家内騒乱 1
・とっても短いです。
・お兄ちゃん二号回の始まり。
・そういえば二号って言葉使っちゃダメなんでしたっけ?
・まあええか。
慣れ親しんだはずの我が家が、見知らぬ他人の家みたいに感じられた。
いつぞやは妹を中心に大層騒がしかったはずなのに、今は麻酔でも打たれたかのように昏々と眠ってしまっている。
窓から差し込む月の光だけが、この世界がまだ生きてることを証明している。
屋敷の中はすっかり熱を失っている。
物理的に、人がいない。
俺を除けば、屋敷の深い場所にいる母上と、その従者と護衛の騎士が二人ずつ。
あとは仮眠室に常に二人程度、入れ替わり立ち替わりといった風だ。
誰もが屋敷の外で忙しなく働いている。
俺の役目と言えば、屋敷の警護。それと、万が一の事態に母上を連れて南に逃げること。
などと騎士団長様に命じられてしまったのだが、結局の所あの不良老人は俺に「絶対に死ぬな」と言っているのだ。
もし父上が、妹が失敗したら。兄が既に死んでいたら。
その時は俺がこの家の当主にならねばならない、俺がこの地と民を守らねばならない。
正直俺はそんな器の人間ではないし、あの家族が死ぬところなんて想像もできないのだが、貴族に生まれた以上は義務と責任がある。
そんなこんなで、俺は戦場に出してはもらえなかった。
以前は一番隊隊長だとか、切り込み隊長だとかなんとか言われたりもしていたが、所詮は肝心な時に出張れないようなお飾り騎士だったという訳だ。
士官学校卒業の時に貰った騎士勲章も、何の意味も持たない。
「みんなぁ大丈夫かね……」
留守番は退屈だ。
今も騎士団の仲間たちが戦場で戦っているのかと思うだけで、ひどくもどかしい。
中途半端な力しか持たない自分の無能に腹が立つ。
焦燥感が、身を包む。
「暗いな、さしものアブソルート侯爵家と言えども人手不足は深刻と見える」
屋敷の玄関口が開かれ一人の男のシルエットが視界に浮かぶ。
同時に聞き覚えのある不愉快な声が耳に届く。
「てめぇは……」
「久しいなウィリアム・アブソルート、息災か」
月明かりに照らされる姿は、灰色の外套に身を包んだ不気味な男。
「グレイ……ゴースト……」
「そうとも。少し用があってな、邪魔するぞ」
衛兵は……やられたか、さすがに相手が悪い。
いつもの面子ならともかく、実戦経験も無いような民兵では数合わせ以上の役割を求めるのは酷だろう。
だがしかし、よくもまぁ人の家に正面から堂々と入ってきやがったものだ。
「……ちょうど暇してたんだ。覚悟ぁできてんだろうな、クソ野郎」
俺は今、八つ当たりがしたくて仕方がなかったんだ。
・変な短編書いてたら遅くなりましたが、今後はラストまで今作に集中します。
・最近お金なくて映画館に行けなくて悲しい。
・茸茸茸茸茸茸茸茸茸茸、観たい。




