密約の手紙④
「近年、我々の国の周辺では、毒薬を生産する『秘密組織』が、水面下で大きな動きを見せている。この組織は、国をまたいで活動しているため、国家機密に近い様々な情報を持つのが特徴だ。一部を捉えたところで、その組織を潰すことなど、到底出来ない。」
ディルの言葉に、みな動揺を隠せずにいた。
なぜならこの国にも、『毒薬』によって殺されたとされる者が、出てきているからだ。
ハナは、詳しくは知らなかったが、アルカから聞いたことがあった。国家の派閥を臭わせるような人物や、一部の者に利益が生まれるような者が、突然亡くなることが度々あったようだ。決まって、死因が見つからないとの噂で、気味が悪い。
とにかく、彼が言うことが本当なら、これらの事件も、その『秘密組織』が関わっている可能性は充分に考えられる。
「さて、今ここに全員を集めたということは、この中に『秘密組織』の人間がいることが分かっているからだ。それも、その組織の中心人物が。もちろん、すでに目星はついている。」
ディルの言葉とともに、人々は周りをきょろきょろと見ながら、少しずつ後ずさりをする。
ざわめきが止まない。
『・・・この中に、『秘密組織』の人物が・・・いるの?』
ハナも、静かに周囲を見ようとした、その時だった。