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花の都

ユウビナ

作者: ナガツキ

ここは、王都ザグダ。花の都として知られ、都の至る所にみたこともないような花が1年中咲き乱れている。これはその都のなかの、小さな小さなお話しーーー



「いってきます‼」


最近、やけに妹の機嫌がいい。まぁ理由は知っているが。

「ユウ、今日は気温が高いからちょっとこの肥料まぜときな」

「ありがと、お姉ちゃん‼」

「あと帽子も‥‥ってやれやれ」

肥料を受け取るや否や、妹は世話をしている花壇がある大広場へと走りだしていた。

「まったくあの子ったら、よっぽど1人で花の世話をやってみたかったのね」

母がユウの背中をみつめながらそっとつぶやく。

「そうね、はやく会いたいのかね。‥花壇の花に」

それと…好きな人に。

「ナビったら、からかわないの」

母はくすくす笑いながら玄関へと入っていった。


「お届け物ですっ」

ふいに声がかけられる。

「あっ、郵便屋さん」

「おはよう、ナビちゃん♬」

郵便屋さんはにっこりと笑ってユウが行った方向を指差す。

「さっきね、そこでユウちゃんとすれ違ったんだっ 嬉しそうな顔して急いでたよ♬」

「……心配いらないと思いますが、若者の恋は邪魔しないでくださいね」

「もっちろん♬僕はただの郵便屋さんだからねっ」

笑顔でよく言う台詞を口にした郵便屋さんに私はそうでしたね、と相づちを打つ。

ーーこの都には郵便屋さんが1人、つまりこの人しかいない。

大広場に大きなポストが1つ、都の中心にある池のような堀に囲まれている王城へと繋がる橋に1つ、ポストがある。そして、東住宅街のはじにある郵便屋さんの家に小さなポストが1つある。

郵便屋さんの本名は誰も知らない。そもそも郵便屋さんであること以外なんの情報もない。わかることといえば陽気で人と距離を作らないのがうまいことと、めちゃくちゃ物知りなことだ。この都のことならなんでも知っている。文字通り、なんでも。

「……ん?」

手帳を開いてチェックをいれている郵便屋さんにちょいと質問。

「なんか最近旅人とか多いですね‥なんかありましたっけ?」

「あれ?ど忘れしちゃった⁇今日は待ちに待ったユウビコウの日だよ♬」

いやーっ今日は晴れて良かったねーっと郵便屋さんの声が遠くで聞こえた気がした。


そうだ。

今日は…


「去年は雨だったからねー‥今年はばっちりみれるといいね‼‥っと、長話しちゃったね。んじゃ、お荷物確かにお届けしました。今日もたくさんの幸せがナビちゃんに届きますようにっ♬」



母宛てだった荷物を渡し、自分の部屋へと戻る。

「なんで忘れてたんだろうなぁ‥」

窓を全開に開けて空を見上げた。

「眩しっ‥‥」

そこには雲一つない青空が広がっている。

「ユウビコウの日、今日だって…。今年はきっと‥綺麗な夕日みられるよね」

目を閉じてすぅっと息を吸った。

「……アトラ」



ーー「俺がはやく一人前になって、ナビが自分の目標越えられたらさ。そんときはお前のこと迎えにいくよ。そしたらさ、一緒に旅に出ような‼いろんなとこいって‥‥そうだ!まだ見つかってない花見つけて一緒に名前つけよう!‥‥‥え⁇いつって…そりゃあ‥‥まぁ‥‥あぁあれだ‼目標越えた目印を決めよう‼‥目印はそうだなぁ。あっあれでいいじゃんっナビの好きな‥‥‥



