唐突の自己紹介
「君の名前は何なのかな?」
そう女は聞いてきた。端正な顔立ちに、大きな栗色の瞳が覗き込んでくる。その目はあの日見た目では無い。
『俺はいつソレを見た?』
疑問が浮かぶ。だが、次の瞬間には新たな疑問が浮かんでは消える。考えが纏まらない。以前の彼を知っているものなら驚くほどに。
「分からない。俺も覚えていないんだ。」
フムフムと女はうなずきメモ用紙にメモしている。
「おまえの名前はなんて言うんだ?」
「あれれ~、私の名前に何て興味あるの?でも、ごめんね。その質問には答えて上げられないんだなコレが~。」
そういうと、女は後ろの棚にあるメモ帳を取り出した。女の着ている服はまるで囚人服のように真っ白で何かに拘束されているみたいだった。
「何だコレ?」
「私の説明書だよ。一回読んでみて。」
そう言って女はメモ帳を手渡した。
『
私の名前はリムとします。
名前は可愛いからともう一つ生クリームが大好きなの。これを忘れてしまったのならぜひ生クリームをチューチューしてください。
以下に私の特性を書き記します。これを読んだ私はそれをよく覚えてください。
私は私で無くなります。以下の条件を書き記します。
①感情が一定の起伏を超えたとき。
②力を使った時。
私は//////
』
メモ帳の1ページ目にはそんな事が書いてあった。最後の方は滲んで見えなくなっていた。
二ページ目、参ページ目とあけるが他には何も無いようだった。
「つまりお前の名前はリムだと。」
「うん。」
リムは明るく返事した。おそらく俺よりも年は上であるのにその笑顔は幼かった。
今まで何も書いてなかったのに、最後のページには一つ書いてあった。
『私は一人森の中に生きるの?』
馬鹿げているのはお互い様らしい。