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今ここにいる人たちの話 6

・前書きと後書きがなければおそらく半分も感想もらえていない事実に草を禁じ得ない。

・これからも頑張って前書きと後書きを書いていきたいと思います。

・おまけは本編。




 小高い丘の上、戦場を俯瞰できるその場所で。

 頭を押さえる者、天を仰ぐ者、俯いて溜息を吐く者。

 総じて彼らの内心を一言で表せば「あちゃー……」であろうか。

 蛙の子は蛙。三つ子の魂百までだ。

 まあ、そういうことである。


「……………」

「あのー……若大将?」

「……大丈夫、好き、全然好き、シマヅ家サイコー、みんなと一緒にいられて僕幸せ」

「「「若大将が壊れたー!」」」

「いや壊れてないよ、失礼な」


 オッケー、オッケー、オッケー牧場。

 慣れてる。僕は慣れてる。

 予想外でも想定内、こんな事態は今までにも何回もあった。

 そう何回も……なんかいも……なんか──


「……………つらい」

「あっ、ほら! お嬢が包囲抜けましたよ! 第一段階成功っすよ!」

「だいぶ数多いけど!」

「かなり距離近いけど!」


 えっ、まじ? うそ、ほんとじゃん!

 と言うかサツキさん速いね、いや敵がスロゥリィなのかな?


「あーそれは夜襲の際に厩舎の飼葉に泥水ぶっかけたからでござろう、お腹ぎゅーるるるでござるな」

「にゃんてことを」

「これも戦でござる。お馬さん方には申し訳ござらんが」


 上質な馬を掻っ攫われたばかりか、残った馬はお腹壊してるなんて。

 なんて可哀想な帝国騎兵、すぐ楽にしてあげなきゃ。

 ……うん、うじうじしている時間は無いんだ。

 僕はあれを倒さなければならない。


「……敵との距離が近すぎる、あれは一度受け止めるしかないな。鉄砲隊を前面にも配置、馬防柵もあるだけ設置して。かなりの圧が掛かる、長槍隊には気合を入れさせろ」


 釣りの難易度が高くなるから避けていたが、包囲できる敵軍は多ければ多いほど良い。

 結果オーライってやつだ。当分サツキさんに騎兵の指揮はさせないけど。

 とはいえ帝国騎兵の突破力は侮れないだろう、包囲が完成する前に正面を食い破られたら意味がない。

 ちゃんとした柵だの壕だの普請できればまた違ったんだろうけど、帝国の方が兵数において勝る以上、一点突破からの逆包囲なんてされてみろ。

 悲惨の一言。


 誰が、そんなことを許すものか。


「……過不足なく、王国の興廃はこの一戦にある。各員、一層の奮起を」

「「「了解!」」」

「ではまた会おう、解散」






 ***






 戦場は怖い。前線はもっと怖い。

 刀を振るうだけの力もない僕がどうしてこんなところにいるのだろうと、何度も自問自答を繰り返した。

 僕は兄や妹と違って殺したら死ぬただの人間で、もしかすると殺さなくても死ぬ。

 冗談抜きで雑魚だ、断言できる。


 サツキさんやシマヅ家の人たちのような兵の士気を上げるカリスマもない、先陣切って戦う武勇もない。足が遅いので文字通り部隊の足手まといになるし、そもそも声が小さいので戦場ではまともに指揮すらできない。

 あとあまりに長時間血を見続けると気分が悪くなって吐く。


 ……いやほんとなんでいんの?


