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今ここにいない人たちの話 3

・とても短いです。

・ラスボスさん初登場回。

・二回に分けます。

・劣化KAIKIみたいになっちゃった。

 俺は世界で一番金が好きな男であるという自負があるが、もしかすると一番ではないかもしれない。

 俺の金への執念は、羆の獲物に対するそれと似ている。

 しかし正確には俺は貧乏が嫌いなのであって金、つまり硬貨や貨幣自体にはさして思い入れがない。

 そう考えると世に隠れ潜んでいるであろう硬貨や貨幣そのものに価値を見出すコレクターや、果ては性的興奮を覚える凄腕の変態たちにはどうしたって敗北を認めざるを得ないだろう。

 そんな奴らが実際に存在するかは甚だ疑問だが、世界が遥か広大である以上可能性を捨てきることはできない。

 もし出会ったら尻尾を巻いて逃げ出す自信がある。


 だがそれでもやはり俺は金が好きだ。大好きだ。

 好きが高じて会社を設立するぐらい好きだ。そんでもって社員を馬車馬のように働かせておきながら限界まで給料を絞るぐらいに愛おしい。


 なぜなら、人間というのはこの世に生を受けた瞬間から何らかの形で束縛を受けることになるからだ。

 出身、性別、家族、家庭、経済、環境、国家、法律、まだまだあるだろうがともかく様々なものから束縛され、真の自由なんてものは存在しない。

 何かに手を伸ばそうとしては迷い、悩み、躊躇い、そして諦める。

 繋がれた鎖の重さを実感する。

 ならば俺は、金に束縛されたい。金さえあればその他全てが自由だ。

 全ての制限、全ての束縛から金は俺を解放してくれる。


 店先で値札を見ながら迷うことも、金の無心をしてくる家族を前に悩むこともなくなる。

 犯罪衝動に駆られてもそれを抑える必要もない、道端に這い蹲る乞食を無駄に憐れむようなこともしなくてすむ。

 どれだけ取り繕うとも、札束で頬叩けばたいていの人間は陥落する。

 それだけで済む。ごちゃごちゃ考える必要などないのだ、それは人生において損失に他ならない。

 陥落しない人間がいれば陥落するそいつより上の人間にばら撒けばいいだけ、この世は清廉であり続けるには耐えがたい構造をしている、探せば闇はいくらでもあるものだ。

 素晴らしきかなマネー。やはり、やらない善よりやる金だと、つくづく実感する。


 確かにこの世にはお金以上の価値がある尊いものがあるのだろう。愛とかな、それを否定する気は俺にもない。

 だが愛にも種類が幾つかあって、現実問題金で買える愛の方が多い。

 つまり多少の妥協さえ知ればこの世の全ては金で買えるということだ。


 いいよな金、最高だよな金、毎日預金口座に四十万ずつぐらい増えないかな金。

 好きな言葉はギブミーマネー。


 さすがに不老不死とかそういうファンタジックなものは買えないが、もとより興味がないので除外させてもらうとする。


「社長、仕事の時間です」

「ん? ああ、わかった」


 さて、前述の通り俺は会社を経営している。

 事業内容は人殺しだ。

 だが、勘違いしないでほしい。俺は別に快楽殺人者ではないということを。

 命を扱う仕事というのはそれだけでたいへん儲かる、その一点にしか俺は興味がないのだから。


 ──さぁ、金を稼ごう。この世を自由に生きるために。


 灰色おばけが、やってくる。


・今更ながらカメラを止めるなめちゃくちゃ面白かったですね。

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