閑話 作戦会議
・短いです。
・この世界にフランスはない、でもフランスパンはあるんだ。
「という訳でさっきちょっと覗いてきた大広間の配置図です」
「どういう訳だ」
こう……ちらっと。
御屋形様はまだ到着していないみたいです。
「コチがいるのか……拙いな……」
「うぇ……まじかよ……」
「誰です? あのでっかいのですか?」
大広間には二十人ぐらいの敵方の騎士が配置されていたのですが、その中に一人だけ一際目立つ縦にも横にもでかい大男が待機していました。
ハンマー持ってましたよハンマー。あれは当たれば死ぬ。当たればだけど。
あとふらんすぱんも食べてました、一本そのまま手を使わず口だけでもぐもぐって。
「それだ。近衛の一人で、随一の耐久力を誇る重戦士。昨年の武術大会じゃ準優勝だったな」
「あー……いましたねぇ……ウィル兄も確かその人に負けたんでした、スタミナ切れで」
「いくら殴っても倒れねぇからな、相手にしたらめんどくせぇってレベルじゃねぇ。……つってもあいつ、正真正銘王国出身だろ?」
「馬鹿だからな、丸め込まれたのだろう」
「ああ……そういや馬鹿だったな」
ひどい言い草。
確かにちょっと脳筋に見えましたが。
「別にそのコチとかいう人はどうでもいいんです、問題なのは陛下の側で抜刀スタンバイしてる男です」
「特徴は?」
「顔に斜め傷の入ったオールバックのおっさんです」
「バルトロだな、宰相のシンパだ」
「強いです?」
「0.8ウィリアム」
「ふむ……性格は?」
「汚れ役だな、冷静沈着冷酷非道」
「むぅ……」
嫌な配置。
こちら側としては陛下が殺されてしまった時点で「王国終了のご報告」なのですけども、敵側の殺意がどれほどなのか測りかねてるんですよね。
殺すと苦しめる、どちらに比重が大きいのか。
迂闊に「人質を放せ」とか言った瞬間に躊躇いなく首ちょんぱされたら笑い話にもなりません。
「お前のスピードで瞬殺できねぇか?」
「……20%の確率で国が亡びるボタンを兄上が押せるならやります」
「……もうちっと考えるか」
「どのくらいの距離まで近づけば確実に間に合うのかい?」
「んー……と、三歩、ですかね。断言できるのはそこです」
そこまで近づけたのなら、たとえ陛下の首元に剣を添えていようとも私がその腕を叩き落とす方が早いです。
まあその近づく方法が問題なんですが。
「バレずに」
「陛下の場所まで」
「近づく方法……」
ロイドさん、兄上、私の視線が再度同じ方向を向いた。
「ひっ!?」
こいつずっと前から「ひっ!?」しか言ってませんよね。
言葉忘れたんですか。ついに万物の霊長の誇りすら捨て猿以下の存在に……。
「殿下、少々失礼」
全員で殿下(猿)を囲む。
身体測定の時間です。
「身長は……まだサクラのが高いか……」
「誤差の範囲だろう、問題は体格だ」
「こいつ滅茶苦茶細いからな、ただ胸もないからバレなあ痛っ!?」
天誅! お天道様も許さないし、私も許しません。
「今のはジョーが悪い」
「…………」
「……失言だった」
もとい。
「とにかく、多少違和感があれど気づく者はいないだろう。殿下に近い人間は宰相側にはいない」
「頭はどうする? かつらでも被るか?」
「いや、適当に布でも被せておけば良いだろう。こんな形で女性の髪を切るのは忍びない」
「まあ髪って武器になりますしね、締め落とすのに使えます」
「「………………」」
だから長く伸ばしてるのですよ。
ある意味で髪は命です。
「あの、さっきからどういう話をしているんだ? 僕は何をすれば……」
「ん? ああ、殿下は特に何も。ただ一つばかしお願いがありまして」
「わかった、聞こう」
「今すぐ服を脱いでください」
「え」
やだなー……
これの服着るの。
・次は侯爵視点でほんのり真面目に話が進みます。
・宰相の過去編はテンポが悪くなるのできっとカットします。
・宰相の境遇はおおよそなっちーにひどいことされたゆだやんみたいなものだと思ってもらえれば。
・具体的にはヴィルム・ホーゼンフェルトに出会えなかった戦場のピアニストです。