表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナザーフェーズ  作者: 陽田城寺
防戦・ナーダ大陸!
29/38

危機的! 緑忍者

 二日目になった。

 プライムユニオンに良いことは二つ。

 一つ目はアンリアルの活躍によって青忍者部隊が離散し連携の一切がとれなくなったこと。生存者はウミを除くと、逃げたカイ、先の二つの町に残した三人の忍者のみである。

 二つ目は、ついに帝国軍が一夜の会議を経て活動を開始したことである。

 第一軍として出撃するダグラス・マクレガー・ナッサイとベルモンド率いる騎兵歩兵銃兵の三兵である。

 それらの主要な部隊をかき集め、演説を行うのはニッケル。

「今、プライムユニオンは敵に堪えがたい屈辱を与えられ、国土は侵され、民は虐殺を受け、我らの誇りは地に落ちんばかりである! 我々はそれで何をしていたか! 否、何もしていなかった! ただ指をくわえて見ていただけであった! 貴様らは一体なんだ!?」

 誰も言葉を返さない、少し経ってニッケルが再び言う。

「貴様らは帝国を、皇帝を、民草を守る軍人である! 今、皇帝は一人で戦い、民草は無残に殺され、帝国は侵されている! ならば、貴様らは何をすべきか!?」

 今度は兵隊達もちゃんと歓声を持って答えた。ニッケルに信頼がなくとも言葉には嘘はない、それに加えてダグラスの駄弁りに付き合うのが正直だるかったのかもしれない。

「では混成一軍! ダグラスの指揮下でいざ果敢に敵を撃滅せよ!!」

 そうして進む軍の中、ベルモンドが急ぎダグラスと肩を並べた。

「ダグラスの旦那、久しぶりだな」

「ええ、お久しぶりです」

 元帥と技術屋が肩を揃えるのも奇妙な話で、ニッケルのような権力意識が強いものが見れば叱咤するだろう。

 だがダグラスはおおらかであり、ベルモンドを銃兵指揮官に選んだ本人でもある。誰も咎めようとはしなかった。

「この軍隊は本当に大丈夫なのか? 俺なんて今さら呼び出してよ」

「正直微妙ですね。ナッサイは銃について何も知らないみたいですし」

「銃元帥なんだろ?」

「成り上がりですからね、ただ地位があるだけです」

 ベルモンドは言葉を失った。その表情は困ったような驚いたような。

 そんな彼にダグラスはもう一言付け加える。

「期待してますよ」

 伝説の英雄の期待は、元犯罪者には重すぎる。

 ベルモンドは顔を青くし、すぐナッサイの元へ戻った。


 今進んだ混成部隊が中央に赴き緑忍者の攻撃を止め、そこを治めた後に部隊が四つに別れて東西南北に進軍を始めるという算段である。

 少数ながらも、忍者の広範囲にわたる計画的な領土侵攻を、ニッケルはかなり深刻な状況と受け止め、全ての元帥及び前元帥、ゴラプスや自身までも将として駆り出すことにした。

 惜しむらくは敵が少数のアナザーであり本格的な軍ではないうえ、戦地が帝国であるために、多数の敵と戦うことを前提とした大砲や弓が、敵を殺す以上に帝国の全てを傷つける可能性が強いため使えない。

 また、敵銃兵に対する土塁作り、拠点築城や敵城破壊に役立つ工兵も事実役に立たない。

 よって三種類の兵が役に立たないということだ。

 それにアナザー相手では正直騎兵も扱いづらい。敵によるが、馬はすぐに驚き逃げ出す。そして歩兵同然の運用に変わってしまう。

 徐々に科学技術は発展し、シルテファシスなどの努力もあってより強力な武器ができているというのに、この戦争ではいまだ原始的な武力に頼るしかない。

(緑の忍者を撃滅した後、まず南に俺とダグラスが向かおう。西にマクレガー、東にナッサイとベルモンドを、北にはネクロワリーナとかあまりものを寄越して、中央にゴラプス殿を残しておけばなんとかなるだろう)

