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第七話 とんでもない一言












薫「全く香取の奴…何をやっているのだ…。

っと、これは失礼。某は村瀬薫。忠義の為に生きる平成の侍…などと言ってしまえば格好良いかもしれんが、本当は只のオタクなのかもしれんな…。


っと、駄弁って居ても仕方ない。

『白い巨像第五部』が始まるぞ」

―前回より・東京都―

「…随分とまぁ、綺麗さっぱり掃除しちまったもんだな」


巨像の咆哮による波動は、辺り一面のラナバドンや機械兵達を全滅させてくれた。

これは良いことだ。

だがしかし、それと同時に巨像は大変なものを破壊していってくれた。


以下、日本国内だけで判っている被害である。


第一に、建設中だった東京スカイツリー。

2010年3月29日で東京タワーをも超える高さとなったこの電波塔、解体目的で器用に爆破されたようにピンポイントで壊滅している。

その反面東京タワーが壊されていないというのは、正直奇妙としか言いようがない。

第二に、全国各地の日本銀行の本店・支店・国内事務所。

全国に47存在するこの組織に関する建造物群も、巨像の波動によって見事に壊滅していた。

特に上空から見ると「円」の字に見えるという理由だけで国の重要文化財に指定された本店本館に至っては、ほぼ消滅したと言っても過言ではない。

第三に、全国各地に存在する、英才教育を心がける無駄に金の掛かった小中学校。

それも、特別な金持ちしか行くことの出来ないような豪華絢爛な学校ばかりが、見るも無惨な姿にされていた。

第四に、今は亡き内閣総理大臣・鳩谷幸満を始めとする、金持ち議員達の自宅や別荘など。

いずれも資産価値は億単位であり、様々な美術品や骨董品で飾り立てられ、食料庫の中にはグルメ番組も手を出さない程に高価な特級食材がぎっしりと詰まっていた。

しかし、そんな美術品や骨董品も今はガラクタであり、食材は鳥や獣や虫の餌へと成り下がっていた。



「スカイツリー以外は作者の当て付けにしか見えねぇんだけどな…」

「きのせーやろ」

「恋歌…無理に関西弁使わなくて良いからな?そのイントネーションで方言は無茶だぞ」

「んー」

「相変わらずテンション低いね恋歌ちゃん」

「もともとー」


地上でそんな会話をのんびりと薦めている4人であったが、次の瞬間、そのムードはぶっ壊される事となる。



ズガォン!

ズガォン!

ズガガォォン!

バビヂィン!


