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アナザーフェーズ  作者: 陽田城寺
防戦・ナーダ大陸!
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戦況


 帝都ルサングルの軍会議、ダグラスはすっかり談笑を開始し将校達の機嫌を損なっていた頃、一人の男が現れた。

「こらぁー!! 軍人どもが何をにへらにへらとしゃべっている!? たるんどるぞお前ら!」

 参謀官のニッケルである。

「ああ、ニッケルさん、お久しぶりです。最近調子はどうですか?」

 ニッケルの怒りはまさしく将校全ての怒りでもあるが、ダグラスがこのような態度では兵は反論できない。

 が、ニッケルにはそれができる。政治家として、上司として。

「どうもこうもあるか! ルサングルは緑の忍者の攻撃を受け、帝国は北も南も東も西も、全部の方面で攻撃を受けている! それをお前らは何をだらだらと……」

「でも、アグジスさんやエクシェルさん、皇帝がそれを鎮圧して下さっているのでしょう?」

「そのとおりだ! 皇帝自らがその英姿を曝し民草のため直接力を振るっておられるのに、その皇帝を、帝国を守るための軍が今動かずして、何のための軍であるか!?」

「でもでもぉ」

「でもも何もあるか! サイガードのアナ……異兵は消息がつかめぬのだぞ!?」

 直後ダグラスの声色が変わった。

「なに?」

「知らんわけあるまい! 異兵達は旧クレムルームに戻って……」

「聞いていないぞ」

「えっ?」

 場が騒然となった。

 ダグラスはサイガードが中心を守りつつ徐々に帝国全土へ広がり忍者を攻めていると思っていた。敵は少量、異兵を全て一方面に固めるなどありえないと判断したからである。しかしこの帝国はその愚の骨頂を知らず知らずのうちにしてしまったのである。

 理由は運が悪い、タイミングが悪いと言う他ない。もっとも念には念を入れない国の制度に問題があるのかもしれないが。

「マクレガーさん、動ける歩兵の部隊はどれほどありますか?」

「八団、といったところでしょう」

「では二団ずつ東西南北に動かしましょう。ナッサイ、銃兵はどうでしょう?」

 ナッサイは就任したてなので当然分からない、その顔を見てダグラスは悟った。

「ニッケルさん、技術班のベルモンドさんとシルテファシスさんと連絡が取れるとよいのですが」

 そこからのダグラスの動きは、かつてのゴラプスを思わせるほど迅速で効率的であったという。

 そうは言っても、ダグラスは自分すら含めた帝国のミスを許せるほどおおらかな人間ではない。

 悔やむ。ひたと悔やむが、今だけはそれを表にしなかった。


 アグジスと出会った後、北に向かった忍者梔子のハナゾノは、帝都を迂回し東の軍に合流しようとしていた。

 連絡係のヒマワリと合流できない以上、純忍ほどの統率力を持った人の下で働かないと安心できない、そのため純忍がいない中央を避けて北から東に向かおうとした。

 だが、北でエクシェルの様子を見て、恐れ、帰りたくなった。

 エクシェルという人間は慈悲深く、公明正大で博愛主義者、何より自分の信念を決して曲げない。合理的で時に冷たく人間関係を公私混同することもない。

 なので今、戦乱においてどうせ生き返らせることができるから、として味方を見捨て敵を無残に殺している。

 敵も弱くはない、弱くはないがただでさえ汎用性の高いオーラの能力は、回復と攻撃まで兼ね備えているため無敵と言って差し支えない。

 エクシェルの様子をちらちら見た後、ハナゾノは怖気づいてアグジスの元へ戻った。





 アグジスは村の一つを解放していた。西の黄も北の黒も純忍がおらず、現地にいる数人のアナザーと帝国兵が防御している間に、強力な指導者たる彼がいれば、人員すら予定通りにならない忍者を倒すことは容易であった。

