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ウィリアムお兄ちゃん

・修正作業してたら飽きたので続き書きました。

・今後、過去話をちまちま修正していきますが読み返さなくても大丈夫です。

・いわゆるつなぎの話です。

・恋愛要素は千葉ロッテマリーンズ岡田選手の打率ぐらいあります。

・野球のある世界観でどうか一つお願いします。

 サクラ・アブソルートは実のところ人見知りだ。身内には蜂蜜のように甘いが、赤の他人には警戒心を滲ませる習性を持つ。

 身内に混じって知らない人がいる空間というのが特に苦手で、すぐに隅っこで壁の花になったり家族の陰に隠れて服の裾をぎゅっと掴んで離さなかったり。

 だからか、貴族のパーティーどころかお茶会にすら行こうとしない。いや、一度行ったきり嫌だと言って断固反抗の姿勢を崩さない。

 そのくせ潜入任務とか殴り込みとか平気でするのでよくわからない。

 なんでも「みんなと仲良くしなければならない」というのが嫌らしい。そんなことをする必要はないと諭しても「嫌いな奴とは当たり障りのない会話すら無理」と言う。

 うん、それならしょうがない。と、俺は説得を諦めた。

 サクラがブチギレて見ろ、死人が出るぞ。

 我が強い。すごい強い。

 正直、俺も社交辞令とか皮肉とかよくわからんので社交界とか好きじゃない。そういうのはジョーとピーターに任せればよいのだ。

 俺達兄妹二人程度ちょっといなくてもバレんバレん。


 しかしそうは問屋が卸さない。というかジョーが許さなかったらしい。

 ジョーは真面目だから……しかも真剣に相手のこと考えてから発言するので余計に性質(たち)が悪い。

 昨日、俺は騎士団の方にいたから知らなかったんだが屋敷の方で一悶着あったらしい。

 そんで結局のところ母上の鶴の一声でサクラの王太子殿下の誕生日パーティーの参加が決定したとのこと。

 今朝、ひどくボロボロの屋敷を見て俺は笑った。

 最初から父上と母上に説得を任せていればいいものを。

 サクラは父上が命令すればたとえ火の中水の中にだって飛びこむ(既に耐性は得ている)し、母上の言いつけなら無条件で不可能を可能にする。

 まあ父上は社交界デビュー渋ってたから頼れなかったのだろうが。

 ジョーや俺なら精々が前向きに検討するってレベルだ。頼めばほとんどのことに労は厭わないが、譲れないところは絶対に譲らない。

 ニンジャごっこ──いやもうごっこの領域じゃないな、あれが続いてる時点であいつの頑固さは王国随一ってのはわかりきったことだけど。


 まあそれはそうと──


「やっぱり派手な色が驚くほど似合わねぇな」

「そうねぇ……ウィリアムの言う通りかも……」

「恐れながら……私もそう思います」

「着たくもないドレス着せられた上にディスられるとかそんなのあります?」


 ピンク色のドレスを着たサクラがげんなりした顔で言う。

 今現在、俺──ウィリアム・アブソルートは、母上とリーと一緒にサクラのパーティードレスの試着会をしていた。

 どうしてこうなったんだろう、わかんね。


 なんかサクラを捕まえた報酬として着せ替え権が母上。

 頑張ったで賞ということでリーにドレスの決定権。

 同じくトーマスに有給が与えられた──けどあれ労災じゃね?


