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第六話 巨像の真意










直美「よんよ~ん。エロ担当の酒乱虎こと香取直美よ~ん。

今回はツイッターで作者がフォローしてるあるユーザーの口調を真似してみたのよ~ん。

心が広いのは良いことよ~ん。

とりあえず『白い巨像第五部』始まるのよ~ん。絶対読むのよ~ん。








…我ながらウザいわね…やっぱやめようかしら」

―此処は…何処?

―意識空間?



―…違う。私の意識空間はこんなに真っ白じゃない…。

―でもだとしたら……此処、何処よ?





異形・楠木雅子は現在、辺り一面真っ白なだけの空間にいた。


真っ白なだけの、何とも言えない感触の空間に寝転がっていた。


起き上がってみる。


吹き飛ばされて地面に打ち付けられた筈なのに、その事実が嘘のように痛みが全くない。



「…どういうことなの?」



訳が判らない雅子は、立ち尽くしたまま暫く動かない事にした。

自分は現代日本人なのだから、現代日本人らしく、ひとまずその場の空気に任せてみようと思ったのである。


そして、暫し経過の後。

雅子は何処からか、自分を呼ぶ声の様な音波を感じ取った。

耳を変化させて音をより精密に聞いてみると、それは確かに自分を呼ぶ少年の声であった。

指名されていないが、どうも自分を呼んでいるとしか思えない。

というか、声がしたらとりあえず行かねばなるまい。


そして、声のする方へ歩いていった雅子が出会ったのは、全体的に色素が薄い、細身の少年。

そこそこに長い彼の頭髪は勿論白く、肌や瞳も色白を通り越して限りなく白に近い色合いであった。

少年は言った。

「お姉ちゃん、来てくれたんだね、有り難う」

そう言う少年に、雅子は恐る恐る問う。

「…貴方は、誰?何で私を呼んだの?それに、此処は何処?」

「此処は、何処か、あんまり、知らない。

呼んだ理由は、家族、だから。

お姉ちゃん、家族、僕の。

僕、家族、お姉ちゃんの。

だから、僕、お姉ちゃん、呼んだ」

「…か…家族?」


雅子は少年の発言に驚くばかりであった。

自分は元々後天性の異形であり、家は岡山で小さな電気屋と農家をやっていた。

祖父は傲慢で善意もない恐れ知らずの天才肌だったが、その反面寛大で博識で優しさや善意もある人物だ。

祖母は元教師であり末期の認知症で意味不明な妄言を繰り返す事が多いものの、その性格はまさに「究極の善人」である。

母はまさに雅子が最も尊敬している偉大な家族であり、生涯で一番感謝たいと思う人物である。色々と抜けていたりするがその実は高学歴の淑女であり、彼女の人生を今も影から支えてくれている。

大分出身の父は怠惰な肉体派で、社交性が無く学歴も低いが、その分温厚で色々な所で頼りになる心優しい男である。とはいえ、怒りで凶暴化した時の有様は災害レベルで手が付けられないのだが。

その他、今も現役で犬と猫が居た気がする。どちらも雌だ。


だがしかし、家族は勿論従兄や面識のある親戚の内に、こんな奴がいる筈がない。

それでも彼は、雅子と自分とが家族であると主張し続ける。

更には飛びついて、抱きしめてきたりもする。

「家族、一緒。離れたら、いけない。

家族、一緒。離れたら、いけない」

そう言う彼の表情は何処か楽しそうだ。

そして雅子はここに来て漸く、第三部での仲間達の台詞を思い出した。


―楠木雅子と白い巨像は、血縁関係にある―


そして雅子は瞬時に、ある結論を出した。


「(つまりこの子は、白い巨像の化身…?いや、もしかしたら白い巨像そのものかも…でも、何で?

てか、此処何処?それがまず判らないんだけど…まぁ、一つ良い事としてはこの子が可愛いって事かな…抱きつかれた挙げ句頭で思いっ切り乳繰られてるのに全く不快感無いし…こんなの手塚さん以外じゃまず有り得ないのにね)」

満更でもない雅子であったが、また同時にこうも考える。

「(この子を仲間に引き入れて人禍潰すって事も出来そうだよね。戦いが終わったらこの子は引き取れば良いし。まぁそのまえに現実戻らなきゃいけないんだけどさ。


……でもよく考えたら、物事そんなに都合良く進まないよね。

どう足掻いてもこの子が沢山殺したって事実は消えないし、会社や連盟にはこの子に怨み持ってる人多いだろうし。

その人達に向かって『済んだことなんだから許してやってくれ』とか『怨みなんて意味の無い感情はさっさと棄てるべき』なんてハゲたこと、口が裂けても股が裂けても言えないしなぁ…。

自分だって家族とか友達殺されたら、何が何でもその加害者殺しに行くだろうし。特にお母さんとか、血縁関係無くても手塚さんとか恋歌ちゃんなら特に。


でもここで容赦なく殺しちゃうのも可哀想だなぁ……なんて、手塚さんに聞かれたら『何を理系が少年誌の主人公気取って儚ェ道徳展開してんだボケ』とか言われて笑われそうだけど。



