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俺は初恋の女の子と部活をすることになったらしい。

この話で物語は大きく進展します!

敦士は一体どのような事態に巻き込まれていくのか!

たくさんの人に楽しんでいただけたら嬉しいです!

 ゲームセンター内に入った敦士は特にゲームで遊ぶわけでもなく店内をフラフラと歩き回っていた。

 お菓子がたくさん積まれているクレーンゲーム機をバレないように揺らしてラッキーゲットを狙ったり、コインゲーム機の下にコインが落ちていないか確認したりしながら『ペックさん』との待ち合わせ時間を待った。

 30分ほどフラフラしたところで店内の片隅に人だかりができていることに敦士は気づいた。

 「なんかやってんのか?」

 気になった敦士は吸い寄せられるように近寄って行った。

 するとそこでは、明らかにエキスパートな雰囲気をまといながら『太鼓の名人』をプレイしている人がいた。

 赤いキャップをかぶりグレーのパーカーにジーパンというなんともしっくりこない格好をしていたため、「そこはチェック柄のシャツだろ!」と突っ込みたくなるも、敦士はぐっとこらえてパフォーマンスを見ることにした。

 「すげぇなぁ・・」

 赤キャップ野郎のあまりにもすごい名人ぶりに敦士は思わず言葉をもらした。

 周りで見ていた人からも賞賛というよりは初めて異世界クリーチャーを目の前にしたかのような声が上がった。

 「・・おいおい・・これで3連続フルコンボだぞ・・」

 「こ・・こんなの初めてみたぞ俺は・・」

 確かに赤キャップ野郎の技術は人間の常識を超えていたので、敦士は赤キャップ野郎に「ノーチェック太鼓マスター」の称号を与えた。

 その後もしばらく店内をフラフラし、先ほど人だかりができていたところをもう一度のぞいて見ると「ノーチェック太鼓マスター」の姿はなかった。

 そんなことをしているうちに約束の時間まであと10分ほどになっていたので敦士はゲームセンターを出て『ペックさん』との待ち合わせ場所へと向かった。






 すると待ち合わせ場所の近くには、明らかにさっきの人だかりの原因となっていた「ノーチェック太鼓マスター」がスマホの画面を見ながら立っていた。

 ーーなんだ、あいつも待ち合わせしてんのか?

 野郎ほどの人物と待ち合わせしている相手のことも少し気になりつつ、敦士は『ペックさん』が到着するのを待った。

 しかし『ペックさん』は待ち合わせ時間を過ぎてもやってこなかった。

 ーーどうしたんだろう。『ペックさん』何かあったのか?

 心配になった敦士はあらかじめ聞いておいた『ペックさん』のケータイに連絡を入れてみた。

 「『フレイ』です。(フレイというのは敦士のネット上での名前)もし何かあって遅れるときは連絡ください!」

 その連絡を入れた直後、同じく誰かと待ち合わせしているであろう「ノーチェック太鼓マスター」のケータイが「ピロリン!」となった。

 敦士は一瞬驚くも「まあ偶然だろう」ぐらいに思い、すぐにきた『ペックさん』からの返信を開いた。

 「自分はもう既に待ち合わせ場所に到着しているのですが、『フレイ』さんの方も何か都合があるときはご連絡ください!」

 とのことだった。

 不思議に思った敦士は待ち合わせ場所を見渡し「ノーチェック太鼓マスター」の姿しかないことを再度確認した。

 ーーん、待てよ。もしかしてのもしかして。そこにいる「ノーチェック太鼓マスター」が・・『ペックさん』なのか・・?

 敦士はそんな疑問を抱き『ペックさん』に再度連絡を入れた。

 「自分も待ち合わせ場所に到着しているのですが『ペックさん』の姿は確認できてません。もしよろしければ服装の特徴など教えていただけないでしょうか?」

 送信ボタンを押した直後、同じく誰かと待ち合わせしているであろう「ノーチェック太鼓マスター」のケータイが再度「ピロリン!」となった。

 今まで『ペックさん』疑惑の容疑者でしかなかった「ノーチェック太鼓マスター」は、今の一瞬で確信犯へとスイッチした。

 ーーヤッパリダァァァァ・・・・そんな予感はしてたが・・まさか奴が・・話しかけにくいの極み・・。

 そんなことを考えているうちに『ペックさん』からの返信がきた。

 「赤い帽子に、灰色のパーカ・・・」

 ーー知ってるわ!!!!

