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脱兎と啓蒙かのじょ  作者: よしかわ
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なにも見えない。そして、狭い。


「我々で終わらせなければならない」


徐々に体の温度が下がっていくのが、わかる。


「けれど、お前には辛い役回りをさせているな…」


「お父さん、これはわたしの決めたことだから」


そうは言ったものの、もし自分が父の立場でも同じことを思うだろう。今、自分の体が収まっているこの機械は、ある意味では棺桶と同じなのだから


足先の感覚はすでになくなっている。この棺桶の中にある拡声器ごしの父の声ももうすぐ聞こえなくなるだろう



遠くでまた大きな爆発があったのだろう、地下10メートルほど地下にある施設にもかかわらず、からだに振動が伝わる。

もうすぐわたしの乗っているこの機械はさらに地下に潜ることになる。


思えばこの19年間、女の子らしいことはなにもしてこなかったな

移住や勉強ばかりで誰かと仲良く遊ぶなんてできなかった。

まぁ、それも自分で選んだことだし、苦でもないけど


「すまない、そうだったな……あと1分ほどで、お前も眠りに入る。あとはサーチデバイスの反応があるまで目覚めることはない。なにか…言っておくことはあるか?」


少しぼんやりしてきた頭で、わたしは自分のやるべきことをもう一度頭の中に反芻する


(わたしが終わらせる…永遠に繰り返すわけにはいかない)


そして、父へ最後の言葉を


「お父さん!わたしほんとうにお父さんが大好きだったよ!勉強だってすごく好きだったよ!ほんとうにありがとう!」


「あぁ…ああ!お父さんも幸せだった!天国で母さんと一緒に見守っているからな…!そして、お前もかならず──」


意識が遠のいていく、地下に落ちていく、父の言葉は消えていく


「かならず、幸せになってくれ…」







──────────────────────────────────


「なんだ、これは…」



灰色の、楕円形のソレはまるで地下から這い出てきたように周囲の土を盛り上げて横たわっていた

一見するとコンクリートの塊のようだが、片方の端が丸く開けられている。中を除くとたくさんボタンのようなものや、キーボードのようなものがある。

ただキーボードの文字も形も、いままで見たこともない


「もしかして、現代アートの作品とか?」


と、言葉に出してはみたがたぶんそれはないだろう


まず、ここはウチの畑だ。ぶどう畑だ。





「なんか、父さんワイナリー作りたいなーって思って…」


父さんがそう言い出したのは去年の1月ごろだったか

都会に喧騒にうんざりしているとは前から言っていたが、なんの相談もなしにいきなり仕事やめてくるか、普通。


「はぁ??いきなりなに言ってんだ、だいたい母さんや俺やゆずきはどうなるんだよ!」


「あら、母さんはもちろん賛成よ。お父さんとならどこまでも行くわ!」


これは、まあ予想通り


「じゃあ、ゆずきは!あいつは学校があるだろ!」


「ゆずも賛成だ!田舎で暮らしてみたかったらしいんだ。な、ゆず?」


「うん!!たぬきさんとか、シカさんに会うのたのしみっ!」


ああ、ほんと性格似てるな、この親子は!


「おれは反対だからな!」


「いや、お前ニートだしやることないだろ。お前は強制的に連れて行きます。それとも、働いて生活費稼ぐ?」


「」


「じゃあ、皆のもの!来月には引っ越しじゃー」


「「おーー!」」


「…ぉー」





こんな感じで現在、6月

後継ぎがいないぶどう農家の人を探していたらしく、すでにぶどうは今年から収穫できる状態にあり、その畑では生食用とワイン用のぶどうが2:1くらいの割合で採れるようだった



今日は外せない用事とやらで父さんが出かけていったので、俺が畑の様子を見に来たのだが、まさかこんなものが地面から生えているとは


「重くて動かせないよな…」




そう思い、手を伸ばした


「うわっ!」


手が触れようとした瞬間、空いていたフタが閉じられ、それは振動をはじめた

それと同時に出てきたであろう穴に潜ってゆく

動いたことにも驚いたが、あんなふうに地面を潜る機械を見たことがなかった


「写真、撮っとくんだったな……ん?」


とりあえずこの穴をどうしようかと考えて、辺りを見回す

するとまた、異常なものを発見した


それは一見、手のひらサイズの薄いガラス板のようだった。たがそれは、物凄い量の文字で埋め尽くされていた


すべて日本語なのだが、常に新しい単語がしたから出てきてなにを意味するのか、どういう原理で動いているのか、わからない


「たぶん、持ち主はさっきの塊と同じだよな…」


俺はそれを拾ってみたが、ボタンなどもなくひたすら文字が暴れている。よくわからないので、持ち帰ろうとした、その時


「#%^&#@%ーー!!」


女性の声に振り返ろうとすると、目の前が真っ暗になった

感覚で、手のひらのガラス板が電気を発したのがわかった











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