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黒ずきん姫とグリーンハウス  作者: 那実いずみ
第一章 企てられた「侵略」
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再会の夜③

 ドアが開くと、あの美しく整った顔立ちの男性が立っていた。

 1つに結われた髪は、夜の廊下にもまぶしいほどだ。紺の布地に金の刺繍が細かくされた上着は、自国のものとは違って、ハナがさらに彼から異国の雰囲気を感じるのに充分だった。そのきらびやかな服は、整った顔立ちにとても似合っていて、彼の気品あふれる空気をさらに際立たせていた。深く青い瞳に、そのまま閉じ込められてしまいそうな魅力を感じる。

 驚いた表情で見つめていたハナ。そんなハナと目が合うと、彼はふいと顔をそらせた。

 


 その様子に、我に返ったハナは慌てて言った。

 「もっ申し訳ございません!今、黒い布を・・・っ!」

 けれど、その言葉は最後まで言うことが出来なかった。

 


 「会いたかった・・・。」

 耳元で、ささやかれる優しい声。その声が、少しかすれていたので、ハナは聞き間違いかと思ったほどだった。

 そう、次の瞬間には、ディルの腕の中に、抱きしめられていたのだから・・・。



 「あ・・・あのっ。」

 言葉が出ない。

 あまりにも突然のことで、何が起こっているのかも分からない。

 頭が真っ白なハナをよそに、抱きしめる腕に、少し力が加わった。

 「もっと、早くに迎えにきたかった。ごめん。」

 甘くささやかれる息が、耳にあたってくすぐったい。ハナは、自分の顔が一気に顔が赤くなるのが分かった。

 腕の力が緩んだか思うと、ディルはハナの顔を覗き込みながら、優しく頬に触れた。どんな人でも魅了してしまいそうなほどの、優しい微笑みが浮かべられている。ハナは一層顔を赤くし、思わず伏してしまった。

 「で・・・殿下、・・・あの・・・」

 ハナは、消え入りそうな声を精一杯出した。すると、唇に優しく、人差し指が触れた。びっくりして顔を上げる。

 「ディル。」

 「・・・・えっ?」

 「ディルって呼んで?」

 「・・・・えっ?えっ?」

 「だから、ディルって呼ばないと、キスするよ?」

 「・・・えっ?えっ?・・・キっ!?!?」

 想像もしてなかった言葉にびっくりしていると、ディルは少しかがんで目線をハナに合わせてきた。上目づかいのいたずらな笑みを浮かべている。

 「ほら、どうぞ。」

 「・・・よっ呼べません!!フィンネル王国の王様に、そんな・・・。」

 ハナは両手で口を隠し、真っ赤になりながら言った。

 けれど、深い青い瞳が意地悪に光りながら、ハナを捕らえて離さない。

 「ハナ・・・」

 甘い声でささやかれる。

 その声に、その視線に、逃れることなど出来ない。ハナは目を閉じて、口を隠したまま、真っ赤になるしか出来なかった。

 「俺にしか聞こえない声でいいから・・・言って。」

 もう、何がなんだか分からなくなる。

 「・・・っ・・・ディっ・・・」

 真っ赤になりながら、小さく口を開いた時だった。





 「ハナさまーーーーーー!!」

 「ディーーールーーーーーーー!!」



 ふたりを同時に呼ぶ声が聞こえた。

 



 「ちっ、きやがったか・・・。」

 ディルは、「はーーー」と深いため息をつきながら、残念そうにそう言うと

 「ま、ハナがかわいかったから、いいか。」

 と、ハナの頬にキスをした。




 「「「  !!!!!!   」」」


 


 ふたりを呼んだ人物が、同時に固まる。 

 


 ハナも、両手で口を隠したまま、固まることしかできなかった。


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