 敦士は『ペックさん』からの返信、そして1年以上も前からともにプレイしてきた仲間に「ノーチェック太鼓マスター」などという不名誉な称号を与えた自分に激しい突っ込みを入れた。

 にしても先ほどからずっと近くにいたせいかとても話しかけにくい。

 ーー行くしかねぇか・・。

 そう覚悟を決めた敦士は『ペックさん』又の名を「ノーチェック太鼓マスター」に声をかけた。

 「突然すいません・・。あのもしかして・・ノーチェ・・いや、『ペックさん』で間違いないでしょうか?」

 「はい! 私が『ペック』です! あの・・もしかして『フレイさん』ですか?」

 「・・えっ・・あっ・・」

 その時敦士は気づいた。

 明らかにペックさんは自分のことを『わたし』と呼んでいたことに。

 そしてペックさんの声は明らかに低い男性の声ではなく、とても優しそうな女性の声であることに。

 「あのー、もしかして人違いでしたでしょうか?」

 「い・・いやっ・・あの・・・・まちがってましぇん!」

 俺、水瀬敦士はコミュ障である。

 男性と話す場合この特性が発動することはあまりないのだが、女性と話す場合には大いに発揮される。

 いわゆる俺の『プレイヤースキル』だ。

 さらに初対面の女性ともなるとそのスキルにさらに倍率がかかりとんでもない効果を発揮する。

 俺がまともに話せる女子はこの地球上を探しても幼馴染の玲那と母親と妹の有利くらいだ。

 そんな俺が1年以上前からネットゲーム上で付き合いがあるとは言っても現実世界で初対面、ましてや同い年の女の子と話すなんてことは公衆の面前で「妹のちっぱいがすきだぁ!」と大声で叫ぶくらい難しいことなのである。

 「間違ってなかったら良かったです! 初めまして! 私はいつも『フレイさん』と「フィーナルフェンタジーX」を楽しくプレイさせてもらっている『ペック』と申します! 今日はお会いできて嬉しいです!」

 「あ、あ、ぼ・・・『フレイ』です! いつもお世話になっておりましゅ!」

 「そんなに緊張されなくても! 私たちいつも一緒にゲームしているじゃないですか!」

 「しょ、しょーでした! あははは・・何やってるんでしょうね!」

 そうゆうと敦士は、ここに来て初めて彼女の顔をそっと確認してみることにした。

 彼女の顔を確認した敦士は数秒間フリーズした。

 「どうされましたか『フレイさん』? 私の顔に何か付いてましたでしょうか?」

 このとき敦士は先ほど味わった『ペックさん』女の子事件よりも、更に大事件に出くわしていた。

 何を隠そう、とても優しそうな雰囲気のあるこの『ペックさん』の正体は、先日の始業式で敦士が初めて一目惚れしたあの黒髮ロングストレート色白天然美少女の愛里奏あいさとかなでだった。

