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Sirlura project

Sirlura【1】 -シューティー・バード編-

作者: 宇都宮 葵

初めて。おはようございます。こんにちは。こんばんは。

宇都宮葵と申します。

本作品『Sirlura』は連載ではございませんので不定期ではありますが、シリーズものとして投稿していこうという次第です。

拙い文章ではありますがどうぞお付き合いお願い致します。



 -2345年-


 世界各国さまざまな国がは二つに分裂した。

 もちろん日本も例外ではない。地下に新たな都市を設け、地上とは全く別の性質・秩序ちつじょを持った国が出来上がっていた。

 〈ラズム〉と呼ばれる地下都市と〈ライム〉と呼ばれる地上都市。

 それぞれ違うものを持っているため各分野で格差ができるのは至極当然とされているが、それらの差は歴然としていた。

 そして、23世紀末期では科学の進歩とともに仮想空間かそうくうかんとの出入りが可能となった。

 地上と地下の格差の要因の一つとして仮想空間へのダイブ-通称〈イルラ〉が挙げられたのは24世紀初期であった。




【1】



「イルラ・スタート!」

 低い男の声が、光が一生届くことのない路地裏に響く。

 同時に辺り一面が薄い青一色に染まっていく-幻覚に陥る。

『イルラを開始します。周辺の皆様は巻き込まれぬよう半径10m以内に踏み込まないようご注意下さい。』

 女性の声の冷たい電子音アナウンスがスピーカーを通して流れると同時に我先にとでもいうかの様に見物人がぞくぞくと集まってくる。


 イルラとは特定の人間の肉体と精神を切り離し、精神のみを仮想空間にダイブさせ、他人の精神とのリンクを可能とした21世紀でいうオンラインゲームの一種として確立されている。もちろん、精神のみのダイブであるため肉体に影響は一切ない。

 それを利点に数年前から現在に至るまで若者たちの人気になっているのが仮想空間での戦い-〈シルラ〉である。

 シルラでは精神をリンクさせた者同士が身体能力と妄想力によって力比べをするわけだが、もちろんそれだけではない。妄想するというのだから、武器の召喚、超能力ちょうのうりょく魔法まほうと言った類いも使用できる。

 ただし、自らがそれらを使用するのではなく〈メイト〉という-この時代には生活に必須の汎用型はんようがた人工じんこうペット に指示を出し繰り出す仕組みとなっている。

 この妄想ストリートファイトのようなものは、ラズムですでに国技とされ、週に一回水曜日、月に一回28日、年に一回12月24日に国主催の公式戦が行われる。もちろん、自分の力を測るために強者達が挑戦するのだが何より優勝者への賞金が良い。


朝比奈あさひなぁ……覚悟しろよぉ…」

「お前はまた絡んできたのか……」

 朝比奈と呼ばれた青年は小声で唸りながら、辺りをちらりと見渡し完全にイルラに取り込まれたことを確認すると対峙たいじする相手を見ると場の雰囲気ふんいきが一気に緊張の色を見せた。

「よくも、よくも俺のメイトを使用不可の廃棄物にしてくれたよなぁ?」

 対峙する男の目の色が狂気を含んでいることは容易にわかる。

 しかし、青年は首を傾げた。自分に対して発せられた言葉の内容について一切の記憶がないのだ。

 -たしかに先日この男と大戦はした。

 青年は心の中で呟く。

 -だが、この男のメイトを廃棄物にした覚えはない……。

 人違いではないのかと口を開こうとした瞬間、男が耐えかねたのか虎型のメイトを召喚しょうかんし指示を与え始めた。

「……狙撃開始」

 冷たい声色とともに虎の口から機関銃きかんじゅうらしいものが出現し、手加減もなく青年に向けて複数の弾が襲いかかってくる。

 身体能力の限界が許すかぎりの全力で青い床を蹴り、空気を裂きながら紙一重かみひとえで避けていく。

 時折、短い呪文スペルを唱え攻撃を防ぎ、走り、相手の上を飛び越え、わずか数秒で近距離攻撃が行える範囲内に侵入した。

 突然のことに怯んだ相手の隙を見逃さずに真っ正面に蹴りを入れた。

 そのままよろよろと数歩後退した男に先程までのお返しというかのごとく素早くメイト-これまた狼型を召喚し、銃を手にした瞬間、青年は反射的に引き金を引いていた。

「あ"?あ……ああぁぁ!!!」

 奇声を上げながら、男は血塗れの身体を大きく揺らしながら青年へと歩みを進め、掴みかかろうとした時にまたもや冷たい電子音が流れた。

『勝負がつきました。ただいまよりイルラを解除します。しばらくお待ち下さい。』

 青い壁一面に勝者の顔と『win』という文字が表示され、青年-朝比奈あさひな真琴まことは息をついた。


 シルラを見物していた者達も終了とともに息をつき、朝比奈へと駆け寄る者もいた。

 勝者の顔を拝みたいという好奇心により話かける声に振り返った真琴の容姿は驚くほど女性らしさを含んでいた。肌は白く滑らかで、黒く艶やかな黒髪は肩につくかつかないかというほどで男とも女とも取れない。ただ、唯一少し低めの声だけが朝比奈を男だと判断できる材料だった。

