安堵そして苦悩
気がつくと、どこかの部屋にいた。
すぐ隣に見知らぬ大男がいた。
いや、よく見ると頭からちいさな突起物がでている。
(もしかして、角?いやいやそんなわけねーじゃん。角だよ角。普通ついてないっつーの)
男がこちらに気づいた。
「おお!気がついたか!いやー心配したぞ!ちょっと待ってろ、今アリサを呼んでくるからな!」
男はいっぺんにまくしたてると、こちらの返事を待つことなく出て行った。
(声でけー、嵐見たいだな。てかここどこなんだ?砂漠に来てからそれしか思ってねーな俺)
そんな事をやっているとさっきの男がやって来た。
と、その後ろに小柄な女の子がいた。
その女の子はこっちを見ると、走ってこっちに来た。
「よかったーー!私がこっちに連れてくる時に失敗しちゃったから私のせいで死んでたらどうしようかと」
「ちょ、ちょっと待って。私のせいで?どういうこと?ここはどこなんだ?」
そう聞くと、女の子は一瞬ポカンとしていたが、すぐに
「あ、ごめんね。一から説明するから一回落ち着いて、ね?」
「う、うん」
一旦落ち着いてから、話を聞く。
「えっとね、まずはこの世界の事から説明するね。
まず、ここはあなたのいた世界とは別の世界なの。パラレルワールドって奴。ここまでは分かる?」
「う、うん。何とか」
「で、こっちではあなたの世界を機械世界って呼んでるの、何で機械世界って言うかは後で説明するね。そして、こっちの世界を魔法世界って言ってるの」
その後もアリサの説明は続いた。
俺なりにまとめてみると、
ここは俺のいた世界とは違うパラレルワールド。
こっちの魔法世界では、剣と魔法が発展し、機械が廃れて行ったらしい。
機械世界では、その逆だったらしい。
そして、魔法世界では、魔法によってこの世界にはいくつものパラレルワールドがあることを発見し、そのうちの機械世界と行き来する方法を発見した。
すると一部に、機械世界の技術を使い、世界征服を目論む連中が現れた。
そのため世界が二つの陣営に分かれ、大規模な戦争が始まった。
ある時、機械世界から迷い込んだ一人の男がこちら側に加勢したときに恐るべき身体能力だったらしい。
そのことから、両陣営は、機械世界から人を連れ帰り、傭兵として雇っているという。
アリサたちは、機械世界から人を連れて来る任務を持ったチームだそうだ。
「本当はちゃんと説明してから連れて来る予定だったんだけど、向こうで魔法は使っちゃだめだからねー。油断しちゃったよ。」
「そうなんだ。ある程度は分かったけど、アリサたちは、どっちの陣営なの?」
「私たちは南の陣営だよ。総統はアレクス王国のガンダル国王。北は、ハールク王国のギンズバーグ国王。北はやることがえげつなくてね。機械世界の人を無理矢理拉致して、催眠をかけて戦争に使うんだよ」
「そんなひどいことをするのか...許せないな。ところでそっちの人は人間...だよね?」
「え?違うよ。あっ、言うの忘れてたね。
魔法世界には4つの種族がいるの。
私たちはヒューマン、そこのガイツはオーガ、あとは、羽があるエアーズにヒューマンよりも小さいドワーフがいるの。
ヒューマンは剣も魔法も両方得意で、
オーガは剣と斧やパイルバンカーなんかを使って、魔法は苦手なの。
エアーズは空中からの魔法と、得意武器は槍くらいかな。
ドワーフは戦闘には不向きで鍛治や、魔法書の作成とかが得意なの。」
(マジで人じゃないのかよ)
「で、俺はいつ機械世界に戻れるの?」
俺がそう聞くと、アリサはバツの悪そうな顔で、
「そ、それは...、ごめんなさいまだ機械世界から来た人の帰りかたがわかっていないの。
本当ならそれも説明してから来てもらってるんだけど...」
「ええ!なんだよそれ!でもアリサは機械世界にきてたじゃないか!」
「機械世界の人がその方法で帰ろうとすると、魔法がコントロール出来なくなって帰れないか、下手をすれば死んでしまうの。
本当にごめんなさい」
そんな...元の世界に帰れないなんて...
駿や理沙はどうしてるだろうか。
「他に方法はないのか?」
「あくまで噂だけど、ギンズバーグが機械世界に帰れる何かを城に隠しているっていうのは聞いたことがあるわ」
「つまり帰るためには戦争に勝てってことか。戦争協力するかどうか、一晩考えさせてきれないか?」
「うん。じゃあ私たちはこれで...」
そういってアリサ達は出て行った。
今のままじゃ元の世界には帰れない。
戦争が終わるのを待つか?
それとも戦争に参加して命をかけて戦うか?
(俺はまだ高校生だぞ。こんな決断俺にできるのか...?)