…やっぱり、きっちり話した方が良いよね。…折角会えた家族に突き放されるのは辛い事だけど、やっぱり決着は付けなきゃなぁ…)」


そう思った雅子が、巨像に話しかけようとした、その時。


「オイ、そいつァテメェの家族でも何でもねェ只の変態だ」


何処からか謎の声がした。

その声に怒りを覚えたのか、立ち上がった少年は冷たい口調で何処に居るとも判らない声の主に言い返す。


「何で!?どうして、言える、そんな事!?」


声の主も少年に言い返す。


「俺がそいつをよく知ってるからだ。じゃあ逆に聞くがよ、テメェは何でそいつを家族だと言い張る?」


「感じた。

お姉ちゃん、僕の家族、だって。

そう、感じた。

心が、言ってる。

身体が、言ってる。

お姉ちゃん、僕と同じ匂い。

お姉ちゃん、僕と同じ気配。

お姉ちゃん、僕と同じ血。

だから、お姉ちゃん、家族、僕の」


「成る程。やっぱそう来たか。確かにその考えも一利あらァな。


だがよく考えてみろ。仮にテメェが普通の人間として一人で行きてたとして、だ。

そこいらに居るような、大して関係もないようなヤツを家族だなんて思えるか?同じ匂いに同じ気配、同じ血と来てるぜ?」


「それは違う!違う違う違う!

家族、愛するから家族。

家族、信じるから家族。

家族、繋がるから家族。

家族、助け合うから家族!」


「…成る程。そう来たか。確かにな。そうだよな。只単に血が繋がってるだけじゃ家族じゃねぇよな。

そいつぁ確かに正論だ。

だが、一つ問題があるぜ?」


「問題……?」


「そうだ。テメェはそれで満足かも知れねぇがよ、そいつはどうなんだって話だろうが」


黙り込む少年。

それに便乗して、雅子も少年に静かに告げる。


「ごめんなさい…貴男には悪いんだけど、私にはもう、家族が居るの…。



…それに私が家族になったって、貴男は幸せになんかなれないよ……だから…私の事は諦めてくれる?」



少年の腕から力が抜け、その身体が次第に消えていく。

そうして、雅子の側から少年が消えた瞬間、彼女は現実の世界へと引き戻された。


―娑婆―

飛び起きた雅子。巨像は既に引き下がっており、以前上空にいる。

「!?…さ、昨期のは一体!?」

「巨像が直にコンタクト計ってきたって事だろうな」

「てッ、手塚さん!?怪我はもう大丈夫なんですか?」

「あぁ、何とかなった」

「何とかなったって…てか、何であの事を!?まさかあの声、やっぱり…」

「勿論俺だ。スキーウェアで冬場の瀬戸内海平泳ぎぐらいのノリで強制介入させて貰ったぜ」

「瀬戸内海…案外楽だったんですか?」

「まぁな…っと、調子はどうだ?戦えそうか?」

「えぇ。何故だかすこぶる調子良いです」

「そうか。だったら―――「GVOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAH!!」――な、何だこ―ぐぉぁ!」


突如響き渡る轟音。

それは、唯一無二の家族から拒絶された悲しみと怒りから来る、巨像の咆哮であった。

咆哮は音として、また力の波として、日本を、アジアを、ユーラシアを覆い尽くし、地球全体へと広がっていった。


そしてその咆哮は力の波と呼ばれるとおり、ある効果を孕んでいた。

その効果とは、言うなれば『選別』であり『殲滅』であった。



即ち、ジョーンズが桜花に伝えた予言が的中したのである。

世界はその一瞬で、瞬く間にジョーンズの化身が残した言葉通りになった。



この世が分けられたのである。

滅ぶ者と、残る者とに。

そして、世界中に放たれた滅ぶ者の代表格たる『蝗』(つまり)ラナバドン達は、悉く死に絶えた。

更に、その尾の餌食となり青い海老にされていた神の刻印を持たない者=非異形の姿も元に戻り、更には世界中に散らばっていた数多くの下級人禍機関員達が、その咆哮一つで死滅してしまった。


ラナバドンを除く人禍海軍も、

指揮官を失った人禍空軍も、

FOD(ネコ)が率いる死肉人形も、

世界中の機械兵も、



全てが皆、悉く死滅していた。


―同時刻・アメリカ―


「な、何で?

冗談キツいねェ。あぁ?本気だって?

もっとタチ悪いよ」

FODは笑いながら言う。

「はぁ~折角造った死肉人形が台無しじゃん。

もうこうなったら…」


「逃げる気か?」

タウンゼンドの一言に、FODはムキになって答える。

「失礼だね!誰が逃げたりなんてするもんか!

