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せーてんのへきれき

・縦1200mm横1600mmの範囲を42℃の熱湯で灼き尽くす連邦の最終兵器の需要が日増しに高くなるのを感じるこの季節、皆様いかがお過ごしでしょうか。

・お腹を冷やして壊しました。

・短いです。

・最近パロネタに躊躇いがなくなってきました。


 神は死んだのだと思う。

 もし生きているのなら今すぐ死ね。

 私は貴様の存在を認めない。


 ──などと言ってはみたけれど、神が救うのは人類であって一個人ではない、というのは往々にして言われていることで、私自身そうなのだろうと思いはする。

 どれだけ人が祈っても、餓えた子供を癒すのは神ではなく、食料であり人であり国だ。

 戦争においてもそうだ。この世に対立する個が存在する以上、全ての個人の祈りを拾うというのは矛盾を孕む。

 いや違う、そういう小難しい話はどうでもよい。

 そりゃあ神様だってね、大変でしょうよ。

 この世界の総人口が何人で、神様は何柱いて、一柱につき何人を担当しているかなんてまるで知りませんけども、どいつもこいつも身勝手な祈りばかり捧げてきて辟易しているのかもしれませんけれど、普段そっけない癖に都合の良い時だけ神頼りしてくるような信仰心の欠片もない連中が嫌いなのかもしれませんけど。

 けどさぁ……やって良いこと悪いことがあるじゃないですか。

 確かに私もあのクソ野郎をさっさと見つけてぶちころころしたいなとは思いましたが、今じゃないんですよ。

 人には誰だって邪魔されたくない時間があるじゃないですか、プライベートですよプライベート、そっと自身を縛る全てのしがらみから解放されて悦楽に身を委ねる時だって場所だって必要なのですよ。

 そこを侵されたらもう戦争じゃないですか。

 諸君、私は戦争が大好きだ、って感じになりますよ。

 怒りますよ。激おこぷんぷん丸ですよ。

 だって聖域だったんですもん。サンクチュアリ。


 時間や社会に囚われず、幸福に甘味を味わう時、つかの間、私たちは自分勝手になり、自由になります。

 誰にも邪魔されず、カロリーに気を遣わず甘味を食べるとい至高の行為。

 この行為こそが、スイーツ系女子に平等に与えられた最高の癒し、と言えるのです。


 即ちこの時、この場所、この甘味だけは、守られてしかるべきでしょうよ。


 だからそう、駄目でしょ。

 駄目じゃん、イメージ違うじゃん。

 そもそも何でここにいんの、ここお膝元ですよ、あちこち走り回っていたのが馬鹿みたいじゃないですか、馬鹿にしてんですか、馬鹿にしてますね、よろしいならば戦争です。


 本当、なんでファンシーなケーキ屋さんにいるのですか、しかも一人で。

 浮きまくりですよ、店員さんも戸惑っているじゃないですか、なんですか勇者ですか。

 このクソ野郎は。



 ==========



 一時間前。

 待ち合わせの場所に義姉上、そしてその妹のティシアがやって来た。

 王城でのパーティー以来会っておらず、また今日も来るとは聞いておらず少し驚きました、だってなんかよくよく考えると私どう見ても危ない人でしたからね、怖がられていると思っていましたもの、はい。


「ご、ご無沙汰しております! 私、てぃ、ティシア・ナイトレイと申す者でございます!」

「久しぶりですねティシア、もちろん覚えています、忘れるはずもありません。また会えて嬉しいです」


 どうにも自己評価が低く、引っ込み思案は治っていないようでガチガチに緊張していたので、最大限の笑顔で応じます。

 すると少しは緊張がほぐれたのかぱっと笑顔を見せてくれました。


「か、感謝カンゲキ雨嵐、恐悦至極にございます!」

「……そんなにへりくだった言い方しなくてもいいんですよ?」


 なんかキャラ変わってません?