「ナビ‼‼」

母の大きな声で我に返る。

「窓全開にしてなにやってんの⁉虫が入っちゃうから閉めなさいよ‼」

むっ、

「勝手に部屋入んないでよ」

「勝手にって、ノックしたわよ‼あっそうそう、今晩の料理はユウビコウの日にちなんでオレンジ料理作るからオレンジ買ってきてちょうだい」

「はいはい。どんくらい必要?」

「んーっそうねぇ。とりあえず20個くらいかなぁ?足りなかったら今度はユウに頼むから!はい、オレンジ代」

やれやれ、用事ができたか。

母から受け取ったお金を袋にしまい、全開にしていた窓を閉める。

そんじゃ、いってきますかね。



太陽の光が眩しい。あー、肌が焼ける。

地味に遠い商店街は絶対に夏のダルさを高めている、と思う。

暑さに顔をしかめつつ額に浮かぶ汗を手で拭う。

と、張り付く服の間を涼しい風が通った。

ーなんで思い出しちゃったんだろうなぁ

もう4年も前のことなのに。

くるわけなんてないのに‥

アトラはもうーー‥


「よう、」

低い声と軽いチョップ。間違いない、奴だ。

「相変わらず眠そうねっ」

声がした方へと肘を突き刺す。

ふっ 入った。

「いってぇ」

「いってぇじゃないでしょ。ったく、寝癖ついてる」

私はそこではじめていつものように寝癖のある黒髪の幼馴染の方へと振り返った。

「なにしてんの」

「買い物行くの。なに?あんたもいく⁇」

ロネルはここぞとばかりに面倒くさそうな顔をして

「いかん」

興味なさそうにつぶやいた。

「まぁオレンジ買うだけだから荷物持ちは必要ないけどね」

「オレンジ‥‥?あぁ、そうゆうこと」

こいつはいつもこんなんだけど約束とか記念日とか大事なことは絶対忘れない。

「お土産なら安いのでいいから」

「商店街いくだけだっつの。じゃ、」

「んー、」

ロネルの右手がコツンと頭にあたる。

「一応、気をつけて」

商店街いくだけだってのに‥

ひらひらとロネルに手を降り私は住宅街をあとにした。



ロネルと私は小さい頃からずっと一緒だった。大広場の花壇のほかに家でも色々な種類の花を育てている私の家と、薬草などを使って薬をつくっているロネルの家は親交が深いため家族ぐるみで仲が良い。ユウにとってはロネルは兄同然。1つ年上の私にとっては弟のような存在だった。親が忙しいときはどちらかの家でのんびりと過ごしていた。いまはだいぶぶっきらぼうになったロネルは毎日姉妹喧嘩に巻き込まれて面倒に遭いながらも、帰る時間になると明日ね、と言わないと離してくれないほどの甘えん坊だった。いま振り返っても本当に楽しかった、代わり映えのない平和な毎日。


ーーそんな毎日のなかで私は一生忘れられない出会いをした。


「おじょーさんっ」

ユウと大喧嘩をして家を飛び出し、大広場の花壇の前で座り込んでいた私に声をかけてきたその人こそ、私の初恋の人ーーアトラだった。


睨みつけるように振り返った私の前につきだられた両手。

「はぁいっ種も仕掛けもありません」

そういうとその少年は両手を強く握りもう一度ぱっと手を開いた。すると、

「なんもないじゃん」

「あっあれ⁉……うぉっっと⁉」

とっさに指さされた方を向く。と、

「はぁいっ摩訶不思議‼なにもなかった手の中にアメがー‼」

得意そうに手の上にあるアメを私につきだしてきた。

「なっによ‥‥それ」

「えっ⁉もっもしかして‥怒ってる⁇」

震える肩に手を置き、うつむき気味の私を覗き込む少年。‥駄目だ。我慢できないーー

「種も仕掛けもありありじゃない‼もっおっお腹痛いわっ」

ここぞとばかりに大きな口を開けて笑った。

「そっそんなこと」

「最初なんて、アハハっしっ失敗してたし‥‥って、なっなによ」

急にニヤニヤとし始めた少年の視線が気になって笑うのをやめる。するとなぜか

「痛っ⁉」

でこぴんされた。

「ちょっと⁉なにす‥‥」

「なんだ‼お前笑えんじゃん‼‼」

は?急に何言ってーー

「たまにここの花壇にお母さんと一緒に水やりにきてんだろ?いーっつもムスッて顔しててさ、もしかして花とかあんま好きじゃないのかなーって思ったんだけど、水やった後はちょっとだけ笑ってるからさ。あぁ、この子ちゃんと花が好きなんだなって思ったんだけど‥なんだ、そんな豪快に笑えんだったらいつも笑ってろよな‼」

