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ナイトレイ伯爵家三兄妹 姉

 私事ですが

・痔ってとても辛いですね。

・恋愛要素云々が使えなくなってちょっとつまんないです。

・今回は三木城の兵糧ぐらい中身があります。

「ジェシカ……」

「義姉上! ロングタイムノーシーです!」

「ええ、久し振りねサクラ。ドレス、とっても似合ってるわ」

「ありがとうございます義姉上! 義姉上もすごくお綺麗です!」


 冬の銀世界を想起させるような儚げな美女。

 控えおろう!この方をどなたと心得る!恐れ多くもかの高名な『輝く美貌』のジェシカ・ナイトレイ伯爵令嬢なるぞ!という感じです。

 約三か月ぶり、我が家のお茶会に招いて以来の再会。その後、帝国関連でちょっと忙しくなったからあまり会えなかったのですよね。

 いやー寂しかったです。


「それに、女誑しのジョー・アブソルート様も」


 ニッコリと兄上に笑いかける。笑っているけど笑えない雰囲気の義姉上に兄上はぎくりと、たいそう気まずそうな顔をした。


「まさか兄上!? こんな綺麗な義姉上がいながらどこの馬の骨とも知れぬよその女に手を!? 兄上の目はそこまで節穴でしたか! 最低です! 不潔です! そこの義兄上(仮)と一緒に豚箱に行くべきです!」

「そうだそうだー」

「最近ぐんぐん好感度下がるなー……」

「さらっと私もディスられてないかい?」


 義姉上を悲しませるなんてこれは身内じゃなかったら社会的に殺すレベルですよね。

 さっきの公爵みたいに。もう二度と社交界来れないねぇ、みたいに。


「大丈夫ですか義姉上? この愚兄が嫌でしたらウィル兄ととりかえましょうか?」

「おいおいおい、それは冤罪だ──」

「シャラップ!」

「えぇ……」


 被告人は黙っておくように。


「ふふ、大丈夫よサクラ。最近はまともだから」

「最近は……?」


 つまり昔は女誑しだったということで?

 ギルティでは?


「昔は大変だったのよ? 私は学園では一年しか一緒じゃなかったのだけれど……ご飯の約束をしていてもいつも女の子ひっかけながら私の前にやってくるのよ? 睨まれるし、妬まれるし、嫌われるしでもう……」

「はぁー? 最低ですね」

「いやだから……」

「学園中にジョーの恋人を名乗る女が続出、私は呼び出されて脅されたり、捨てられたって噂されたり笑われたりね、散々だったわ」

「死んで詫びるべきでは?」

「さっきから当たり強くないか……?」


 だって起死回生の一発(お詫びのお菓子)があったといえども、直近打率一割のクソバッターですからね今の兄上。9番打者ですよ、ピッチャーの後ろ。


「まあまあサクラちゃん。要するにジョーは恋愛に関しては不器用なくせに相手に対して無駄に誠実だからよく女の子を勘違いさせちゃってたんだよ、そこはわかってあげてくれたまえ?」

「は? 義姉上という婚約者がいるんですから一切の容赦なく斬り捨てるべきでしょうが? 誰ですかその女は? 名前は? 家は? ちょっとまともな相手と結婚できないよう情報工作してきます」

「Oh……」

「それには及ばないわ、ちゃんと私自ら〆ておいたもの。主犯は特に……ね。確か家名はアンダーソンとか言ったかしら?」

「さっすが義姉上! そこに痺れる憧れるぅ!」


 黒い笑みすらお美しい。

 どっかで聞いたことのある名前な気がするのは多分気のせいでしょー!

 男性陣はなんとも言えない顔をしてた。けっ。


「それに比べて兄上。義兄上を糾弾しておきながらこの様とは……人の振り見て我が振り直せという言葉を知らないのですか……」


 半眼で兄上を見たあとやれやれと首を横に振る。これだからイケメンは……。


「こいつと一緒扱いだけは納得できねぇ……」

「しかし、お前の処理の拙さは擁護のしようがないほどに酷かったぞ? 時にははっきりいう事も優しさだというのに無駄な希望を持たせておきながらそれを砕くなど……」

「そうだそうだー」

「優柔不断のこのこんにゃくやろー」

「なんだこの言われようは……」


 自業自得だこんにゃく。


「あら? あなたも何か言うべきなのではなくて?」

「え?」

「そうです! どんくさいですね兄上!」

「えぇ……」

「確かに男として落第てn──ぶはっ!?」

「お前は黙れ」


 ロイド殿にチョップをした後、兄上は遠慮がちに義姉上を見てから上を向いてなにやら思考する。少し経って何かにはっと気づいた様子。

 遅い。


「えー……あー……その……」


 ただ、照れがあるのかはっきりとしない。

 義姉上と目をそらしてあーうーと呟くだけで、煮え切らない態度を見せる。


「……」


 それを義姉上はニコニコしながら見ていた。

 楽しそうでなにより。


「その、なんだ……」


 しかしこのこんにゃくはたまなしですね。


「ピッチャービビってる!」


 へいへいへい!