「いやぁ!兄ちゃん!スゲーな!!!」

 興味本意で話かけてきた見物人の一人の男-一瞬熊かと思うほどの大柄なおよそ20代後半がバシバシと朝比奈の背中を叩きながら豪快に笑っている。

「そんなことはないですよ……ただ、シルラをしていることが多かったから…」

「んな謙遜すんなって!俺とも一戦交えてほしいものだな!」

 ちらりと敗者を見やりぎこちないウィンクをして「アイツみたいにボロボロにされたくはないけど」と冗談まじりで笑っていた。

「俺、あんまり好きじゃないんだよね」

「そりゃ、どうしてだよ?あんなに強けりゃ楽しいもんだろ、普通はよ」

 相手の言葉に苦笑いしつつ誘いを断った。

「うーん、そうか……。まぁ、気が変わったら連絡してくれ」

 男はそう言うと、手首につけていた腕時計状の機械を操作し住民番号-21世紀からのシステムを少し変更したものと連絡先を空中に現れた小型モニターに表示した。

「俺はザミルってんだ。ま、シルラでのユーザー名だけどな」

「俺のユーザー名は朝比奈だ。よろしく、ザミル」

 無意識に右手を差し出した。ザミルは一瞬戸惑うように目を瞬いたが満面の笑みで右手を握った。



 -2345年10月28日-


「で?俺にその団体戦に出ろと……?」

 黒いロングコートの青年-朝比奈真琴は片手を腰に当て、少し眉間にシワを寄せて小さく息を吐いた。


 昨夜のことである。

 夜中の11時という非常識な時間に突如ザミルからコール-21世紀でいうテレビ電話がかかってきた。内容は明日から始まる公式シルラの試合を一緒に見に行こうとの誘いだった。朝比奈自体はシルラに対してこれという興味もなかったが、せっかくの友人からの誘いだということもあり「観戦だけなら」という条件付きで了承した。


 -はずだったんだけど、どうも嵌められたらしい……

 いかにも、金がかかっていると言わんばかりの広い円形ホールでこれでもかというくらい深く頭を下げた大男と苛立ちが積もった可憐な少女に見間違えそうな青年のミスマッチに周囲の人間もちらちらと様子を伺っていた。

