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アミューズメント✖️アイランド  作者: 迫川あざみ
2/2

第2戯

 確かに時間は制した。朝起きたらバスに乗り戦略を考え、宿に着きカギと一か月分の食事券をもらい、部屋で今日の種目のルールを確認してからギャンブルに向かった。

 我ながら完璧な時間の使い方だっだ。しかし、やはり偶然という暴君を止めることはできなかった。目の前には掛け金十万円を要求してくる頭のおかしなやつがいる。

 フードを被っており、あんまり顔は見えないが、髪はショートで少し茶色がかっている。身長は俺よりちょっと低い165センチくらいで細い手足にすらっとした身体。華奢な体はまるで女性であるかのようだ。そして腕時計に表示されている名前を見ると、ナ ギ サ の文字が並んでいる。

 同性同名かと一瞬考えたがそれはあり得ない。なぜなら同じ名前の人には苗字のイニシャルが一緒に表示されるからだ。例えばハヤトは O・ハヤト で表示されているしあのペアも確かKT・ジュンと表示されてたはずだ。ゆえにこいつはあのナギサのなのである。まさかまだAパークにいたとは。

 再び左手の時計を見るとナギサの所持金は5500000円となっていた。この金額をみる限りおそらくこいつはAパーク最大の掛け金、10万円で常にお金をかけているのだろう。まずい、次元が違う。まじレベチ……

 本当は降りるべきなのかもしれない。おそらく他の人がこの勝負を受けると言っていたのなら間違いなくやめろというだろう。だが実際に目の前に10万円という大金を差し出されたらどうだ。欲しい。手にしたい。普通ならやらないとわかっているのに……

「OK、受けよう、10万で。」

 勝てばいいのだ、勝てば……

「ヤー、一人なぬかみ?」

「……えっ?」

 なぬ神?一人のなぬ神?言っていることはよくわからなかったが、俺は覚悟を決め承認ボタンを押した。

 今週のゲームは文字抜き。”あ”から”ん”までの46音でつくった言葉でお互いに言っていき、同じ文字を使うか、相手に文字をすべて使い切られるか、時間内に答えることができないかすると負ける。持ち時間は一分。

 どのゲームにおいても挑戦者が後攻となるので自動的に俺が先手になる。

「”いとこんにゃく”」

 左腕の時計にはOKと表示されている。これがバスの中で考えた最も有効な一打。まず最も使うであろう拗音を取りうる”や”を使うことができ、さらにしりとりではタブーとされているがよく使う”ん”を使うことができ、さらにカ行を二文字も使うことができる。糸こんにゃくをつくってくれた人、まじサンクス。

「巣」

「!?」

 予想外だった。このゲームは相手に使われないものを自分が使うことにより相手を苦しめていくものであると思っていた自分にとっては以外すぎる言葉……。しかし相手のペース飲まれてはいけない自分で考えたことをしっかりと実行することを再び心に決める。

「”しょうかき”」

「湯」

「”あせ”」

「鵜」

「"けむり”」

「絵」

 正直つらくなって来た。今更気づいたがこのゲームは自分で言ったは相手のターンが終わった時点で自分に刃を向ける。いわゆる諸刃の剣である。そこで俺も一文字作戦に出る。

「”わ”」

「炉」

「”へ”」

「火」

「”ふ”」

「毛」

「”て”」

「目」

「”は”」

「おもち」

 ここで初めて一文字でない言葉をナギサが使って来た。あのナギサと言えど苦しいと見える。そして俺はここで勝負に出る。

「”たな”」

「空」

「”つの”」

「骨」

「”まる”」

 思惑通りことが運んだ。もし骨ではなくまねを選択していたならばまるが使えずに負けていた。しかしナギサは骨を選んだ。残っている文字は「さ、ぬ、み、れ」の4文字だけ。記憶力には自信がある。もし本当にこの4文字だけならば文字を作ることはこのゲームは俺の勝ちだ。10万円を思うとうれしさのあまり声が漏れそうになるが必死にこらえナギサに負けを促す。

「良い勝負だったがお前の負けだ。負けを認めろ」

「ぬみ」

「は?」

 意味が分からなかったがまさかと思い時計を見る。そこには承認の二文字が浮かんでいた——


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