城内散歩④
図書館を出た2人は、植物研究所へやってきた。
白い壁の建物の外に、書類を手にしながら離している人たちが見える。
「所長〜!」
カミールは遠くに見える、その人たちに大きく手を振った。ハナはあわてて会釈をする。すると、その中の一人、白衣に眼鏡をかけた人物が軽く手を挙げた。
「カミール、早速連れてきてくれたのですか?」
「もちろんです!所長ってば、ハナの事気になっていたじゃないですか。」
「あはは、ありがとう。」
2人の会話を聞いていると、リアンダーと目が合った。
「あっあのっ。」
「緊張しないでください。私はリアンダーと申します。ようこそいらっしゃいました。」
「ハナ・オレガーです。」
ハナがそれだけ言うと、リアンダーは『分かっているよ』とでも言うかのように、優しい笑顔で頷いた。
「昨日、グリーンハウスをご覧になったと聞きましたが、我が研究所の第二温室はいかがでしたか?」
ハナは昨日のことを思い出す。
フィンネル王国に到着してから、目の前にいるリアンダーたちとあいさつをした後、ディル、ラムズ、アルカとお茶をした場所。そこが、グリーンハウス。清潔感があって、きちんと管理されていて、居心地がよかった。
「とっても広くて驚きました。植物に合った環境が整っていて、居心地もよくって、すてきな温室でした。」
「それは嬉しい。ありがとう。」
そう言って微笑むリアンダーは、まるで日だまりのような笑顔を向けた。少し緊張していたハナは、ようやく心が軽くなった。
「所長、この方はどなたですか?」
さっきまで書類を一緒に見ていたうちの一人が、ハナに目を向けながらリアンダーに話しかけた。リアンダーと同じように白衣を着た、赤い髪の男性。
「ああ、紹介が遅くなりましたね。こちらは、留学生のハナさん。殿下からお話しを伺って、お会いしたいと思っていたので、カミールに連れて来てほしいとお願いしていました。」
「ええ!?所長ってば、殿下からハナの話しがあったの!?」
「カミール、知りませんでしたか?留学生が来るときは、ほぼ毎回と言っていいほど、殿下から直々にお話を伺いますよ?」
「そうなんだ・・・。」
「で、こちらは研究所の研究員です。」
そう言って、リアンダーは後ろにいた2人の人物を、ハナに見えるように手で指し示した。
「所長ってば、ざっくりだなぁ。改めまして、ハナさん。研究所の副所長をしています、コフリーです。よろしくお願いします。」
そう言って、赤髪の青年はハナに右手を差し出した。
「よっよろしくお願いします。」
そう言って、ハナは握手を返す。
「私はリン。よろしくね。」
「ハナです。」
長い髪を1つにゆるく結んだリンとも握手をする。
「ハナさん、今日はこのあと、研究結果の報告会議になってしまうが、明日なら大丈夫です。よかったら、明日から研究所に来てみませんか?」
リアンダーが優しくハナに声をかける。
それを聞いた、副所長のコフリーが、慌ててリアンダーに話しかける。
「しょっ所長、いいんですか!?」
「あら、コフリー、私は名案だと思うわ。定期観察には人が多い方がいいもの。」
「それもそうだな・・・。」
「所長、よければ私の研究チームに同行してもらってもいいですか?」
「えっ!?あっあの・・・。」
「いいでしょう。ではリン、お願いしますね。」
「はい。ハナさん、どうぞよろしく。」
そう言って、リンはハナに笑顔を向ける。
自分の目の前で、あっという間に話しが決まってしまい、ハナは困惑の表情でリアンダーを見た。
「リっリアンダー様、いいのでしょうか・・・。」
「もちろんです。」
「ほら、ハナ。みんないいって言ってるんだから、明日から頑張るんだよ!」
困惑の表情のハナに、カミールは肩を叩いて後押しをする。
自分に向けて、みんなが笑顔を向けてくれている。
その期待と、自分を受け入れてくれているまなざしが、今朝目覚めた時のようなわくわくした感じに似ている。フィンネル王国での日々に、期待で胸が膨らむのを感じずにはいられない。。
「よっよろしくお願いします!」
ハナは、満面の笑みであいさつをした。