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黒ずきん姫とグリーンハウス  作者: 那実いずみ
第一章 企てられた「侵略」
13/30

再会の夜⑤

 


 「わっ、すげーー!」

 「へぇ、ここが噂の温室?」



 アルカの迫力に押され、ディルとラムズは、ハナの部屋の前にある、温室に入った。

 今の時期は、セージなどのハーブや、アネモネ、バラなどが見頃を迎えている。夜のこの時間帯は、月見草がきれいに咲き誇っていた。

 「もちろんです!ハナ様がいつも大切に育ててらっしゃるのですから!!」

 アルカは、まるで自分のことのように、この美しい温室を自慢した。それを聞くと、ディルとラムズは、同時にハナに顔を向ける。

 「ハナ姫の温室のことは耳にしていたけど、こんなにすごいとは思わなかったよ!」

 ラムズはハナに優しい笑顔を見せた。

 その言葉と笑顔に、ハナは顔を真っ赤にする。

 その様子を見ていたディルは、イライラを隠せない。

 「ラムズ!ハナに近づくな!!」

と、ラムズに言葉をぶつけると、ハナの手を引っ張って、温室の奥へ向かった。

 ハナはどうしていいか分からずに振り向くと、残されたふたりは、わざと聞こえるように、くすくす笑っていた。




 この温室の中央には、小さな噴水がある。

 その噴水の水が、円形の室内にまんべんなく行き渡るような設計になっていた。

 今日は外の音楽が、水の流れる音と重なって聞こえる。

 「ハナ・・・、覚えてる?」

 ラムズとアルカが見えない所までやって来ると、ディルは足を止めた。

 「俺たち、昔に一度だけ、ここで会ってるんだ。」

 そう言って、ディルはハナの方へ向いた。

 「えっ・・・?!会って・・・る?」

 ハナは驚きを隠せなかった。今まで、隔離されていたと言っていいほどの場所で生活をしていた。城内では、限られた人にしかあったことがない。もちろん他国の王とは、一度も会ったことがないのだ。

 「それって・・・本当に私でしょうか?・・・姉とか、他の貴族の女性とか・・・・。」

 そう思うのは当然だ。ディルの言葉が信じられない。

 けれど彼はまっすぐな視線を向けて、そっとハナのマロンブラウンの髪に触れた。

 「やっぱり、ハナは布なんてかぶらなくていいよ。」

 いとおしい人を見るようにディルはそっと目を細め、ハナの髪を一房手に取りとった。そして、ゆっくりと自分の唇を重ねた。その動きがあまりにも優雅で、ハナはじっと見入ってしまった。

 「・・・もったいない。」

 




 彼の言葉を聞いて、ハッとする。

 霞がかる遠い記憶の中で、何度も、何度も、その一瞬を思い出してきた。

  



 『はずしなよ!もったいない!!』



 

 この温室で、育て始めたハーブの様子を見にきた時。

 それは、自分と同じくらいの男の子だった。

 もう、二度と彼には会えないと思っていたのに・・・






 ・・・・・・・・・まさか・・・。





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