出会い
秋人は森を彷徨う。
体が割れるように痛い。生理的な嫌悪感を感じる程の痛み。これが多分きっと死ぬということなんだろうと秋人は実感する。
傷口は黒くひび割れ治る予兆をみせてくれない。壊死しているのだろう。
秋人は前を見る。木々しか見えないそれでも歩く。せめて、誰か人を見つければ助かるかも知れないと希望を抱く。
『死んで…たまるか・・・。まだ何もしてない・・・。』
出血量は大量で、実験体である秋人の体でもそう長く持たない。傷を抑え圧迫する。
それでも血は流れていく。
「もっと役に立つ力が良かったな・・・。」
呟く。死を受け入れての自嘲。
『考えるだけじゃなくて、漫画の主人公みたいな力だったら・・・。もっとマシに歩けたんだろうな。』
乾いた笑いが洩れ・・・声も洩れた。
「助けてよ。父さん。」
漏れる言葉に秋人は笑う。
何が最高の実験体だ。オチ<死>は出血多量だぞ。ざまぁみろ・・・。
最高の悪態をついてやる。ただ、もう声には出せない。
「大丈夫ですか?」
倒れた秋人に声をかける。
秋人が見上げた少女の瞳には歪な紋様。彼女が差し出した手を握り返すことはできなかったから、秋人は精一杯笑った。
思考が歪み秋人の風景が塗り換わっていく、秋人の思考だけでなく記憶すらも溶かしていく。
『やばい、限界・・・だよな・・・。』
ただ、月明かりに映える少女の姿は酷く綺麗だった。