新元帥と新体制
帝国会議室にて、主導を取るのはダグラスだった。
「それでは皆さん、意見を集める前に、自己紹介でもしましょうか」
相変わらず仰々しい豪奢な黒い鎧に身を固めながら、彼は物腰柔らかに言う。
並ぶ将兵の中、前から皆を見渡すのが司会を務めるダグラスで、その前で五人だけ並んでいるのが新しい元帥達だ。
「では、歩元帥から」
「マクレガー・ゴドウィンだ。ゴードさんには憧れていたが、まあ死んでしまっては仕方がない」
黒い髪で短髪のマクレガーは、ゴード以上に鍛え上げた筋肉を持ちながらも平常時に落ち着き戦闘時に血気盛んになるところはどこかダグラスに似ている。ただダグラスと違い戦略的慧眼を持っていないため凡将であるといわざるを得ない。また、若々しく見えるも名誉ある歩元帥であるため見た目ほど若くはない。
マクレガーが座ると、隣で次に自己紹介する者が先んじて言う。
「ダグラス殿! この非常時に何を呑気に自己紹介など……!」
弓元帥シューペルドは赤い髪とこれまた隆々の筋肉を持つ壮年の男性で、ケイネとは対照的な存在である。
弓元帥もワンベル体制以前の旧派、彼のような保守的高位貴族が就くのは当然で、むしろ実力の高い彼のような人物がついただけまだマシである。
「シューペルドさん、正直な話、敵は少数ですから、異兵同士でぶつけた方が迅速で、安上がりで、効率が良いんですよ」
シューペルドは少し言葉を失ったが、それは呆れと怒りのためである。
ゴードも言うだろう、こうしている間にも帝国の臣民達はその罪無き命を無残にも敵に刈り取られている、それを我々が指をくわえて見、下賎なアナザーに任せるとは何事か、と。
しかしそれをするのが新たに騎元帥と大元帥を兼任したダグラスなので反論のしようもない。
「シューペルド・マッハだ」
一言だけ言って、シューペルドは席に着いた。
「あ、それじゃ次は私が。騎元帥のダグラスです、よろしくお願いしますね」
誰も反応はしない。
赤い髪に赤いめがねをつけた女性の砲元帥ネジーナと極々普通な茶髪の青年である銃元帥ナッサイの説明はここで端的に済ませることにする。
彼らは共に後任のいない特殊で貴重な役職を、自らがより高い権力を求めるために手を上げた下級貴族なのだ。
共に知識はなく、個人の武勇もなく力もない。
やる気はあります、と言うだけの野心家程度の存在である。
その二人の自己紹介がすむと、一番の謎である工元帥が残った。
元々はゴラプスが大元帥と工元帥を兼任しており、今回引退するにあたり後任は誰がいいか、という話になりゴラプスが強く勧めたのがこのネクロワリーナである。
紫色の髪は天然のパーマがかかっており、見た目は幼い少女のようであるが年は二十を超えているらしい。
経歴実績一切が謎に包まれており、ゴラプスの意見とアークスのいい加減さがなければ決してこの地位にはつかなかったであろう人物。
「ネクロワリーナさん、自己紹介」
「ネクロワリーナです」
人当たりの良いダグラスも、ただ一言の自己紹介に次の言葉が出なかった。
この元帥達の様相はただ一言だけで済ませることはできない。
陰謀と欲にまみれた彼らが上手くやっていくことができるのか、それはダグラス次第ともいえた。
「それじゃ、作戦会議を始めましょうか」
西ではアグジス、北ではエクシェル、南にアークス、中央をそこいらの兵が抑え、東にはクレムルーム組がいた。
それぞれお個人々々の防衛になっているが、忍者自体人数が少なかったので今のところなんとかなっている。
して東。
『レーナとエメラウネは北を、ジッカとフローレンは南をお願いします、私達はその中心よりわずか後方を漸次前進しますので、二等辺三角の形になります』
そんな話をして、かれこれ数分経つ。
そこでばったりとアンリアルとエヅが出会ってしまったのが青い忍者達である。




