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紅蝶

作者: 玖龍

夕暮れは雲のはたてに物ぞ思ふ 天つ空なる人を恋ふとてーーーー詠み人知らず(古今和歌集)

《夕暮れになると雲の果てをはるかに眺めては物思いをすることです。雲の向こうにいるような、自分の手には届かないあの人を恋慕っているのです》

あの日


どこに行くとも


何をするとも告げないで


貴方は去っていきました


私はひたすら涙して


追いすがったのを覚えてますか


遠く遠く


澄んだ鐘の音が聞こえると


いつだって貴方を思い出します


月を見ては昔日を懐かしみ


隣にいた貴方の温もりを慕っています


貴方が残していった衣の袖は


今でも乾くことを知らないで


ひたすら貴方の帰りを待っています


紅き蝶たちは


時の儚さを知らず


夢は散るものと思わないで


その羽はいつか黒ずみ


地に墜ちたとしても


命を燃やして舞うのでしょう


私はひっそり墜ちた蝶を抱いて


冷たい海に身を投げれば良かったのに


いつか貴方が帰ってくるかと思えば


そんなことはできなかったのです


また会えたときには


私に「おかえり」と言わせてください


そうして私を慰めてください


見果てぬ夢も


届かなかった想いも


そのときには全て忘れられるでしょう


巡る年月は早すぎて


それでもこの祈りを託します


どうか


どうか


飛ぶのに疲れた蝶たちが


羽をたたんで


ゆっくりと眠れますように


私も


そんな夢を抱いて


いつかは貴方の傍に降りるでしょう


それまで


どうか


私を忘れないで


瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末にあはむとぞ思ふーーーー崇徳院(詞花集)

《浅瀬の流れが早いので岩に一度はせき止められてしまう滝川の水が後に再び合流するように、恋しい人と別れても後日必ず逢おうと思います》


読んでくださりありがとうございました‼

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても綺麗な詩でした。 恋の切なさが余韻に残り、浸らせて頂きました。 ご執筆ありがとうござました。
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