アスファルトや岩盤を砕き、建物を潰し、轟音と巨影という臣下を連れて、それは現れた。

というよりも「戻った」という表現が正しいだろうか。



白い巨像が、人から怪物へと、再び姿を変えたのである。


第一部一話でも解説したが、再び解説すると、白い巨像とは以下のような姿形をしている。


まず全身は、汚れやくすみの無い綺麗な白い長毛で覆われている。

口元からは竜のような長い髭が2本生え、全体的な頭の形状も竜か、歯鯨のようである。

腕と胴体が異様に細く、まるで日本妖怪の「足長手長」の片割れ・手長のようである。

頭の側には、何やら紅いヒラヒラした毛か葉のような突起物が生えていて、更に羊のような灰色の角まである。

それは、主に有尾類(イモリとかそのへん)の幼生が持つ外鰓(がいさい)と呼ばれる呼吸器官に似ていた。

そんな巨像が、再びこの世に姿を現したのである。


「…どういう事だ?荒俣科長渾身の一撃でやられかけた事から学習して、あの姿になったんじゃねぇのか?」

「逆夜、お前その話を何処で?」

「いやぁ、盗聴器仕込んだカツオブシムシを遊びでクローンにくっつけといたら勝手に古藤先生ん所まで行ったらしくってさ」

「さすがクラちゃん」

「生物学者の鏡だね」

「いやいや、褒められたもんじゃ無いよ。寧ろ賞賛されるべきは俺のモデルであっ―ズガォン―て――!」


轟音と共に振り下ろされた巨像の右腕は逆夜の真横を掠め、その拳は彼の隣にいた雅子を見事に叩き潰したかのように見えた。

しかしそこは我等が楠木雅子。当然只で死ぬはずがない。


咄嗟に流体に化けた雅子は、別位置から人型で復帰する。

「いやぁ、参った参った。純情派がフラれただけでヤンデレになるとは」

「…何言ってんだお前…」

「「楠木様…」」

「あぁ、何か色々と裏がありそうだけど俺は敢えて突っ込まないよ」

「つっこまなーい」


一方、再び巨大化した巨像を目の当たりにした松葉はと言うと


「…こりゃアレか…ガイアが俺に、新技を使えってつぶやいてんのか…!」


松葉よ、お前一体何をする気だ。


―同時刻・アメリカ都市部・ホ○イト・アル○ム発動から―


「強い…途轍もなく強い…」


太陽光の灼熱、降りしきる豪雨、鋭い落雷、冷たい雪、激しい辻風…ベネットによる猛攻は、ティルダの体力を勢い良く削り取り、削ぎ落としていった。


そして、そうしている間に彼女の能力はどんどん弱まっていき、いつの間にか辺りは常温に戻っていた。


「…『変身等に代表される持続型能力の、意志に反する衰退や解除は、その持ち主の死期が近いことを表す』…か」

ベネットはぽつりと言うと、ウォーハンマーを空高く掲げ、真上に雷雲を呼び出す。

そして、彼がハンマーの柄の先端を地面に突き刺すと同時に、ティルダ目掛けて大きな雷が落ち、彼女の身体を消し炭にした。



「だらだらと語るのは好きではないのでな、まぁ許せ」


そう言って、ベネットはその場を後にした。


―同時刻・アメリカ・死肉人形祭り強制終了後―


黒い猫又へと姿を変えたFODの猛攻は凄まじいものであった。

まず、足が速すぎる。筋力増強かサイボーグ化でも施されているかの様に、彼女の脚力とそこから産まれる素早さとは、常軌を逸していた。


その為、元々重量級のタウンゼンドでは手も足も出ず、ルークによって操られる事も無く、良太郎の投擲や直美の連携も全く当たらない。

達人たる村瀬家の面々による剣術も、全力を出した彼女の動きにはついて行きようがない。


鋭い爪による素早い連携で、次々と倒れていく我等が異形連盟のメンバー達。

素早い打撃の前ではタウンゼンドの岩石も悉く砕かれ、軽快な動きに特化した細身のルークなど一溜まりも無く、無駄に生命力の強い直美でさえも致命傷を負っていた。

回避しか昭三は自らの能力『吸熱』によってFODから熱を奪い、凍死とまでは行かなくとも、動きを鈍らせる事は出来ない者かと躍起になる。

しかし、当のFODは吸熱の影響を殆ど受けていないどころか、それを悟ったのかこんな事を言い出した。


「あッれェん?何か涼しくなってね?誰かクーラーの電源入れたりした?

あ、もしかしてコレ冷凍光線とか?だったらアレだ。アタイを氷らせようなんて一生無理だね!

何たってこの毛皮、毛の一本一本が常に毎秒3万回の超高速振動で熱を作り出す上に構造自体も熱を逃がさないようになってるからさぁ、出血しない限りマイナス180度くらいまでは平気なのよねん!

まぁ、出血したら一大事だけどさ。

今のアタイを出血させられる奴なんて、この場に居ないだろ?

この動きを追えないなら、傷付けようが無いもんねぇ!」


確かに、この場で動ける者の機動力はFODの足下にも及ばない。

唯一希望が持てていたルークも、今やこの世を去ってしまった。

しぶといタウンゼンドや直美も瀕死で、良太郎や昭三も避けてばかりで攻撃に移れないで居る。


そして、同じように回避に集中していた薫は、この流れを変える術はないかと考えに考えた末。






動くのを、やめた。




「キャハハハハハハハハハハハハハハハハァァァァ!

何を立ち止まってんのさ!?

まさかアレ?やる気が無くなったっての?

それとも何?諦めちゃったとか?

