密約の手紙③
「全員いるのですね。」
低く、鋭い声。
けれどその声はよく通り、玉座の前の王に、しっかり届いていた。
こんな状態であるにもかかわらず、彼の声を聞くなり、女性たちがさらに顔を赤らめていたのだが、ハナはそんなことに気づくはずはなかった。
「もちろんだよ。フィンネル国王、ディル・バーレット王」
我が国の王は、穏やかな口調で答えた。
それを聞くなり、ディルはゆっくりと頭を下げて、言葉を続けた。
「ここに全員集めてくださったということは、あなた様に送った手紙を信じてくださったということ。周囲に事情を漏らさずにいてくださったことに、感謝いたします。」
『あの人がフィンネル王国の王様なの?どう見ても、私と同じくらいだわ・・・。』
ハナはフィンネル王国の若い王様に、とても驚いた。それと同時に、今耳にした会話から違和感を感じたのである。
違和感を感じたのは、ハナだけではないはずだ。
『どういうこと・・・?・・・手紙・・・?』
騒然とする、王の間。
誰もがこの状況を、飲み込めないでいる。
雰囲気を一掃したのは、フィンネル王国の王であった。