 とかく、男性の意見も取り入れたいとのことで俺が呼ばれたらしい。屋敷の使用人は死屍累々で父上やハンスにルドルフは単純に忙しい。

 トーマスは入院中である。南無。


「いやもう水と油って感じ、むしろ才能を感じる」

「それで正しいんです、ニンジャはピンクなんて着ません」

「……やっぱり赤系統は止めておきましょうか。流行りに無理に合わせる必要なんて無いわ! サクラにはサクラの良さがあるもの!」

「それなら……緑や黒あたりが候補ですかね?」


 リーが言うように緑や黒は普段着(忍装束)でもよく着ており、似合っている。


「暗い色でも陰気な感じがしないのが長所だけど、子供中心のパーティーだと浮くんじゃないか?」


 誕生日パーティーという名の未来のお妃様品定め大会であるからには、みんな流行りだという煌びやかな色彩の服を子供に着せてくることだろう。

 落ち着いた色だと逆に目立ってしまう可能性があるのではないか、よくある性格の悪いご令嬢たちに絡まれたりしないか、と思ったり思わなかったり。

 なんて軽く言ってみたりすると、サクラの顔が一瞬にして絶望に染まり、体が震えだす。


「めっ……目立ちたくない……!」

「それは無理だろ、ジョー同伴の時点で」


 学園時代のジョーの人気は凄かった、それはもう。

 いや、言うまい。愚痴になる。

 ともかくジョーが箱入りと噂の妹を連れてきて話題にならないはずがない。


「兄上め、どこまで私の邪魔をすれば気が済むのですか……大幅減点です……」


 拳を握り締め忌々しそうにサクラが呟く。

 サクラはなんか知らんが全ての人に対し独自の好感度ゲージを持っており、ポイントが50を超えると身内判定されるらしい。

 ジョー、知らないところで減点されてやんの。


「ジョーは今何点なんだ?」


 そろそろ危ないんじゃないないかね。


「500ポイントです」

「大好きじゃねぇか」


 堂々と言うものだから思わず笑いながらツッコんでしまう。


「いえウィル(にぃ)、直近二十試合打率一割の四番バッターがいたらどうします?」

「スタメン落ちだな」

「そういうことです」

「なるほど理解した」


 わかりやすい。


「俺は?」

「1,000ポイントぐらいですかね?」

「クハッ。剣以外でジョーに勝ったの久しぶりだわ」


 ダブルスコアじゃー、いえーい。


「ねーサクラー? ママはー?」

「母上は100,000ポイントです!」

「わーい! うーれしー!」

「インフレよ」


 ふにゃっとした笑顔で抱き合う二人。

 点数それ絶対その時の気分で言ってるだろ。

 呆れ半分で笑いながら、ふと横を見るとリーが少しそわそわしながら二人を見ていた。自分がどのくらいの位置につけているのか聞きたいのだが、侍女としてのプライドが邪魔しているのだろう。

 昔からの侍女は半分サクラのこと妹か姪扱いなのでノリノリで聞くのに。


「サクラ、リーはどのくらいなんだ?」

「うぃ、ウィリアム様!? そんな……!」

「リーですか? うーん……」


 あごに手を当てて考え込む。

 それをリーは期待と不安が半分といった表情で、手を組みながら待つ。

 傍から見ると裁判の被告のようだった。そんな緊張せんでも。


「2,000ポイントです!」

「………!」

「俺負けとんのかーい」


 ダブルスコアじゃないか。

 兄なのに侍女に負けてほんのちょっとショックを受ける俺の横では、リーの目がキラキラと輝いていた。

 リーは口角が1ミリも動かない程に表情筋が死んでいるからわかりにくいが、多分喜んでいるのだろう。


「むぅ……ウィル兄は最近騎士団の方にかまけすぎです」

「そこを突かれると痛いんだよなぁ」

「そうねぇ、もうちょっと帰ってきても良いわよね。ねーサクラ」

「ねー」

「ははっ……」


 ニッコリと笑い合う二人に俺は愛想笑いしかできない。

 母上がいるとその空間がふわふわする……。


「はいはい、パーティードレスの話に戻りましょうや。逸らしたの俺だけど」


 手を叩いて軌道修正にかかる。

 俺はこの後普通に仕事があるのでのんびりはしていられない。


「ん~やっぱり淡い緑や青系が正解かしら?」

「結婚式でもありませんし、白でもいいのでは?」

「そうねぇ……あっ、これなんか良いんじゃない? とっても似合うと思う!」


 パラパラとカタログをめくっていた母上が指さしたのはパウダーブルー?ほんのり青みがかかった白のような色だった。ともすれば雪のような。

 サクラは色白で肌も綺麗なので映えるだろう。


「単純に一番似合うってんなら俺はこのミント?色のドレスを推しますね」


 濃い目の緑、色になんて詳しくないからなんとも言えないが、サクラの髪の色に合わせるとこれが一番似合うと思う。ファッションセンスのない男の意見だが。


「わ、私はこのシルバーグリーンのやつが良いと思います……」


 リーが選んだのは淡い緑のドレスだった。

 うん、恐る恐る言っているが決定権はリーにあるんだけども。


「目立たないのはどれですかね?」

「だから無理だって」


 まだ言ってるのかこの妹は。


「いえ気配消して逃げ回りますので極力背景に溶け込めそうな色が……」

「………」


 できるのが厄介なんだよなー。


「ジョーがかわいそうだからやめてやってくれ……」


 兄として妹の味方をしてやりたいが、行くと決まった以上、過労一歩手前のジョーにこれ以上の負荷をかけるのは弟としてさすがに避けたい。

 サクラは一瞬唇を尖らせて不満げな顔をしたが、不承不承ながらこくりと頷いた。

 1,000ポイントは伊達じゃない。


「あとはまぁ……一応うちは侯爵家だし、そんな喧嘩売ってくるやつはそういないと思うが……そうだな、もし喧嘩を売って来るようなのがいたら男女問わず──」

「問わず?」

「売り返せ、叩きのめせ、こっそりな。お前ならできんだろ?」


 立てた親指を下に向けながらにやりと笑う。


「いいんですか!?」

「おう心も体もへし折れ、高い授業料をふんだくれ。サクラの敵はアブソルート(うち)の敵だ、相手が公爵だろうが侯爵だろうが構いやしねぇ、何処と敵対しようがハンスとルドルフ、それにジョーと俺がいる限りアブソルートは揺るがねぇ」


 父上は……うん……。荒事は厳しいかな。


「おおおっ……ウィル兄かっこいい……!」

「そうだろう、そうだろう」

「じゃあ親の功績を自分の功績と勘違いして人を小馬鹿にする選民思想の塊みたいなクソガキをぶちのめしてもいいんですね!?」

「……同格以上だけにしろよ……?」

「以上ですね! わかりました! 鼻っ柱折ってきます!」


 笑顔でサムズアップするサクラ。

 うーん、何かミスった気がする。

 どんまい、ジョー。



 その後、仕事の時間になったので俺は騎士団の方へ向かった。

 ドレスは明日、街から呼ぶ針子と相談しながら決めると言っていた。

 俺いらなかったじゃん。


・いつも閲覧・感想・評価ありがとうございます。

・プロットなるものを作ったので当話以降分から感想返信いたします。

・次さっさとパーティー行きます。

・王子視点ですってよ奥さん。

・視点が二転三転してて読みにくいなどご不満な点がおありでしたら遠慮なくお申し付けください。

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