城内散歩①
いつもより強い日差しで目が覚めた。
カーテンの隙間から差し込む光は、今まで見てきた朝日よりも強い。
眠い目をこすり、窓際まで駆け寄ると、カーテンを一気に開けた。
自国以外で迎える初めての朝。
青空が一面に広がる。
まるで、これからの日々を表しているかのようなこの青空に、心が躍る。
パーティーの夜は、あっという間にふけた。
あの後、様子を見に来たラムズとアルカに連れられて、広間に戻った。
たくさんの人にあいさつをして、おしゃべりをして、すぐに時間が過ぎてしまった。
ハナにとってパーティーは、自分が国を出る前の夜のパーティーしか経験がない。パーティーでたくさんの人がいる場所に出るのは初めてだったから、正直、おしゃべりや礼儀がちゃんと出来るか不安だった。けれど悩んでいたのが嘘のように、楽しい時間を過ごすことが出来た。陽気な人が多いってアルカが言っていた通り。そのおかげで、笑いの絶えないパーティーとなった。
昨夜のことを思い出しながら、窓に向かって伸びをする。
そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。
コンコン。
「ハナ?起きていますか?」
聞き覚えのある声。
「アルカ!?」
ハナはパジャマのまま、ドアを開けた。
「アルカ!?こんなに早くにどうしたのっ!?」
「ふふ。おはようございます。いつもだと、そろそろお目覚めの時間ですからね。今日は私もお城に用があったので、食堂で一緒に朝ご飯はどうかな・・・と。」
太陽みたいにいつもの優しい笑顔で、ハナに答えた。
「もちろん!すぐに支度するわね!」
満面の笑みで答えたハナは、持ってきたドレスではなくフィンネル王国の動きやすい服に着替えて、部屋を後にした。
「わあ・・・・。」
食堂には、既にたくさんの人であふれていた。
昨日の大広間を思い出させるような、大きな部屋。高い天井と大きな窓が、開放的だ。大きな窓からの明るい日差しは控えめなシャンデリアによって、より清々しい光となって室内に満ちていた。
「ハナ、こっちです。」
アルカに誘導され、食堂の奥へと入る。広いカウンターで、食事を注文する事ができるようだ。カウンターの奥には厨房が広がっているのが見える。
「あれ?アルカ?」
カウンターの中から声がした。奥を覗くなり、アルカの顔がぱっと輝いた。
「カミール!?」
「ちょっと!帰ってきたなら、早く言ってよ、水臭いなあ〜。」
そう言って、カウンターにいたショートカットの女性が、アルカに声をかけた。
「ごめんごめん。昨日帰ってきたの。みんなは元気?」
「もちろんよ!もう少ししたら、来るんじゃない?ん?アルカ、この子は?」
カミールがアルカの横にいたハナに気づいた。
「あ、留学生のハナよ?」
「ハっハナ・オレガ―です。よろしくお願いします。」
突然会話が振られ、驚いたハナは、自己紹介をするとペコっと頭を下げた。
「! あなたが殿下のお気に入りね?」
「?」
「・・・カミール、何それ?」
「ん?さっきジョラムが言ってたわよ?」
「・・・あのバカ。」
はぁと、アルカは大きなため息をついた。
「カミール、ジョラムの言ってる事は、気にしなくていいわ。」
「あ、やっぱりそうなの?」
そう言って、カミールはにやっと笑った。
「ハナ、こちらはカミール。この食堂のことなら、彼女に聞いてください。」
「カミールよ?よろしくね。」
そう言って、カミールはハナにウィンクをした。
・・・ジョラムと一緒だ。
昨日のジョラムとのあいさつを思い出し、ハナはそんな事を思った。
「カミール、今日のおすすめは?」
「今日はサーモンのサンドと野菜スープね。野菜はグリーンハウスの採れたてよ?」
「ハナ、じゃあそれにしませんか?」
「うん!」
がやがやとした声をかき分けて、空いている席にアルカと座る。
初めて大人数の中で食べる朝食は、素材の味もさることながら、その雰囲気が一層おいしく感じさせていた。