再会の夜②
コンコン
ハナは、大きく体を震わせた。
誰かが、ハナの部屋のドアを、静かにノックしたのだ。
誰か、と言っても、ここに来るのは侍女のアルカしかいない。
けれど、今日はノックの仕方がアルカではない。
いつもの、ノックの後に続く「アルカです。」の言葉が、聞こえないからだ。
ハナは、全身に鳥肌が立った。
「だ・・・だれ・・・?」
声を出したくても、うまく言葉にならない。
ドアの方に行きたくても、金縛りにあったように体が動かない。
どくん、どくん。自分の鼓動が耳に大きく響く。
呼吸が浅く、苦しくなる。
沈黙を破ったのは、ドアの向こうの人物だった。
「・・・体調はどう?」
聞き覚えのある声。
低く、鋭い。けれど、その声には、優しさが感じられた。
ハナは記憶の糸をたぐり寄せ、その声の主を思い出そうとした。
けれど、その応えは、すぐに返ってきたのである。
「あ、ごめん。えっと・・・ディル・バーレットです。」
その声を聞くなり、ハナは慌ててドアに走りよった。
フィンネル王国の若き王が、自分の容態を心配し、自ら訪ねてきたのだ。
「えっ・・・!?でっ殿下!?」
『もっ、もしかして、さっきことで様子を見に!?それなら、ちゃんとお礼を言いに行けば良かったわ!!』
自分の失態と、突然の訪問にパニックになる。
『それとも、お礼に行かなかったから、ご立腹とか・・・?』
ハナは思わず生唾を飲み込んだ。
『ど、どうしよう・・・。』
最悪の事態を想定して、悩んでいると、
「開けてもいいか?」
そう声がして、カチャッと、ドアノブに力が入る音がした。
「まっ、待って!!」
ハナは思わず大きな声を出した。
そこで、ドアの動きも止まる。ハナは急いで駆け寄り、閉まったままのドアの向こうに向かって続けて言った。
「し、失礼いたしました。あの・・・先ほどはありがとうございました。私から伺わなければいけなかったのに・・・。」
混乱していて、何を言っているのか自分でも分からないほどだった。けれど、ドアの向こうからは、優しい声が返って来る。
「こっちこそ突然悪かった。・・・顔を見せてもらえるか?」
「はっはいっ!えっと・・・少々お待ちください。今、布を・・・。」
ハナが急いで布を取りにいこうとした時。
「そんなのいらない。」
そう聞こえると、そっとドアが開いた。