密約の手紙①
「「きゃーーーーー!!!」」
「「入ってくるぞーーーーーー!!」」
「「いやーーーー!!!!!!」」
周囲の悲鳴で、我に返った。
気づくと、この部屋の右側にある大きなドアが、吹っ飛びそうなほどの衝撃で、開けられそうになっている。『ドーン』という低い地鳴りのような音とともに、ドアが揺れ動く。ドアと壁をつないでいる金具が、いくつか外れているのが見て取れた。
今にも押し入って来るフィンネル王国の軍に、みんな恐怖を覚えずにはいられない。顔を真っ青にして立ち尽くす人。金切り声をあげる人・・・。
王の前ということを忘れ、奥へ奥へと逃げようとする人で、パニック寸前である。
このパニック状態の中、ハナは、大変なことに気がついた。
「先に行っててほしい」と言われたアルカが、見当たらないのである。
「・・・どうしよう・・・。」
どんなに室内を見渡しても、アルカの姿はない。
一気に不安がハナに襲いかかる。
アルカの身に、最悪の事態が起こっているのではないかと想像してしまい、身震いをした。
自分に向けられる視線や、ひそひそ声なんて比じゃない不安。
アルカを失うことなんて、考えることができない。
『きっと、アルカは大丈夫・・・。』
確信はない。
人に聞くことも出来ない。
けれど、そう自分に言い聞かせて、信じるしかなかった。
「動くな!!」
バン!という大きな音とともに、ついに、ドアが開けられた。
勢い良く、フィンネル王国軍が王の間へ入って来る。その軍の数に圧倒され、ハナは息をのんだ。
王の間は、甲高い悲鳴に覆われ、顔面蒼白で震え上がる人、恐怖で気を失い倒れ込む人が続々と表れた。王の間の奥へと逃げ惑う人が、怒鳴り声をあげている。
みな、恐怖に顔を引きつり、パニックに陥っている。
けれど、ハナはそれどころではなかった。
アルカの無事を、ただただ願うだけで、自分のことなど考える余裕などなかったのだ。