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アナザーフェーズ  作者: 陽田城寺
防戦・ナーダ大陸!
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エピローグ兼プロローグ①暁に出る!

 出発の前に、それぞれ十人の戦士は様々なエールを贈られた。


「それではシューペルド殿、下級貴族の身分ながら全身全霊我が身を粉にして戦います」

「うむ、女の身にあれど、お前の心は帝国の戦士だ」

 確かにキャリアもテクニックもケイネの方が戦士として優秀。

 しかしマクレガーやゴードほどではないが女性より力があり、また上位貴族として将としての才覚もあるシューペルドの方が間違いなく適任である。

 ただ死んだか死んでいないか、その程度の選択基準。

 それでもケイネは再び弓をとり、かつての雄志を抱き戦場に向かう。

「ケーイーネー!」

 シルテファシスが蛸壺ほどの小さな砲を五つほど腰まわりに携え走る。

「シルテファシス! 久しぶりだな……」

 ぜえぜえと息を切らしながらシルテファシスは口早に言う。

「これ……念のため……持ってく?」

 と、シルテファシスは砲を一つだけ差し出した。

「これはなんだ?」

 疲れているにも関わらず、シルテファシスは堂々と小さな胸を張って答える。

「僕の発明した新兵器だよ。中に火薬と弾がもう入ってて、お尻の部分に火をつけるだけで弾が発射されるの。強いよ?」

「そうか、しかし私にこのようなものを使えるかどうか……」

「その点に問題はないんだけどね……」

 含みのある言い方に、ケイネが目ざとく訊ねる。

「他に何か問題があるんだな?」

 少し困った風に、けれどすぐシルテファシスは答えた。

「まあ、未完成品だから、発射と同時に砲身が砕けて、発射した人も怪我しちゃうっていうね、致命的な欠陥がね」

 ケイネは少し笑って、固い表情で言い放った。

「いらん」

 そしてシルテファシスと別れて少し、今度はマクレガーがケイネの前に立った。

「あなたは、確かマクレガー歩元帥。あなたまで私に応援でも?」

 マクレガーは眼に見えて赤くなり、照れ照れと頭をかいている。

「え、ええまあ、応援というヤツを、俺、元帥なのに何もできませんし」

 言いつつマクレガーは顔をあっちに向けたりこっちに向けたり、視線を何度かケイネに向けたかと思うと、すぐにそらす。

 それをケイネは当然怪訝に思う。

「どうかしたのか? 落ち着きがないな」

「いっ、いえいえ! あの、そういえば戦闘に向かうのに髪の毛はそのままなんですね!」

 言われてケイネは思い出したように自分の髪を撫でた。

「そういえばそうだ。マクレガー元帥、切ってくれないか?」

「いっ! いえいえいえ!! とんでもありません!! あなたは今の方がとても……」

「今の方がとても、なんだ?」

 ケイネは純粋な瞳で真っ直ぐマクレガーを射る、それをすぐマクレガーはそらした。

「いえ、それは……」

 それでも何も言おうとしないマクレガーに、ケイネは溜息をついて、堂々と進みながら、行った。

「言えないなら何でもいいさ。今の方が良いというのなら、なんであれそうしよう」

 進むケイネに、マクレガーは黙ったままだが、密かに喜んだ。

 その光景をよそに、シルテファシスが複雑な表情をしていたが、何も言わず去った。



「んじゃ、行ってくるぜい!」

 ベルモンドの言葉に応える者はいなかった。

「……俺、本当に選ばれたんだよな……?」

 数少ない戦果も挙げた、急に駆り出された中でもしっかりやった、なのに誰も見送ってくれないとは。

 とはいっても、ベルモンドの現在は銃兵顧問だとか技術班員など特徴のないパッとしない立場、前の元帥では威光も権力もないのだ。

 それでも旧知とは言えないが、神との戦いで肩を並べたダグラスやゴラプスくらいは自分の応援に来てくれると思ったのに、それどころか現銃元帥のナッサイまで来ないなんてどういうことなのか。