 自身の安全を中心に考えた計画であるが、情報すら中途半端な現状、的確な戦力配置以上に迅速な決断が求められた。

「騎兵は今より走り敵を見つけ次第撃滅せよ!」

 斥候をいくらか走らせると、ニッケルの元に女性が訪れた。

「失礼、ニッケル参謀官殿、いったい皇帝はどこに?」

 白い髪とどこか鋭い目つき、ニッケルは権力を持った者の顔はすぐに覚える。

「おお、次官のソワル殿だったかな? 皇帝は現在単身南の忍者と戦っている」

 異兵の女を恐怖しないニッケルはぶっきらぼうに言う。ソワルもアークスの行動に少し驚くが、実力を信じているため、必要以上に騒ぎ立てることはしない。

「そう、それより、クレムルームと連絡がつながらないんだけど?」

 帝国内で電話はそれなりに普及していたが、元々クレムルームには繋がっていなかった。それを新体制になって急遽用意しようと、様々に案をめぐらせていた途中であった。

「アンリアルがいるからには無事だろう。恐らく不具合が生じたのだな、この混乱が沈静し次第すぐにマクレガーと一緒に技術屋も遣わせよう」

 実際何の準備もしていないことは伝えなかった。だって恥ずかしい、とはニッケルの考え。

「ではそのように、執務様」

 ソワルが皮肉を込めて言い、その場を後にした。

 少し嫌な気がしたが、それでも敬称をつけられるのはやぶさかではない。

 ニッケルが今すべきことは兵の指揮ではなく、より綿密に計画を練ることだ。

 帝都の敵はアナザーながら少数、帝国軍全戦力を持ってすればすぐに終わると予想している。

 しかし緑忍者に純忍はおらずとも、一人曲者がいた。


 緑忍者にとって状況は最悪である。

 カラクサは万が一敵がのんびり見逃してくれれば数に含めるが、死ぬことを計画にいれていたため、緑忍者は三十名ちょうどが集合する予定だった。

 だがしかし、想定以上の早さで風船蛙が破裂したため、緑忍者は十に満たぬ数、しかも最強の純忍とよばれる『緑のブドウ』もいない。

 挙句の果てに、既に数人死亡し現在は六人となっている。

 現在その六人は無造作の奇襲をやめ、惨殺した一家の家で全員が安息し、そこで会合を開くところである。

 既に他色の忍者は散ったので、緑の忍者の使命は本拠地襲撃のみ。

 現在の行動は、良く言えば全滅を逃れるべく隠れるという斬新な作戦、普通に言えば命令に反する自衛行動、悪く言えば国を裏切るの逃避行為、これを決断したのは六人の中央で指揮をとっている年少の女性、黄緑のナガイモである。

「敵本丸が目前にあるにも関わらず、拙者達の戦力では力及ばず全滅するでござる」

 皆が黙って聞いた、年下の女性といえど忍者は実力主義の国である。

「しかしこの場で茫然と時を過ごしていては、他色忍者に申し訳がたたないでござる」

 忍者達が頷く。

「よって、六人のうち二人がここに残り状況を把握、残る四人を一人ずつ東西南北に派遣するでござる。そうして各部隊に情報を伝え、中央がいかに危機的状況にあるかを知らせ、各方面制圧後また中央再侵略をするのでござる」

 一応逃げ出すことだけを考えているわけではないらしい。

「ナガイモ殿、一人ずつ派遣するなど失敗して殺されてしまうでござる」

 当然である。既に各方向に敵はいて能力者もいる、たった一人の忍者などいつ死んでしまうかわからない。

 そして、中央に残った二人まで呆気なく殺されるだろう。

 しかしナガイモは首を縦に振りつつ言った。

「他に手段はないでござる。このまま六人が残り、来るかも分からぬ援軍を待つか、はたまた各方面に援軍を求め、それを期待するか。後者の方が可能性があるでござる」

 感情を排した、国への忠誠と国の安寧を思った作戦である。

「そうはいってもナガイモ殿、中央に残る二人が一番ヤバそうでござる」

 そもそも、多方面の忍者が失敗していれば、遠征組は即死決定である。

 しかも各方面で各忍軍が上手く大陸の端まで制圧していたとして、この緑忍者が追いつくには単純計算でも一日以上はかかる。その間中央の残された二人はどうなるか。

 そもそも中央に残る者は戦うにしても状況を把握するにしても、逃げ隠れるにしても、その中央という漠然とした範囲から逃げ出すことができない。派遣される四人は一目散に走り続け、逃げ続ければよい。どちらの方が生存率が高いか、考えればすぐにわかることである。

「いっそ、どちらか二方面に二人派遣、残り二方面に一人ずつ派遣すれば……」

「ブドウ殿なら、きっとここに来てくださる」

 ナガイモはそう一言いい、付け加えた。

 感情、一際強い想いと希望的観測にだけ頼った、ナガイモの一言。

「少なくとも拙者はここに残るでござる。他の者は各自で好きなようにするでござる」

 そうして緑の忍者達は、動き始めた。



 ここまで音沙汰のない北のエクシェルと西のアグジスは、アークス同様忍者を次々と倒していた。

 あらゆる物質を磨耗させこの世からなくすアグジスと、物理的、概念的性質すら補填するエクシェルは各純忍レベルの実力者であり、精々戦うことが出来るといった一人一人の忍者ごときに苦戦しようもないのだ。

 アグジスと戦う者は口々にこう言った。

『ニンニン、ハナゾノ、裏切ったでござる!?』

 そして特に何をするでもなく死ぬ。

 別に仲間意識がないわけではないが、ハナゾノは特に何も感じず、無傷で敵を殺していくアグジスを凄いと思うだけであった。

 里の仲間意識以上に強い感情が忍者にはある。

 それはナガイモがブドウに持つような恋慕、ウミワタリやレップウが仲間に持つ友情、もしくは皆が今だけ抱いているハンゾに対しての崇拝や畏敬などである。

 そのため、むしろハナゾノは圧倒的な強さを持つアグジスの方に仲間意識に近いものを持ち始めた。

 恐怖か恋慕か、はたまた畏敬か、その感情は定かではないが彼が自分よりも上だということを完全に悟り、死に行く忍者以上に思いを持った様子である。

 当のアグジスは彼女を怪しく思っているが、敵と味方は本来そういう関係である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