからと言って自分のような搦手が苦手な人間が、兄や妹たちのように上手く尋問なんてものができるだろうか?

 いいやできない! できるはずがない!


「よし殺そう、今すぐ殺そう、笑顔で殺そう」


 やりたいことを無理に我慢するのは良くない。

 ウィリアムはそう結論付けた。




・【超絶朗報】クソ野郎、勝負に負ける。

・まともに戦えればクソ野郎はそこそこ強いぐらい。

・今考えたメインキャラ強さランキング(適当)(正面戦闘に限る)

・ハンス>ルドルフ>サクラ>ウィリアム>サツキさん>ヘイリー>クソ野郎>リー>ペンサコーラ>ネイティブダンサー>トーマス>ジョー≧ロイド>メーテル>>騎士団平均値>>屋敷猫平均値>>>>>チーちゃん>ピーター

・サツキさんは意外と強いしジョーは弱い。



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