 一対一で戦ったのは山吹色のくのいちコウシただ一人、あとは戦いとも呼べぬものばかり。

 そして、ハナゾノはアグジスと再開した。

「お前は、えっと誰だ?」

「ニンニン、ハナゾノです、今日からこの国でお世話になるでござる」

「は?」

 あっという間に彼女は寝返った。


 指導者がいる上、碌な抵抗もできなかった東はクレムルーム陥落すら危惧される。して残り、南はどうなっているか。

 一大拠点たるものは大港湾都市スルート、侵略するのは赤忍者軍、純忍は赤のホムラを含む赤忍者十五名。

『目からビームが出る』赤錆のガンリキ、『髪の毛を鉄の硬度にできる』茜のくの一テッカ。

『自らが発する光を浴びた者を盲目にする』暗紅(あんこう)のチョウチン、『遠心力を操る』曙のジン。

『自分の体を増やす』苺のくの一ハナ、『空を翔る』東雲(しののめ)のハネ、『爪を伸ばせる』真紅のツメ。

『異性を発情させる』桃のくの一ハニ、『自由自在に変身できる』退紅(たいこう)のカワリミ。

『右半身を一部を肥大させる』(たん)のフタ、『左半身を一部を肥大させる』()のソウ。

『毛穴からビームを出す』錆のリキコウ。

『至近距離で爆発を起こせる』緋のカヤク。

 それはそれは多くの忍者がいた。みなニンニンに始まりござるに終わり、アークスに捕らえられたり殺されたり、赤のホムラと朱のネッサの二人が最後の都市に残る。

 侵略した街に忍者を残すたび、更なる侵略は更なる少人数で行われる、ネッサとホムラは、よりによってわずか二人で大港湾都市スルートを落とそうとしていた。

 二人で隅々を回るにはあまりに広く、かつ兵士の詰め所があればアナザーもいる。

 そんなところをどうやって二人で、わずか数時間も経たぬうちに侵略するのか。

 それを記すことはない。


「……ウミワタリ……ワナゾラ……ニンニン」

 合流の遅い二人を探した青忍者達、レップウとウミは二人の死体を見つけた。

「どうしてこのようなことになったでござるか?」

 ワナゾラの死体は顔から尻まで貫かれており、ウミワタリに至っては地面に激突死している。いったいどのような能力ならこのようなことができるのか。

 ウミの考えでは、ワナゾラがウミワタリを謀殺した後、ワナゾラが敵に殺されたと考えていた。

 なぜなら、このビッグシノビエンパイアはプライムユニオン結成の煽りを受けて誕生した新生国家、色でわけられたグループはもともと別の里出身の者も仲が浅い。

 また、不意打ちに長けたワナゾラと防御に長けたウミワタリが、敵に攻撃した痕跡が全くないこともある。

 ウミワタリの能力は水さえあればあらゆる攻撃を受け流すことができる、それをしなかったとしたら仲間だと思っていたものに不意討ちを受けたと考えるのが合理的。

 ワナゾラの能力『空中の一箇所を指定し、好きなタイミングでそこに瞬間移動できる』能力を使えば、防御用の水を得る前のウミワタリを地面に激突させることが容易である。

 現場には一本のナイフと二つの死体、これだけでは敵の能力などわからない。だが一本のナイフを持ってウミワタリとワナゾラを倒すなどどんな能力でも格闘術でも不可能に思える。のでこう考えるのが論理的であった。

 勘違いだが、部下の不義をウミは嘆いた。

 それでも彼にはまだしなければならないことがある。

「レップウ、カイと連携をとり謎の敵を探すでござる。発見したら自分達で倒そうとせず、拙者に伝えられよ」

「ウミワタリ殿、それでは拙者の気がすまないでござる」

 レップウはワナゾラと同じ里の者だった。もしワナゾラが仲間を裏切ったと思われていては不満だ。

「これは命令でござる! 拙者は別行動をとるでござる。ではニンニン!」

 言うや否やウミは去った。



 レーナとエメラウネの死体を確認した二人は、南の方へ歩いた。

 フローレンとジッカの様子を確認するためだが、最悪の結果となった。

「み、みんな死んじゃってるじゃないですか……」

「まあ敵も厄介な能力者ばかりだったからな、俺も、お前の助言がなかったらどうなっていたか……」

 無理やりムードを上げようとアンリアルは言葉を選ぶ、それは自らの情欲のまま行動。

 死体を見て悲しむエヅも、結局は自分の生存本能に従っているだけ。

 要するに二人とも仲間の死を悼むことなく自分のことばかり考えていた。

「アンリアル、絶対離れないでね、絶対離れないでね!」

「ああ任せろ、うははははは!!」

 帝都まで町はあと三つ、彼女たちの道のりは遠い。


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