(なっさ)けないねェアンタ!


まぁ良いや、死んじまいな!」


そう叫び、FODは依然微動だにしない薫の腹へと手刀を突き刺した。

そして、それを一気に引き抜こうとする。


しかし幾ら腕を引き抜こうとしても、腕がビクともしない。


「どういう事!?」

見れば薫は、自らの腹に突き刺さったFODの腕をがっしりと掴み、固定していた。


「!?…アンタ、何をやってんだ!?」

「見て判らないのか?

某が、お前の腕を、掴んでいる。

それだけの事…だろうがッ!」


その一言と共に、薫は腰の刀を抜き、


ザシュッ!


FODの頭を、見事に斬り落とした。

地面に転げ落ちる生首、鮮血を噴きながら力を失う身体。



「御爺様、迅速な凍結をお願いします。

この化け猫がこの程度で死ぬとは思えません」

「承知」


源太郎の迅速な対処により、FODの死体は熱を奪われ、凍結された。

これで恐らくは安心だろう。


眼前の脅威がひとまず去った事に、五人は安堵する。

これで暫くは安心だろう。

あとは拠点に戻ってから考えよう。


―同時刻・トレーラー内―


「…猫さんが…死んだ……」

心を読むことで事の次第を知った長閑は、悲しみから項垂れていた。

そしてまた同時に、背後に忍び寄るとんでもない気配にも気付いていた。



「……何か御用ですか?…|リージョンさん(●●●●●●●)…」


そう。長閑の背後に忍び寄っていたのは、何とあの五死頭分隊のキメラ異形にして、玄白の部下の中で最も危険な存在・リージョン。


「明地指令ェ~聞きまシタヨォん?

ニャン()様があの極悪非道冷酷無比なチート使いマックド●ルドの異形連盟達に殺られッ地舞ったんデスってェ?

お気の毒DEすナァ……」



相も変わらず巫山戯た喋りの奴だと、長閑は思った。

だがしかし、自分含め人禍幹部やその取り巻きにロクな奴が居ないのは最早常識の域だ。

コイツだってこれでも悲しんでいるのだろう。

それにこのリージョンは、態度こそ巫山戯た奴だが、どんな無茶な頼み事も難なくやってのける善良な奴だ。


「いえいえ、気にしないで下さい。

悲しむばかりじゃ、彼女にも悪いですし。


それで、御用は?」


「ットォぁ、ソウでしタそうデシたぁ。

いやァ、実を言うとDEATHネェ、古藤様カラ貴女に、伝言が在ルのデスわぁ」

「伝言?」

「ソウ、伝言デす…」


そう言ってリージョンが述べた言葉に、長閑は驚きのあまり全身から力を抜いてしまった。


「明地指令、我々ト共にィ―――」




一瞬、時間が止まった。





「…り、リージョン…さん…?

今…何と?」


「いやデスからァ、――――テ、話デスけどォ?」



「……冗談ですよね?…だとしたら全く笑えないんですが…」



長閑はその一言に一縷の望みを掛けていた。

あの学力も思考力も知識も知恵もある玄白が、まさか今になってそんな事を言い出すなど、正直考えたくなかったからだ。

しかし、リージョンはそんな彼女を嘲笑うかのように言い放つ。



「いやイヤ嫌厭揖屋熊野祖谷IYA、冗談だナンテ(とん)デモ茣蓙(ござ)ァセン!

コラァ古藤様の冷静カツ適切な判断にヨルモンデシテ!


モシ明地指令が協力して下さルンナラ、コレ程スンバラスィィィィィ事も無いンデスがネぇット!」



まぁ、反応次第では殺しても構わないと言われているんですがね。

等と適当に語り出すリージョンの話を若干聞き流しながら、長閑は自らの隠し技を使うことにした。


「(…これで、総統を守れる…人禍を救えるのなら、死だって怖くないわ…まぁ、一つ不満があるとすれば、コレを使うと能力が消えてしまうという事なのよね…)」


暫くして、リージョンは話すのをやめた。


「―――デ、結局ドースルンデス?

