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黒ずきん姫とグリーンハウス  作者: 那実いずみ
第一章 企てられた「侵略」
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読めない思惑③

 見渡す限り大理石が輝く「謁見の間」には、既にフィンネル王国の若き王が、2人を待っていた。

 先回りをしていたラズムが、王の脇に控えている。その他に数名の官僚と見られる人達が、ハナとアルカを迎え入れた。


 「ハナ・ツイーズ・オレガノ姫、ようこそ我が国へ。長旅ご苦労だった。」

 低くよく通る声で、ディルはハナに声をかけた。

 玉座に座っている彼は、この大国の王にふさわしい気品と、迫力と、威厳が溢れ出していた。さらに彼の美しさが人の心を奪うのは、容易に分かることだ。

 少し伏す体勢で、ディルの話しを聞いていたハナは、

 「いえ、馬車のおかげでとても快適でございました。殿下のお気遣いに感謝いたします。」

 そう言うと、一層頭を下げた。

 「そうか。アルカ・イム、あなたは8年という間、実に有意義に過ごせたのではないか?」

 ハナは、伏した状態でディルの言葉に耳を傾けていた。

 『・・・有意義?』

 その言葉に、疑問を感じずにはいられなかった。

 悶々と考えていたところに、隣にいたアルカは、驚くべき言葉を発したのだ。

 「はい。一言では語り尽くせないほど、様々なことを学ばせていただきました。長きにわたり留学をさせて頂きましたこと、感謝申し上げます。」

 ハナは思わずアルカの方に顔を向けた。

 アルカは続けて口を開く。

 「この度、勉学をご一緒させて頂いたハナ様が、フィンネルに留学されたということで、とても嬉しく思っております。」 

 




 『?・・・・・・・・留学?』





 ハナが思わず声を出しそうになったとき。

 それを遮るように、玉座から声が発せられた。

 「では、2人からあちらでの国の様子でも、話してもらおうか。・・・お茶でも飲みながら、どうかな?」

 「はい、ぜひ。」

 アルカがすかさず返事を返す。

 「よかった。ハナ姫はいかがかな?」

 状況が飲み込めずそっと顔を上げたハナに、玉座に座るディルがウィンクを送ってきた。

 慌てて下を向く。

 「はっ・・・はい。おおおおお願いいたします!!!」

 その様子を見て、ディルは優しく微笑みながら、指示を出していく。

 「ラムズ、グリーンハウスにお茶の用意を。」

 「御意。」

 「バーベナ、今夜はハナ姫の歓迎パーティーを開こう。」

 「分かりました。そのように手配いたします。」

 バーベナと呼ばれた、短いひげを生やした男性は、手帳にメモをとる。

 ディルは、その隣にいる、白衣を着て眼鏡をかけた男性に顔を向けた。

 「リアンダー、姫は植物に興味があるそうだ。ぜひ今度、我が国の研究所を見せてあげてほしい。」

 「それはそれは。ハナ姫様、私は植物研究所長のリアンダーと申します。本国自慢の研究所へ、ぜひお越し下さい。ご案内いたします。」

 そう言って、リアンダーと名乗った研究所長はにこやかにあいさつをしてくる。

 ハナは、何がなんだか分からず、軽いお辞儀をすることしか出来なかった。




 「では、我々は行こう。」




 ディルの一言で、この場が解散になった雰囲気が伝わる。

 ハナとアルカは、ラムズに誘導されながら、謁見の間を後にした。



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