「俺は観戦だけだと言ったはずだけど?」

「そこをなんとか!!うちのチームが今月は絶対にエントリーするって聞かなくてよ~」

「なら、勝手に出てればいいだろ」

「それが人数たりねぇんだわ……。つか、もうエントリーしちまった」

「ふざけるな!」

 てへっと照れたような表情で大男を睨みつけ、朝比奈は早口に言った。

「第一、俺には団体戦が向いてないんだ!ただでさえコミュニケーションが取れないってのにシルラとなれば尚更だぞ!!」

「それに関しちゃ安心しろ。メンバーは俺とお前以外遠距離向きの奴らばっかりだから近距離で足手まといにはならねぇよ」

 悪びれもなく仲間を貶しながら説得しようと試みるザミルはふと疑問を投げ掛けた。

「そういや、何で個人戦はいいくせに団体戦が嫌なんだよ?」

「個人戦は怪我すんのが自分だけだろ」

「でも、肉体にダメージはないだぞ?」

「…………。」

 黙りこんだときの隙をつから、ザミルに引っ張られるままに待ち合い室に連行された朝比奈は仏頂面で試合に参加させられる羽目になった。



 第一、第二、第三と試合が終了し、朝比奈、ザミル達の試合も近づいていた。

「俺達の試合は第五だこれに勝てばまずは賞金5万がもらえる!今後の活動費だ!決勝まで進むぞ!!」

「…………。」

「コラ、朝比奈!なんて顔してんだ!気合入れろ、気合を!」

 大男はかすかな苦笑いを滲ませながら声をかける。

「あ、あの……朝比奈さんって近距離派なんですよね…。僕頑張って援護しますのでよろしくお願いします……」

 先程、待ち合い室で顔合わせをしたときに西グチと名乗った小柄の気が弱そうな少年が恐る恐るといった様子で頭を下げた。

「あぁ……よろしく」

「あ、えっとすみません……」

 何故謝るのかと苦笑いを溢した朝比奈は腹をくくることを決め、軽くザミルの肩を小突いた。

「出ることが決まった以上全力でやらせてもらうけど……ザミル、あとでラーメン奢りな」

「優勝できたら、な」

 しばらくして、シルラでお馴染みの声のアナウンスが会場内に鳴り響いた。

『まもなく、団体予戦第五試合を開始します。選手の皆さんは3分後フィールドまで転送されますので最終確認に入ってください。』

 ザミルは首を鳴らしながら、

「強い奴らと当たればお前の本気が見れるんだろ?楽しみだな」と笑いながら。西グチは不安に刈られながら

「やめて下さいよ!強い人たちとは本戦でしか当たりたくないです!」と抗議している。

 可憐な容姿の青年は、ゆっくりと立ち上がり転送とともに言葉を発した。


『イルラ・スタート!』


 フィールド一面が薄い青一色に染まっていく。

『団体予選第五試合はじめ』

 淡々とした開始の合図に敵も味方もメイトを召喚する。


 公式の試合では先のストリートファイトとは違い、技のレベルによりダメージ量が決まる。相手が戦闘不能になった瞬間に勝者となるシステムで悪く言えば必殺の大技を習得し相手を打ち込む事が出来れば勝利は確実なものと言っていい。

 だが、そう簡単にはいかず習得方法、発動条件が高難易度であるからして大抵のプレイヤーはある程度のダメージを与えられる中堅レベルの技を繰り出す事が大半である。

 そんななかに大技を容易に繰り出せるプレイヤーをレジェンドクラスと評し、現在のレジェンドの名を手にしているのは地上地下あわせて7人だと言われている。


「おい!さっさと召喚しろ!無駄にHP食われるだろうが!!」

 メイトをなかなか召喚しようとしない朝比奈に痺れを切らし声をかけるが、かけられた本人は聞こえているのか、いないのか生身(?)のまま敵を突進していく。

 生身(?)で突っ込んでくるのを格好の餌食だと認識したのか複数の赤いポイントラインが朝比奈を捕らえるや否や射撃が始まる。

 しかし、捕らえているはずが全て弾が外れ、加速しながら確実に近づいてくる敵に驚愕の色を見せ連射した。

「うそだろ……なんで…だよ!?」

 確実に狙いを定めるために少し距離をとるためにほんの一瞬動きを止めたときだった。

 朝比奈は身体を右に捻り、勢いよく床を踏み込むと同時に相手の銃を蹴りあげた。慌ててメイトから新たな武器を出そうとしたところ

 を完全に捕まり、身体ごと吹き飛ばされる。壁に叩きつけられ意識を失い戦闘不能となった敵の一人を申し訳なさそうにちらりと見て、周りの様子を気にかける。

 ザミルも朝比奈の動きに驚愕した相手の隙をつき、あらかじめ用意していた洋刀で相手を切り伏せ戦闘不能にしていた。

 -残り1人……。

 最後の一人は身動きも取れず、ザミルと西グチの技で一瞬にして戦闘不能となった。

『イルラを解除します。しばらくお待ち下さい。』

 試合終了のアナウンスとともに巨大モニターに三人の名前と『win』という文字が表示される。

 イルラが解除されるとザミルも西グチも上機嫌で待ち合い室に戻り、そのあとを追うように朝比奈をその場を去った。


 試合時間は6分21秒。

 いくら実力に差があったとしてもあり得ないとされたタイムを叩きだし、大きな話題となり名前が広がったため、朝比奈の機嫌がさらに悪くなったのはこれまた別の話。




















宇都宮うつのみやあおいです。シリーズ一作目となる『Sirlura【1】シューティー・バード編』を読んで頂きありがとうございます。


さて、仮想空間での妄想力、リアルでの身体能力で対戦するSirluraですが、実際あったとしても、さすがに私は即負けしそうなので参加したくありません。脅される以外は(笑)。


拙い文章がたらたら続いて読みにくく分かりにくい部分もあったかと思いますが最後までお付き合いありがとうございました。


(シリーズ次作ネタバレ有注意)

今回は「初戦突破だけで短いストーリーでつまらないなぁ…」なんて考えていたんですが、突破後を書いていると途中で文字数が足りないことが判明したので次作に回すことになったんですよね。

「せっかくヒロイン出そうと思ったのに」と一時的に意気消沈するほど残念でした。

という訳で、次作はヒロイン(かわいいとは言っていない)、その他もろもろ登場ということで楽しみにしていただけると幸いです。



2015年10月22日 宇都宮 葵

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