我々と共に来チャイマス?ソレとも私にイーティングゥ~SAREチャイ舛?」

その問いに、長閑はあっさりと答えた。

「えぇ、良いですよ。食べて下さいな。

猫さんが死んでしまった今、私がこれ以上組織に居ようとも役立たずであることは明確。

ならせめて、貴方の餌になってしまった方が気が楽というものですよ」

「ソウデスカぁ?デェェハァァ、御言葉に甘え手ェェェェェェ!」


奇声と共に大口を開いたリージョンは、腹の内で以下のような考えを展開していた。


「(やけに潔いなこのガキ…普通こうも易々と死にたがる訳がない…。

となれば絶対に何かしでかすつもりだろうが、このガキを生かしたまま敵に回すと我が陣営は圧倒的に不利な状況に追い込まれる…。

それにどうせ、こいつが何を仕組もうが所詮は私を殺す程度の事だろうよ…ならばどうなろうが構うものか…。

古藤様は天才だ。私の代理など幾らでも産めよう……ちなみに読者共に伝えておくが、喰う以外の殺しはNGだ。逆夜の様な奴が蘇生するかも知れないからな…)」



そう思いつつリージョンは、その大口で華奢な長閑を喰い殺した。

その場を立ち去る為に、腕を翼型に変形させるリージョン。





しかし異変は、丁度その時に起こった。


「ウォアァア!…ァァァァァアアアア!ッキヒォォホォォォォッ!

ェグゥァアァァッ!ォォォォォォォォッ―vvvvvvvrrrrrrrr!!」



飛び立とうとしたリージョンが、突如発作を起こしたように苦しみ出した。

彼の全身は気味悪く脈打つ。

耐え難い苦痛に苛まれのたうち回る彼のマントがボロボロになって完全に外れてしまうのに、そう時間は掛からなかった。


暫くして、リージョンを襲う発作と苦痛とが突如ピタリと止まり、彼はその場に仰向けに倒れてしまった。

そして彼の胴体中央辺りが脈打ち蠢き、凄まじいものが現れた。



それは巨大な赤い眼球。

バレーボールよりも一回り大きいような、赤い眼球。

猫の様な瞳が中央に走る、赤い眼球。

四本の触手が伸びた、赤い眼球。



それこそは即ち、リージョンが長閑の切り札の餌食になってしまったという事を表すものでもあった。


―同時刻・東京都・日異連本部内―


学生が登校日前日に起きていると翌日大変な事になりそうな時刻(大体翌日の03:45以降)になっても、ウィナグ対斑、薬師寺、曽呂野、盛の戦いは続いていた。

とはいえ、あれから薬師寺はウィナグの攻撃で重傷を負い引き下がっていたし、訓練で知っていたとはいえ銃の扱いに慣れてはいなかった盛にも、多少疲労の色が見え始めていた。


しかしながら、残る二人―曽呂野と斑は、未だウィナグと死闘を演じていた。

対象物を一瞬で切り裂く『罰点』は確かに脅威だった。

しかし、この能力は予め正確な座標を定め、その座標に罰点の中心がなるべく誤差無く(最低でも半径3cm以内)来るように切断を遂行しなければならない。

よって、持ち主を攪乱させるように動き回って座標をずらすように動き回れば、少なくとも身体を一瞬で複雑に切り裂かれてほぼ即死同然の重傷を負うという事はまず無い。

しかしながらまた、問題もあった。

ウィナグの翅と脚から産み出される動きはとても素早く、掛け持ち戦闘員の斑や、戦闘専門の曽呂野でさえその動きに対応することは困難であり、攻撃を当てるなど到底不可能であった。


「(…こうなったら…俺の能力を使うしかないか……この能力は余り使いたくないんだがな…)」


そう思いつつも、この状況を打破する為には致し方ないかと思った斑は、仕方なく自らの能力を発動した。






―ガッシャァァァァン―







ガラスの割れる様な音と共に、斑以外の全てが止まった。







そして、その世界で只一人動ける斑はウィナグに接近し、その胴体へ至近距離で銃弾を放つ。

更に曽呂野の手に握られた剣を抜き取った斑は、それをウィナグの右肩へと振り下ろす。


しかしどちらも少ししか動かず、空中で止まったままである。



「…そろそろ時間切れか」


そう言って、斑は元居た位置に戻る。

そして、2秒後。




再びガラスの割れるような音がして、止まっていた全て(・・・・・・・・)運動を再開した(・・・・・・・)



「えぁ?」

バシュコ!