「若大将、準備完了です」

「ありがとう。ご苦労様」


 それでも僕は、指揮官としてここにいる。

 その責がある。これはシマヅ家の戦いではないのだから、後ろで震えて隠れてるなんて誇りが耐えられない。

 踏ん張って、歯を食いしばって、死んでもここから離れるものか。


「そうだトキタカくん、飴あげる。喉に良いんだって」

「はへー……いただきます!」


 僕の声が小さいなら、声の大きな人に喋ってもらえばいいみたいなとこあるよね。

 戦闘にはまるで役に立たないけど、実際全体のビジョンが明確に見えてる人間が一人いると現場って割とスムーズに回ったりもするし。うん。

 少しでも役に立ってみせる。


「さぁて……来るぞぉ……」


 大地が揺れ始める。


 鬨の声、馬の嘶き。

 地平線の先には無数の影。


 遠眼鏡を覗けば、野を往く先頭はもちろんサツキさんの騎兵隊だった。

 およそ二百。その後ろには視界にあるだけ少なく見積もって三千近い帝国騎兵、後続を含めれば一万近くに届く可能性もある。


「来たっ! 来たぞ! 帝国軍だ!」

「ははは! えれぇ数おるのぉ! 腕が鳴るのぉ!」

「笑ってる場合じゃねぇぞ! 気合を入れろぉ!」


 こちらの士気は上々か、元々戦闘民族ってのはこういう時に有り難い。


「全体構え」

「全体構えええええええええええええいっ!!!」


 位置関係をざっくりと説明すれば、


 帝国騎兵

 シマヅ家騎兵


 ~~間~~


 馬防柵

 長槍兵

 鉄砲兵


 となっている。

 この場はいわゆる挂の地形。進撃は容易だが退却は難しい。

 左右には大きな起伏や森があるので、そこに兵を伏せている。欲を言えば左右の兵で十字砲火を決めたかったけれど、まあそれは仕方がない。


 あとはサツキさんが上手い具合に柵を避けてくれれば……

 旗を振って合図はしてるけれど……


「あーーーーーっ! 怖いっ!」

「だ、大丈夫ですか若大将!?」

「大丈夫! 来るぞ!」


 頼むよ、サツキさん。


『全隊! 左右散開っ! 当たると痛いぞ死ぬ気で避けろっ!』


 鋒矢の形で駆けていた彼女らが、綺麗にハの字になって分かれる光景は見事の一言。

 シマヅ家はこういうとこシマヅ家。


 そして開けた視界には、突如として出現した迎撃部隊に驚愕する帝国騎兵。

 だからといって止まる訳にはいかず、無理に止まれば後続に圧し潰される。


「発砲っ」

「鉄砲隊! 放てぇえ!」


 号令一下、五百の銃口が火を噴き、轟音が響く。

 先頭を走っていた帝国兵がばたばたと倒れ、その一瞬敵の勢いが削がれる。

 だがそれも僅かばかり。後に続く騎兵たちが剣を振りかざして突き進んでくる。


「鉄砲隊を一度下がらせろ、長槍を前に」

「長槍隊構えろ!! 敵を串刺しにしろ!! 一歩でも退いたら殺すぞ!!!」


 槍衾が帝国騎馬に突き刺さる。

 けたたましい悲鳴、苦痛による呻き声、騒音。


「押し止まれっ! 後衛は抜刀! 打ち漏らしの首を刎ねろ!」


 落馬しながらも槍衾を抜けた乗り手たちを後ろに備えていた兵たちが首を刎ねる。


「鉄砲隊再装填完了っ!」

「撃てっ! どんどん撃て! 釣瓶撃ちだ! 準備ができ次第撃ち続けろ! 味方に当てんなよ! 痛ぇからな!」


 再度の発砲。視界の先で騎馬の頭が弾け飛んだ。

 多くの馬が槍に突き殺され、背中の騎手を振り落としている。

 その死体がやがて土嚢のように積み上がり──


「勢いが止まりましたぜ!」

「伏兵をっ!」

「っ銅鑼を鳴らせぇええええええええええ!!」


 ジャーン ジャーンと重厚な音が鳴る。

 戦況は実に有利に進んでいる、はずだ。ここから敵の左右に伏せてある伏兵で三方包囲を完成させられれば……


「鉄砲隊も抜刀! 俺たちも突っ込むぞ!」

「殺せ殺せ殺せ殺せぇえええええ!!!!」

「この一撃に全てを懸けろ! チェストーーー!!!」

「「「チェストーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」





・令和こそこそ話。

・実は僕、裏では「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンみたいな綺麗なお話が書きたいなぁ……」って思いながら「ばんざぁああああああああああああああああああああああああああ!!!」とか書いてるらしいですよ。

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