「ごっ豪快にって…」

やば、おもいっきり笑いすぎた。かっと顔が熱くなる。

「あんたには関係ない」

「まーたその顔かよ。笑ったら可愛いんだから。それと、あんたじゃなくて俺の名前はアトラ」

「かっ可愛いって‥変なこと言わないでよ‼」

「変じゃねぇよ‼こっちは真面目になぁっ」

「ナビっ‼」

「っーーロネル‼」

家をでた私を探しにきたロネルが大広場の入り口から私を呼んだ。

「おぉ、お迎えか?ナビっつーんだな、お前」

腰をあげて手を差し出すアトラ。じわじわと胸からなにかがこみ上げてきた。恐る恐る右手をアトラの手と重ねる。

やば。震えてないかな。手汗とか大丈夫だよね。

立ち上がったあと、少し近い距離に緊張しながらも小さな声でお礼を言ってやった。そのあと当たり前のように手を放しじゃあね、と笑顔で手を降ってきた。

また会えるよね?なんて聞けない。ありがとうもまともに言えない。

でも、

「またねっアトラ‼」

次に繋がる約束が欲しくて、私は振り返って叫んだ。彼に届けと。

アトラはーー笑顔でまたなともう一度手を降った。



「いらっしゃいませ‼今日はユウビコウの日特別価格だよ‼」

商店街は相変わらず活気に満ち溢れていて、なんだかいるだけで疲れてしまうようだ。

「あっリラちゃん‼」

目的の店につくなり、ユウと同い年の3つ年下であるリラが明るい笑顔で迎えてくれた。

「ナビさんじゃないですか⁉うちの店のもの買いにきてくれたんですか⁇」

相変わらずの人懐っこそうな笑顔。この店の売り上げの7割が、この子の笑顔につられて立ち寄った人たちだということは自覚なしだな。

「母さんに頼まれてね。オレンジ20個くださいなっ」

「毎度ありっ♬」

お金をうけとるとリラはいったん店の奥に消え、またすぐに戻ってきた。

「オレンジは朝採ってきたんで新鮮ですよぉ‼あれ?果物は関係ないかな⁇」

手際よくオレンジを詰めて私に袋を渡す。

「1個多めに入れちゃったんで、サービスしますね♬」

「ありがと♬‥‥今日はレラちゃんは?」

リラには体が弱い双子の妹がいる。

「レラはまだちょっと体調が‥‥でも大分良くなったみたいで、今日の夕日は一緒にみにいけるみたいです!」

「そっか!じゃあお大事にっていっといてね」

おまけしてもらったオレンジを袋からだしてリラへと手渡す。

「あっでもこれ、」

「あたしとリラのおごり」

少し迷っていたリラはすぐ笑顔になり

「ありがとう、ナビさん!またね‼」

オレンジを持った手でぶんぶんと手を降ってくれた。



「ただいまぁっ」

地味に重たいオレンジをはやく置くべく、台所へと急ぐ。

「あら、おかえり ナビ」

「重かったー」

どさっとオレンジを置いて足速に退散。料理手伝ってなんて言われたら今日の時間全部奪われちゃうじゃん。って、

「ユウ」

私、といっても姉妹共通の部屋に先客がいた。

「今日は早かったね。いつも夕方まで帰ってこないのに。‥‥なんかあったの?」

「お姉ちゃん‥」

俯いていたユウが私の声で顔を上げた。笑顔で飛び出していったユウの顔はーー涙でぐちゃぐちゃになっている。


どくんーーと心臓の音が聞こえた気がする。

知ってる。知ってる。この光景‥


わっと泣きながらユウは私に飛びついてきた。

「おっおねぃだんっ‥わっわだじ、どっっどうじよう」

ユウが泣いてる。そうだ。いまは私が動揺してる場合じゃない。

喉元まででかかったなにかを飲み込み、ユウの顔を覗き込むようにして顔をみる。

「ほーら、ユウ。落ち着いて話さなきゃわかんないから」

わんわんと泣くユウの背中を一定のリズムでたたいてやる。数十分後、大分落ち着いてきたのかユウはゆっくりと深呼吸して話し始めた。