 侍女みたいな接し方されても困るのですが。


「あ……ありがとうございます! そ、そのサクラ……お姉さま……」

「…………」


 少しの、沈黙。

 青天の霹靂、とはこのことでしょう。

 私は後ろに控えていたハジメを呼びます、緊急事態です。


「わ、私、なにか間違ったことしましたか……!?」

「いえ、違います。ただのタイムアウトです、お気になさらずに」


 困惑するティシアを置いて少し離れた場所へ。

 義姉上は何も言いませんでしたが察しているのか微笑ましいものでも見るようにニコニコしていました。


「ハジメ」


 私は至極真剣な表情と声音で言います。


「な、なんでござる?」


 ハジメはそれを緊張した面持ちで聞きます。ごくりと唾を飲む音が聞こえました。


「聞きましたか?」

「聞いてはおりましたが、なにか問題でも……? 拙者には不審な点はなかったように思うのでござるが……」


 もしかして不備でもあっただろうかと、少し冷や汗が流れています。

 いや、不審な点は何もなかったんですけど。


「……お姉さま、ですって」

「はい?」


 頭に疑問符が浮かんでいますので、もう一度言います。


「ティシアが、私のこと、お姉さまって」

「言っておられましたな」

「お姉さまですって!」

「それは良おござりましたなぁ……」


 私が今世紀最大の笑顔で叫ぶと、ハジメも理解したようで優しい表情で答えてくれます。

 そう、何を隠そう私は末っ子。貴族に友達はおらず、侍女は皆が年上で、下町のサナちゃん相手ですらいつのまにかお世話をされているような、年齢も精神もミスター最年少です。

 違った、ミス最年少です。

 人生初の年上扱い。お姉さま呼び。これを一大事と言わずしてなんと言おう。

 また大人の階段を上ってしまいました……。


「これはお姉さま記念日では」

「リーに言うと本当に屋敷で制定されると思いまするが」

「……恥ずかしいのでやめときましょう」

「御意でござる」


 長く待たせるのも良くないので戻ります。

 いやしかし、これは、良いです。

 ニヤニヤが止まりません。あんまりしていると威厳がなくなるので無理にでも抑えますが。


「ティシア!」

「は、はい!」

「今日はよろしくお願いしますね。というか、今日だけでなくいついかなる時も私はあなたを歓迎します!」

「あ、ありがとうございますお姉さま! 私、本当に嬉しいです!」

「っ……────」


 私は心の中でガッツポーズをします。

 ああ、やばいです。妹、正確には妹分ですがとても心に来ます。

 でももっと言えば義妹なので実質妹で良いのではないでしょうか。


「ふふ、良かったわねティシア」

「は、はい姉様! 今日は連れてきてくれてありがとう!」

「ティシアはさっきからありがとうばかりですね」

「ほえ!?」


 ティシアが変な声を上げると、みんなが楽しそうに笑いました。




 ──とまこんな感じでキャッキャウフフやっていた訳ですよ。

 その後、義姉上が「じゃあ三姉妹で仲良く遊びましょうか」って言ってくれてテンションが上がったり、兄上が義姉上に送った手紙について盛り上がったり、今日はどんなケーキを食べようかと真剣に協議したりと、楽しくおしゃべりしていたのです。

 そうして意気揚々と辿り着いたケーキ屋さん。

 義姉上オススメの知る人ぞ知る隠れた名店、恥ずかしながら私も知らなかったその店の扉をバーンと開けたところ。


 嫌でも目に入った。

 灰色の外套の不吉な男。

 イートインスペースの出入り口すぐに座って、ショートケーキを食べていた。


「なっ……」

「む?」


 男は私たちを見てつまらなそうに言う。


「なるほどそういうことか……健気なことだな……」


次回予告

【クソ定期】クソ野郎、クソ野郎

の一本でお送りします。


あとこれはもしよろしければなのですが、感想欄やTwitterなどでオススメの映画など投げてくれると執筆速度が通常の三倍になります。布教したい方、沼に引きずり込みたい方、タイトル一言だけでも置いていってくださると嬉しいのでぜひお願いします。

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