 自身の中でこのような大事件が2回も重なったことにより敦士の正気は既に失われかけていた。

 「『フレイさん』大丈夫ですか? どこか体調でも悪いのでしょうか?」

 その奏の言葉によりなんとかフリーズが溶けた敦士は彼女に真実を確認してみることにした。

 「あ・・あの・・『ペックさん』。もしかして僕たち前にどこかで会ったりとかしてませんかね?」

 「前にですか? どこかでお会いしましたでしょうか?」

 奏のその返答に敦士は少し心に傷を負うも話を続けた。

 「あのー・・例えば学校とか・・」

 「学校ですか? え、ええ・・! ・・もしかして『フレイさん』ってうちの学校の生徒さんなんですか!?」

 動揺する奏に敦士は恐る恐るも禁断の質問をしてみた。

 「いやっ・・えーと・・あのー。多分・・はい。『ペックさん』って2年1組の愛里奏さんですよね・・?」

 その質問で奏の顔は真っ赤になり敦士に向けられていた目線をそらした。

 「な・・えぇ! ま、まさか名前までご存知だったとは・・びっくりです・・」

 「いや、えっと、そのー・・たまたま同じクラスだったもんで・・あはは・・」

 「えぇ! クラスメイトだったんですか?! いやっ・・ホントお恥ずかしいです・・」

 全力で照れ隠しする奏の姿に敦士の心の中ではニヤニヤが止まらなかった。

 ーーなんだこれ!あの黒髮ロングストレート色白天然美少女が『ペックさん』で1年も前からずっと知り合いだったのぉ!?しかも前昼休みに話してたどうしても外せない用事って俺との用事のことだったのか!なんか嬉しい!すごく嬉しい!敦士くん元気になっちゃーう!(いろんな意味で)

 そんなお花畑みたいになっている敦士はここで初めて「うちの学校でよかったぁ」と思った。

 そして更には先ほどのゲームセンターでのことを奏に話し始めた。

 「あのー・・さっきすごかったですね! 「太鼓の名人」! 僕あんなに上手い人初めてみましたよ!」

 「え、ええええええっ! あれもみてたんですかぁぁぁぁ! ど、ど、どうしよう・・恥ずかしすぎる」

 「いやいや! シンプルにすごかったですよ! 3連続フルコンボなんてなかなかできないですもん!」

 「う、うぅ・・・・」

 脳内御花畑状態の敦士は自分がコミュ障であることなど忘れ、奏にグイグイ話しかけていくのだった。

 「いやぁー。でもまさか『ペックさん』がうちの学校の生徒でしかも同じクラスの愛里さんだとは思いませんでした! なんか世間って意外と狭いのかなぁ!? あははぁ!」

 「こ、このことは誰にも言わないでください! お、お願いします!」

 「わ、わかりました。このことは内緒にしておきますので!」

 「あ、ありがとうございます・・。フレ・・。あれ? そういえばお名前はなんとお呼びすればいいでしょうか?」

 「あ! 自分は水瀬敦士と言います! 敦士で大丈夫ですよ!」

 「それでは水瀬くんで」

 「あ、はい」

 敦士はここで自分を客観的に見つめ直した結果、奏のような大人しい女の子からしたら自分はかなりウザいタイプであるだろうということを認識し今世紀最大級に自分を呪った。

 「あ、あのー・・すいません本当。なんかテンション上がっちゃって」

 「いえいえ、とんでもないですよ! 同じゲームの戦友が同じクラスだったことに少しびっくりしちゃっただけで!」

 「あ、ならよかったです。本当に・・」

 心底ホッとした敦士に奏は彼のこれからの学校生活を大きく変えるこんなお願いをしてきた。

 「あのー・・水瀬くん。」

 「どうしました?」

 「突然こんなこと言うのも変なんだけど・・」

 「ふぇ?」

 この謎の空気とほんのり匂う告白フラグ感に敦士は少しドキドキしていた。

 「突然こんなこと言うのもおかしいんだけど・・」

 「ふぇ!?」

 「水瀬くんを信用できないわけじゃないんだよ!? でもやっぱり・・秘密を知られて恥ずかしいと言うか・・なんと言うか・・」

 この奏の発言に敦士は「告白じゃないね」とあっさり気持ちを切り替えた。

 「だから・・私の部活に入って!」

 「ふぇ? ふぇぇぇぇぇぇ!?」

 一瞬何を言っているのかわからなかったが、どうやら俺は部活の勧誘を受けたらしい。

 「ぶ、部活って・・またそんな急に言われても・・」

 「ねぇ水瀬くんお願い! うちの部に入って! この秘密は絶対知られちゃいけないの! だからできるだけ水瀬くんのそばにいたいの!」

 黒髮ロングストレート色白天然美少女に面と向かって「そばにいたいの!」と言われた敦士は、

 「はいぃ!」

 と無意識的に返答していた。

 



 俺は初恋の女の子と部活をすることになったらしい。

 

 

 

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

この先さらに敦士の学校生活はヒートアップしていきます!

次の話もお楽しみに!

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