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黒ずきん姫とグリーンハウス  作者: 那実いずみ
第一章 企てられた「侵略」
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読めない思惑②

 

 馬車の扉を、誰かがノックした音で、2人は目が覚めた。


 馬車のドアがそっと開く。

 ドアが開くとフュッという風とともに、明るい光が差し込んで来た。



 「2人とも、長旅ごくろうさま。」

 開いたドアの向こうに誰かが立っている。こちらの様子を伺い、クスッと笑った声がした。

 声の主は、そっと馬車の中に手を差し出し、降りる2人をエスコートしようとしていた。寝ぼけ眼のハナは、その人を確認しようとうっすら目を開けた。

 短い銀色の髪に日の光が当たり、赤いピアスがキラッと光っている。よく見たいのに、まぶしくて思わず目を細めた。


 「ん・・・ラムズ?ハナ様、着いたようですわ。」

 アルカが大きく伸びをしながら、ハナに声をかけた。

 どうやらハナも、いつの間にか眠っていたようだ。

 太陽はすでに空の高い位置まで昇っている。

 ハナたちより遅く出発していたフィンネル王国軍は、途中で馬車と合流していたらしいのだが、熟睡していた2人は全く気づかなかった。




 そんな2人をゆっくり馬車から降ろすと、ラムズはまだ眠たげな目をこすっている、アルカに向かって言った。 

 「アルカ、荷物は運んでおいてもらえるよう手配してある。まずは謁見の間に行くように。」

 「分かったわ。ハナ様、謁見の間へご案内いたします。」

 馬車から降りると、アルカはにっこりと笑って、そうハナに声をかけた。

 「・・・ええ。」

 馬車を降りたハナは、きょろきょろと周りを見ていたので曖昧な返事を返した。

 それもそのはず。

 馬車が着いた場所は、フィンネル王国の王城なのだが、その広さ、規模、何もかもが、ハナの国とは比べ物にならないくらい大きい。目の前にそびえる高いお城を、口をあんぐり開けて見てしまった。そのお城の、さらに高い位置にある青空は、今まで見ていた自分の国の空よりも濃い青をしている。風のにおいが違う。飛んでいる鳥は初めて見る鳥だ。咲き乱れる花は、名前すら知らないものばかり。



 「ハナ様?」

 アルカに声をかけられ、我に返る。

 なんだかワクワクする。

 ちょっとしたことでも新鮮に感じる。

 普段は黒い布に隠されているマロンブラウンの髪が、柔らかい風に軽やかに揺れた。

 この国には、なにかたくさんのことが自分を待っているような気がして、緊張の中にも広がる楽しみが、大きく胸を弾ませる。

 興奮で頬を少し染めたハナは、満面の笑みでアルカの方を向いた。

 「ううん、何でもないの。行きましょう!」

 


 その笑顔は、ラムズをはじめ、馬車の護衛をしていた兵士、荷物を運び出していた従者、そしてアルカをも釘付けにしたのだが、当の本人は全く気がつかなかった。





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