やっぱり‥

嫌だ。なんで今日はこんなにも思い出すことが多いんだろうな‥。

その内容は、あの日と少し似ていた。



「‥‥アトラ、なに?話って」

急に家に訪ねてきたアトラになにもいわれずに散歩へと連れ出され、しばらくお互い黙って歩いていた。いつもと違う表情。なにかを決心した瞳。私は焦る気持ちを抑え、平静を装って少し前の背中に声をかける。するとアトラはゆっくりと振り返って、近くの草むらにでも腰を降ろそうかと提案してきた。

また訪れる沈黙。アトラの息づかいが少し聞こえてくるのがこんな場面にかかわらず少し緊張する。

いまどんな表情をしてるんだろう?

ふとそう思い、隣のアトラへと視線を向ける。するとアトラはいつからみていたのか、優しい表情を浮かべ私の瞳をすっと捉えた。交わる視線。目が‥離せない。

そしてそれが合図だったかのように、アトラはゆっくりと口を開き始めた。

「長旅にでるのが決まった」

必ず帰ると笑顔で手を降るアトラを私も笑顔で見送った。こぼれそうな涙をこらえながら。ーーそれから1ヶ月ほどたったある日。アトラが亡くなったんだと私は人づてに聞いた。アトラは‥旅から帰ってこなかった。


目頭が熱くなる。そうだ。あの時の私といまのユウが似ているんだ。

あれから私はずっと考えていた。いかないでとひきとめれば良かったのか、嫌だと泣きわめいて困らせればアトラは旅にいかなかったんじゃないかと‥。そうすればいまもあの笑顔で私の隣にいてくれたんじゃないかと‥


「ユウ」

震える声を絞り出し、腕のなかのユウとしっかり目を合わせる。

「ユウはどうしたいの?」

ユウと4年前の私に問いかける。どうしたかったんだ、と。

「引きとめてもいいんだよ」

そうだ。そうしたらいつまでもいるんだ。いまでも笑っていられるんだ。

でもーーー、

そう言った瞬間、揺れていたユウの瞳がしっかりと私を見つめる。そこには強い意思が感じられる。

4年前の風が吹いた気がした。そうだ。あの時‥私へ旅に出ると告げたアトラの瞳もこんな瞳をしていた。そしてーーー多分私もこんな瞳をしていた。

「笑顔で見送る。アドネが無事に旅を終えられるように、笑顔で‥笑顔で見送りたい」

ふっと肩の力が抜ける。

「よく言った。よく言ったよ‥ユウ」

わかっていた。わかっていたんだ。旅に出ると決めたアトラの瞳をみたとき、引きとめても無駄だと。そして、笑顔で見送ってほしいと私に言っているんだと。

旅に出る。知らない道へと進んで行く。不安でないはずがない。だからーー見送るんだ。笑顔で、また必ず帰ってきてと。無事に目的を遂げられるようにと。

「なにを4年間ずっとくよくよしてたんだろうね」

溜まっていたものを吐き出すようにつぶやいた。

「お姉ちゃん、なんか言った?」

「なんにも‼ほら、このあとも約束してるんでしょ。あーあー、目腫れちゃってるよ。はやく冷やさないと」

「えっ本当に⁉」

こんな顔のままじゃいけないよ、と言い残してユウはタオルを持って部屋からでていった。



「しっかり見送ってやんな。最高の笑顔でねっ‼」

ユウの背中を見送りながら叫んでやる。間違ってなんかないよ、と4年前の自分へ届けるように。

「はぁ‥もうすぐ日が沈む頃かな」

空がオレンジ色へと変わっていく。


「みろよ‼でぇっかいオレンジ‼」


アトラの声が聞こえた気がした。

「ただの夕日じゃんか‥馬鹿」

あんなオレンジ、あるわけないじゃん。あってもきっと、でっかくて‥でかすぎて‥‥私だけじゃ食べきれないよ。あんなオレンジ。食いしん坊のアトラがいないんじゃ、何年かかってもきっと食べきれないよ‥