「ピッチャービビってる!」

「「へいへいへい!」」


 ロイド殿がノッてきた。


「「ピッチャービビってる!」」

「「「へいへいへーい!」」」


 義姉上も加わった。

 はよ投げろー。


「じゃかしいわど阿保! 黙ってろ!」


 わー怒ったー。

 まごついてる自分が悪い癖に。


「逆ギレしましたよあの愚兄……」

「見苦しいな……」

「器の小ささが知れるわね……」

「聞こえてんだよ!」


 短気なの良くないと思う。

 とはいえ雰囲気というのもあるのでそろそろ黙ることにする。

 お口チャック。

 そしてしばしの沈黙の後、意を決したように口を開く。


「ジェシカ……その、ドレス、すげぇ似合ってます……えっと、惚れ直しました……」

(((なんで敬語?)))


 しかしまあ、しどろもどろになりながら顔を真っ赤にして言ううのですから本心からの言葉なのでしょう。語彙の少なさは気になりますが──


「ありがとう。ふふ、あなたも素敵よ、ジョー」


 ──言われた方が嬉しそうならまぁ及第点でしょう。

 そっぽを向く兄上でしたが耳まで赤いのがまるわかりです。


「ウィル兄もピタ兄もこういうのはさらっと言えるのになんで兄上はこうへたれなんでしょう? 仕事してるときは格好いいのに」

「ぐっ……」

「我が妹はこう見えていじめっ子だからね、昔からよくからかわれるものだからすっかり上下関係が出来上がってしまっているのだよ」


 ロイド殿が説明してくれた。


「でも義姉上はとっても優しいですよ?」

「そうよねサクラ。兄さんたらひどいこと言うわよねー?」

「ねー」

「これは、まいったな……」


 苦笑するロイド殿。


「そういえば義姉上! 義姉上も一緒にJ・J・Jに行くのですよね?」

「ええ、ティシアとご一緒させてもらうわ」


 その返答に思わず小さくガッツポーズ。ちなみにティシアは義姉上の妹さんなので私にとっては妹のようなもの、ということもなく引っ込み思案な性格のようであまり話したことがない。

 数度あいさつした程度で、その時の雰囲気は周りに知り合いのいないときの私によく似ている。義姉上のドレスの後ろに隠れて裾を掴んでいる感じ。


「そういえば、そのティシアさんは……?」

「ああ、ティシアなら王太子殿下にプレゼントを渡しに行ってるよ。今日のパーティーの主役は子供たちだからね」


 なるほど。

 みんな真面目ですね、顔以外見るところがない気がしますが。


「サクラはもうプレゼントはお渡しになったの?」

「あー……」


 あまり義姉上に不真面目なところは知られたくないというか、なんというか。


「こいつは横着してプレゼントをこっそり置いて逃げてきたんだよ」


 すると横から兄上が私の頭を手で押え付けながら言う。


「兄上! 言わないでくださいよ!」

「事実を言って何が悪い」

「うーん……さすがに挨拶もせずに帰るのは不味いんじゃないかい?」

「そうねぇ……サクラは少し話題にも挙がっているし立場もあるしで、相手の心証も悪くなるかもしれないわ……」

「むむむ……」


 まわりまわって兄上の仕事が増えるとかなら構わないのですが義姉上にも言われてしまってはなんだか悪いことをしているような罪悪感が……。


「なにがむむむだ」

「いたっ!」


 兄上にチョップされた。痛い。


「正直、ティシアも少し心配だし……サクラ、挨拶ついでに様子を見に行ってもらえないかしら?」

「…………………はい」

「すげぇ微妙な顔したな」


 うるさい。


 =======


 ということで渋々ながら王太子殿下のもとへと向かう私である。

 ふむ、そういえば会場に来て単独行動って初ですね。

 とっても帰りたい。

 だってなんか後ろに穏やかじゃない気配あるし。


・次は悪役令嬢(かませ)が出るよ。

・王道の踏襲は大事だよねっていう。

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