バシュコ!

バシュコ!

「がふゅ!」

ヒュン、ズバシュァッ!

「ぉぉあぁあああ!」


運動を再開した事により、ウィナグの胴体を三発の銃弾が貫き、更にその右肩から斜め23.4度傾いて曽呂野の剣が斬り込んでしまった為に、結果として外骨格と内骨格とを、その中の臓腑諸共大々的に切り裂かれてしまった。

真っ二つになったウィナグは床一面に散らばるが、しかしそこは異形の節足動物。

カマキリが上半身を失っても交尾を続けるように、彼女は未だ活発なようだった。


「逆夜曰く、リオックは『最強のソフト・インセクト』とも呼ばれるそうだが、まさにソフトだったな」

そう言って斑は、拳銃に残っていた銃弾三発をウィナグの胸に撃ち込み、落ちていた曽呂野の剣で器用にウィナグの頭部を切り取って一言。


「こいつは良い。後で逆夜に頼んで標本にして貰おう」


そう言って斑は拾い上げた剣を曽呂野に返すと、通路の奥へ立ち去っていった。

そんな兄の姿を見て、既に上着が汗でぐっしょりな盛は呟く。

「お兄ちゃん…あんなキャラだっけ?」


―同時刻・海上―


「中々の時間を与えてくれたことに感謝するぞ、クローネンバーグ」

激闘の末桜花を殺し、その身を腹に収め、自らも最終決戦へと臨もうと覚悟を決めていた。


と、その時。


ズジュッ


「っぐぁ!」


突如、彼の腹に鋭く尖った水晶に似た物体が突き刺さった。

更に驚くべき事には、水晶の突き刺さった部分から何かが流れ込んでいるのか、彼の身体が徐々に結晶化している。

読者からすれば前代未聞の技だが、ジョーンズはこの技に見覚えがあった。

しかしその技の持ち主は既に死んでいる(・・・・・・・)筈で、仮に生きていたとしても、ジョーンズを攻撃する事など|考えられる筈がなかった(・・・・・・・・・・・)。


「……何故だ…?

何故私は……天野の技(・・・・)で攻撃されている?」


ジョーンズが悩んでいる間にも、身体の結晶化は止まらない。

そして遂に、彼の両足が完全に結晶化した時、上半身の自重に耐えられなくなった彼の肉体は悉く崩れ落ち、脆い結晶の塊となったそれらは、虚しいまでにあっさりと砕け散った。


唯一結晶化を免れた左目は素早く蟹へと姿を変え、甲板から海へと逃げ出した。


そして、命在る者の居なくなった甲板上に、ある者が舞い降りた。


「悪ィなおっさん。だがもう決めちまった事だからよ…。

怨むななんて贅沢言えた義理じゃねぇけど、せめてその身体で幸せになってくれよな…。

まぁ、おっさんなら何だって出来るさ…多分な」


悲しげにそう言うのは、何と五部で自ら命を絶った筈の幹部第六位・天野翔。

彼女は死亡直後、玄白操る小型ロボットによってその肉片と記憶とを回収され(詳しい手法や原理について解説していると長くなるので省略)クローンとして、また改造生物(ミュータント)としてその肉体他諸々をリフォーマットされて蘇り、彼の協力者として暗躍する事となったのであった。



時を同じくして、各国から選び抜かれた「優秀な人物」や「生き残るべき人物」―通称「必須人類」が、本来収容されているべき空母内の牢獄から一人残らず逃げ出していた。

次回予告

薫「さて、次回はっと………な、何ィィィィッ!?そ、そんな事が……おっと、いかんいかん。危うくネタバレになるところだった…。


次回『まさかの○●戦!?』本当に"!?"だぞこれは…」

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