「でっけぇオレンジ」

ふいにかかる声。頭に何かがのせられる。

「大広場からじゃないと見えないよ‥夕日」

隣には‥知ってる。アトラじゃない。アトラはもういない。

「約束」

はっと顔をあげる。

「アイツからじゃないと意味ないかもしんねぇけど。でも、俺が託されたから。最後の最後に託されたから‥‥」

ロネルの真剣な眼差しが私をまっすぐとらえる。

そうだ。ロネルはこの4年間、ちっとも動けずにいた私と歩調を合わせて、ずっとずっと支えててくれてたんだ。責めず、忘れろとも言わず、ずっとーーー

頭にのせられた何かをロネルは私の前へとつきだす。


ーー目標越えた目印を決めよう‼‥目印はそうだなぁ。あっあれでいいじゃんっナビの好きな‥‥‥


「っ‥‥」

涙が頬を伝う。

「‥泣くなよ」

困ったように、照れたようにもう一度私の方へと花束をつきだす。

「馬鹿‥それ、ツキビナじゃない」

「えっ⁉‥‥‥うわ、まじで?」


ーーナビの好きなツキビナにしよう‼俺が一人前になって、ナビがもっと素直に笑えるようになったらさ、俺がでっかいツキビナの花束持って迎えにいくよ‼


「それはユウビナ。ツキビナとそっくりだけど、ユウビナはユウビコウの時期と同じ頃、ツキビナは秋にしか咲かないの」

「うわー‥まじかよ。知らなかった」

「どっちも薬草になるんだから覚えときなさいよ」

何かぶつぶつと言っているロネルから花束をそっと受け取る。小さな白い花をたくさんつけているユウビナの甘く爽やかな匂いが私の顔を撫でるかのように香る。お世辞でもあまり大きいとは言えない花束は、4年間の約束とロネルの優しさが束ねてあるようで、私にはとても抱えきれないほどだった。でも、しっかりと両手で抱え込む。そう、やっと。しっかりと、受けとめる。


アトラが最後まで覚えててくれた約束。いつ渡すのかロネルには伝えたのかな?そう、もう大丈夫だよ。私自然に笑えてるでしょ?ユウみたいにあんなに素直に笑えるのはまだまだだけど、目標は越えられたかな。


「ロネル」

私は改めてロネルと向かいあう。さっきまでぶつぶつと言っていたロネルは、優しい顔をして私の目を見つめ返した。

「ありがとう」

心からの笑顔で、心からの思いを込めて。

ありがとう。4年間、本当に辛かったのはロネルだったのに、私はずっと寄りかかってばっかでごめんね。誰より人の痛みに敏感なロネルに、私は自分の辛さもなすりつけてきた。でも、もう大丈夫。見送れたんだ、ちゃんと。それに気づくのにこんなに時間がかかったけど。

ーーーもう動き出せる。心から笑える。


「ナビ」

「ん?」

オレンジ色に染まるロネルの顔。あれ、ロネルってこんなにかっこよかったっけ?背も私より全然高いし‥

自然と高まる鼓動を心地よくかんじながら、私はロネルの声に耳を寄せた。

「俺がいつか迎えにいく。だから、そんときまで考えといて」

じわじわと再び涙が溢れだす。

オレンジに染まっている頬を心なしか紅くしているロネルの手に自分の手を重ねた。

「待ってる」

もう一度、今度はロネルとの約束をしっかりと交わして‥


「知ってた?ユウビナの花言葉」

「知らない」

「えっ 知らないの⁉」

「なんだよそのリアクション」

「ふーん‥」

「‥もったいぶってないで教えろ」

「んー、そのうちね♬」

「なっ、おいナビ‼」



ユウビナ

特徴

白くて小さな花をたくさんつける。葉っぱは細長く、ユウビナの花、葉、ナーキルの葉と一緒に煎じると飲み薬ができる。(普通、他の飲み物と混ぜて飲む)薬は咳止めと熱を一時的に下げる効果がある。

花言葉

真実の花、長年の約束を果たす














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