元帥VSカイ 斬り撃て御免!
西の黄忍者残り四名うち一人が裏切り者のハナゾノ。
北の黒忍者残り二名、うち一人は中央でぶらぶらしているトコヤミ。
南の赤忍者、この時点で残り四名。
東の青忍者、中央の緑忍者はというと。
カイが中央を訪れ愕然とした。
緑忍者の猛攻の跡は見られるものの、既に帝国の軍服を着た兵が割拠している。
中央の緑忍者はどうしたのか、そんなこと、カイは考えるまでもなく悟った。
「おいあれ、忍者じゃないか?」
「本当だ! 青い装束だから別部隊か!?」
兵達がさざめく。
帝国では既に緑忍者三人の討伐が報告されている。しかし装束の色が違うとなれば別部隊の可能性が高く、逃がしてしまえば援軍を呼ばれる可能性も大いにある。
兵にとって、今、この場で殺すことが優先された。
「伝令走れ!! 別部隊と思われる忍者が出現! 場所は……」
ただちに数々の報告がなされ、ただごとではないとカイもすぐその場を去ろうと飛び跳ねた。
だが、どこを飛ぼうが帝国兵はわらわらと害虫のように集まりカイを逃がさない。
「ったく! どうして銃使っていいのに弓使っちゃダメなんだよ!?」
「いいから追えー! ……と言っても、逃げ場はないだろうがな」
建物の屋根から屋根へと飛び移るカイは見事なものだが、地上からでも肉眼で把握できるほどの高さしかない。
むしろいつ銃で撃ち落されるかが時間の問題と思われた。
カイの見える範囲で、自分が連れてきた青忍の仲間が銃で撃ち抜かれたのを見た。
銃など、ナーダ大陸には存在しない。
爆音と共に体に穴があき、何が起きたかもわからずに死ぬのはなんと恐ろしいのか、とカイは少し申し訳なく思った。
がそのためにカイは油断せずに、自らの能力を余すことなく使うことを決断できた。
そして、帝国兵は忍者など容易く倒せるという甘い考えを改めた。
弾丸はカイの体に辺り、甲高い金属音を鳴らして弾かれたのだ。
「なんだ今のは!?」
「よくわかりませんが、銃を受け付けぬ防御手段があるのかもしれません」
この程度の攻撃か、と安堵したカイの目前に一人の勇猛漢が立ちふさがった。
「ふぅん、忍者か。大層堅い体をお持ちのようで」
黒髪短髪、筋肉隆々のマクレガーはまだ穏やかな笑みを浮かべていた。
しかしうっすらと見える瞳だけは笑っていない。
「ニンニン、拙者は鉄納戸のカイでござる。尋常に道をあけわたすでござる!」
「いいとも、俺が引導を渡してやる。あの世への道をな」
自分の背丈ほどの巨大な剣を持ち、マクレガーは目を見開いた。
「断裁っ!!」
真横に一文字、巨大な剣でただの一薙ぎ、ただの打撃でしかない。
それゆえに、カイは油断してしまった。
ただの打撃だと、見たことのある武器だと、だったら防げると。
甲高くも鈍い金属音が響き渡ると、カイは断裂せずとも吹き飛んだ。
「ごえっ!!」
『身体を包む貝のような甲殻』は決して壊れることはないが、その衝撃はきちんと伝わる。
かつて緑のブドウと一戦交えたが、その時彼は五体満足ながらも完全に失神し次の日にも起き上がれないほどの深手を負ったという。
その時のことを今、カイは思い出していた。
屋根の上から叩き落され兵の中に飛び込む形になったが、それでも彼を傷つけることはそうそう簡単にはできない。
屋根の上からゆっくり降りるマクレガーを見て、腹を押さえながらカイは立ち上がる。
ゴミのようにいる帝国兵の一人一人の攻撃も、彼の集中力を鈍らせる。
痛いだけ、死ぬわけではないし腕が飛ぶわけでもない。
次に後頭部に、こつん、と何かが当たった。
直後カイの頭には轟音が響き、顔が地面へ思いきり揺さぶられた。
「おーおー、これでも死なねえとは、大したもんだな、アナザーって」
銃口を当て、撃ったのだ。
「ベルモンド殿、これはこれはどうしてこちらに?」
「そりゃこっちの台詞だマクレガー元帥。こっちは東、あんたの担当は西」
言いながら、ベルモンドは銃に次弾を装填している。
「方向音痴かっての。あんたが任せられた西はあっちだぜ、っと」
もう一弾、ベルモンドが倒れているカイの脳天に銃を撃った。
どうやら一撃目の衝撃で失神したらしく、今度の弾は貫通した。
「ふう、アナザーっつってもこんなもんか」
「ベルモンド殿、俺が戦っていた相手なんですが?」
「ここは俺の陣地だぜ? 自分のところのをやれよ。ほら西行け、西」
既に銃を磨き始めたベルモンドには、何を言っても無駄とマクレガーは割り切った。
粗方忍者を探したがいなかったため、力を試したかったマクレガーはわざわざこのような場所にまで足を運んだ、という理由があった。
止めをさせなかったもののてごたえは充分、マクレガーは西へ戻った。
東の青忍者、残りはウミ一名である。
そして中央の緑忍者が残り四名となった。




