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無限死地獄  作者: 法将寿翔
ある男の話
19/24

18話 動く

竹田組事務所、組長の部屋。

そこには2人の男がいる。

2代目組長の竹田、若頭の佐伯だ。


2人とも一目でならず者と分かるような服装をしているが、

佐伯は元々東京の私立大学の出身で、元々極道の世界とは縁のない男だった。

大学卒業後に起業するも失敗し、竹田組の所属していた組が運営していた闇金から莫大な借金をしたのだ。


12年前の東京。


「許してください!何でもします!」


2人の若い男が頭を下げている。

昔の佐伯と、もう一人は大学時代の友人だ。


「そう言ったって、おたくらの借金はえらいことになってんだよ」

笑顔ファイナンスの社長、という肩書の組員が机に脚を乗せ、煙草をふかしている。


「こっちの世界に下手に足踏み込んだら、そう易々と戻れねえんだよ。

一生を世界の奥底で、奴隷として過ごしてもらうことになるだろう」


「まあ、2人のどっちかが臓器全部売っ払ったら、それで済む話なんだけどねえ」


半分脅し文句の一言を社長が言うとほぼ同時に、

佐伯は横にあった置き時計で友人の頭を思いきり殴った。


頭から血を流す友人の横で、佐伯は平然とした顔でこう言った。


「早くこいつの臓器を取らないと。ダメになっちゃいますよ」


そんな佐伯の様子を見て、その男は極道の世界に佐伯をスカウトした。

その後、持ち前の残忍性を活かして出世する……

と思いきや、スカウトに至るまでの経緯から

「裏切りの佐伯」と呼ばれ、

仕事は出来るが信頼はできないと、冷遇されていたのだった。


佐伯は先ほど顔見知りの高村を射殺した。

出身が同じで、かつ竹田組が離脱する前は同い年ということもあり

元はそれなりに仲良くしていた。


佐伯はそもそも本当に高村に竹田を暗殺させるつもりだった。

竹田がいなくなれば、トップの座は自分のものになる。

だが、カズヒコが憑依した高村はいつまで経っても銃を撃つことはせず、

業を煮やした佐伯が隠蔽のために高村を射殺したのだった。



「大丈夫ですか、組長!」

心配する風を装った佐伯が竹田のもとに駆け寄る。

硝煙の焦げ臭さが部屋に残っていて、

全身から血を流した高村が横たわっている。


「ああ、大丈夫だ」

そう答える竹田の額には汗が浮かんでいた。


「ナカムライチロウという男を知っているか」


「いいえ、知りません」


「調べろ、高村を俺のもとに仕向けた奴かもしれん」


「かしこまりました」

高村を仕向けたのは俺だよ馬鹿、と思いながらも

佐伯は返事をした。

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