 若いベルモンドは淡々と毒を吐きながら、寂しく一人船に乗り込んだ。


 実はベルモンドより年上のネクロワリーナ。

 ベルモンドが想ったダグラス、ゴラプス、更にはニッケルまでが彼女の一挙手一投足を見張っていた。

 ぶしつけにニッケルがゴラプスに言う。

「ゴラプスさんよぉ、マジなのか、こいつがあの『国崩しネーナ』ってのは」

 かつて『リベレーターズ』のようにアナザーの立場を改善するため尽力した組織で、より過激な思想を持った『ジェネレーターズ』というものがある。

 その構成員であり最も名をあげたのが国崩しネーナその人である。

 既にメンバーは全員処刑されたか終身刑に処された、それがどうして元帥になっているのか。

「もう行っていい?」

「まてネクロワリーナ、話はまだ半分」

「うるさい」

 ネクロワリーナは彼女の能力『手から出る大爆発を起こす小さな球』を使い煙幕を上げ、三人の追及を逃れる。

「ああっ! 待て待てマジで待てって!!」

 犯罪者を外海に送り出すなど言語道断、自らの責任になること請負なのでニッケルは全力で止めに掛かる。

 ゴラプスも冷や汗をかいていたが、ダグラスはどこか涼しげであり、それをニッケルは睨んだ。

「おいダグラス! ぼーっとしてないで追いかけろ!!」

 だが、ダグラスは動かず、言う。

「別に、僕に責任はありませんから……」

 ニッケルは思わず黒い兜を思いっきりたたき、その固さに涙を流した。


 ネクロワリーナ・シルバレンギスことネーナ・シルギスほど混沌とした思想を持つ者は、現時点に登場しているものではシノビエンペラーハンゾかアンリアル・メトルくらいでようやく比較できるというものだ。

 ハンゾは野心や権力欲といった自らの上昇志向が、アンリアルは庇護と友情、愛情、交誼といった強い仲間意識がそれぞれ尋常ではない。

 そのために二人は人を平気で殺せるし、いざとなれば自身の命すら投げ出すことができる。

 だがネクロワリーナのそれは二人と比べ生産性も意味もない。ただ殺したくて、壊したくて、何の意味もない殺戮や破壊を繰り返す。

 彼女にとって『ジェネレーターズ』で過ごした日々は自らの、アナザーの立場の向上などではなく、ただ一番暴れられる場所を選んだのみである。

 何もかもが穢れ、汚れ、悪質で辛辣で残念で邪悪で混沌、いるだけで吐き気を催し、それでも生きなくてはならないような世界だと感じていた。

 そんなネクロワリーナが手に入れた能力は爆弾、それはその全ての嫌な者を吹き飛ばすうってつけの能力だった。

 彼女は暴れ続け、しかし当時の弓元帥によって射ぬかれて捕まり、その消息は不明になった。

 現実では終身刑、それをゴラプスが何度も面会し、様々な会話を試み、その能力を有用に活かすことを考えた。

 そうしてネクロワリーナの頑張るだとかやってみるというポジティブな言葉を信じ、その重要な役割を任せたのである。

 ネクロワリーナはやっぱり責任とか仕事はどうでもいい。けれど戦える機会を与えられた以上、爆弾を使う機会がある以上、それをするしかない。

 何より牢獄生活は辛かったのだ、自殺を何度も考えたけれどそれをしなかったのはやはりゴラプスの面会があったからだろう。

 そのため、ほんの少しではあるが恩義も感じている。彼女が裏切ることはあっても、そのゴラプスに対して露骨な敵意を剥くことはない。


 エクシェルの見送りには数多くのアナザーが訪れた。

 いや、アナザーだけではなく、彼女に命を救われた帝国民から忍者まで、多種多様な人物が列を成している。

「エクシェル様行かないでー!」

 これはエヅである、後ろからアンリアルがぎゅっと抱きついているので言葉に必死さが感じられる。

「それじゃ、行くからね……」

 最も活気に溢れる見送りの場面であるが、エクシェルの元気はない。

 ほとんど寝ずに戦い続け、そのまま人命救助に移り、今また戦いに赴こうとしている。

 女神と称される最強のアナザーの一人は、自身の怪我は治せても疲労は治せないのだ。

 青のウミにサイガードの皆が、ただエクシェルの応援を繰り返した。

 その横でアグジスが歩く。

「エクシェル、大丈夫か?」

 エクシェルは少しぼんやりしていて、アグジスが肩を叩くまで反応しなかった。

「な、なに?」

 心ここにあらずといったエクシェルを、アグジスは溜息をついて言う。

「船の中でくらい寝ろよ。いい加減見ていてこっちが疲れる」

「そう? 疲れたんなら回復してあげようか?」

 アグジスはエクシェルにでこぴんをした。アグジスの太くて堅い指でされるとその威力も並々ならず、おでこは少し赤くなり目からも涙が潤む。

「痛いんだけど?」

「なら冗談は言うな。そんなんで戦いに来られても困る」

「ふーん、さすがは隊長様ね。部下の心配はお手の物ってわけ?」

 棘のある言い方にアグジスは怒るように、しかし哀しむように言う。

「俺はお前を部下だと思ったことは一度もない。馬鹿にしたり尊敬したりで、ライバルで友人、みたいなものか……」

「へぇ、それだけ?」

「それだけ? それ以外に何か……クラスメイトとかか?」

 エクシェルは桃色のオーラを平たくしてアグジスの後頭部をパンと叩いた。

「何すんだよ!?」

「ストレス解消よ。それじゃ言葉どおり休ませて貰うわ」

 エクシェルは一人先に船へ向かい、寝た。

 アグジスは嫌な物を感じながら、後ろで見送るアークスのプレッシャーに負けないように同様に船に向かった。


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