大体アンタ達から逃げようモンなら袋叩きにされて輸姦された挙げ句薬漬けで豚肉みたいな値段で叩き売りエンドしか無いじゃん!」

その言葉を聞いて、ルークは半ば引き気味に言う。

「いや…少なくとも僕にそういう趣味は無いんだが…」

「おま、ルーク!そこ『達』入れろよ!」

「『達』入れてよ頼むから…」

「ルーク殿…『達』をお忘れだ…」

「『達』を忘れてくれるな!」

「『達』を忘れるでないぞ若人よ…」

「…ごめん」


「っていうかスルーしないでよ!これから本気出そうって時にモチベーション下がるじゃん!」


そう言いつつ、FODの身体からは深紅のオーラが沸き上がっていた。

更にそのオーラの中から、二本の尾を持つ黒猫が現れた。彼女の化身である。

黒猫は暫くの間主の周りを跳ね回った後、その胸元へ飛び込んで吸い込まれるようにして消えた。


そして次の瞬間、彼女の身体が小刻みに脈打ち始めたかと思うと、その肌は美しい黒毛を生やした艶やかな毛皮へと変わり、側頭部の耳は黒猫の耳へと変貌し、腰か尻の辺りからは二本の細長い黒猫の尾が生え、更には顔面や腕までもが猫に染まっていく。

そうしてFODはものの十数秒程で、名前の通り猫へと姿を変えたのであった。


「さァてっとォ、ここからが本番だよ?」


―同時刻・太平洋上―


ジョーンズは、予想していながら恐れてもいた現象を垣間見ていた。


「…これが…現実か…」

ジョーンズは嘗ての臣下であった者の頭を拾い上げ、呟く。

そして、背後にある気配に感付き、言った。

「…居るのは判っているぞ、桜花・クローネンバーグ」

ジョーンズの背後20m程の位置には、あの桜花・クローネンバーグが立っていた。

「ビル・ジョーンズ…この際勝敗はどうでもいい。


…決着をつけよう」

「あぁ…良いだろう」


―同時刻・アメリカ―


「弱い者はみんな死んだ。

人禍の幹部も残り三人。

父様の企みも、そろそろかしら…」

辺り一面を氷らせたティルダは、そそくさとその場を立ち去ろうとした。

しかし、物事が全て予定通りに進むわけもない。


「待て、疑似霊長」


呼び止める声がして、ティルダは振り向く。

そこに居たのは、巨大なウォーハンマーを担いだ大柄な初老の男。

米国異形連盟最高幹部のマグナ・ベネットである。


「…私の世界で普通に歩き回れるなんて、悪魔と取引でもしたの?」

「そんな事をしなくても私の能力『天候』にかかればどんな気温でも常温のように過ごせるのだよ」

「『天候』…神のような能力ね。まぁ、どのみち本気で殺すけど…」

「やって見るがいい」


―同時刻・ヨーロッパ―


「はァァァァァッ!」

「でェェェェェッ!」

「『ぬんっ!』」


ガギギィン!


巨像咆哮により周辺の敵戦力が全滅した後も、健一と大志の戦いは終わっていなかった。

兵士全滅後狙ったかのように現れたイワタ&アイカワの異形夫婦に襲われ、結果として戦う羽目になってしまったのである。

かなり消耗し、全身傷だらけの二人はかなり不利であったが、同時に有利な点も一つ存在した。


それは、アイカワの能力『痛覚』の無力化であった。

戦いによって全身傷だらけ、その上鈍器や毒素まで使われた二人の神経組織は、既に異常なまでに狂っており、彼女の能力によって発生する痛覚が全く意味を成さなくなっていたのだ。


そして、拙戦は長く続く。

時に分離、時に結合を繰り返し相手を翻弄するイワタとアイカワ。

対する健一と大志も、お互いの能力を最大限に生かして立ち回る。



ヴゥゥゥゥゥゥゥン!


分離したイワタとアイカワは、螺旋を描きながら空高く飛び上がり結合のため一度立方体の群れへと変化する。

それを追いかけるように、大志は健一の助力を得て空高く跳び上がる。



そして夫婦蟲が結合した瞬間、大志は真上から渾身の連撃を叩き込んだ。

「スゥゥゥゥゥゥ―――――――――ッ…だぁぁああああああぁぁぁああぁぁぁぁぁりゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――AAAAAAAAッ――」

連携のシメは、相手の腹目掛けての渾身の頭突きである。


「―エッタァァァァァナァァァァァルッ!」


硬いキチン質の甲殻を砕かれ、真っ逆様に叩き落とされていく異形夫婦を待ちかまえているのは、下で大きな黒い布を広げている健一。



健一は、ダブルハンミョウが落ちてきて、布に接触する直前で瞬時に布を束ね挙げ、巾着袋のようにして盛大に振り回した。

するとどうであろうか。

黒い布袋の目から、細かくなった蟲の血肉や外皮がまるで流体であるかのように一瞬で放出された。



「マスター、カルボナーラをお願いします。細切れハンミョウ増し増しで」

さらにその後、上空で頭突きを決めた大志が真っ逆様に落ちてきて地面に突き刺さる。

慌てて駆け寄る健一だったが、地面から響く声を聞いてほっと安心する。



「焼き茄子は別の皿で頼むぜ!」


―同時刻・空母内・総統室―

不二子は叫んでいた。


「っあぁぁぁぁぁぁん!もうっ!どうすればいいって言うのよ!?

何か只でさえ少ないウチの残存戦力がもっと減るとか有り得ないでしょ!?

あ…『有り得ないなんて有り得ない』……ってこんな時に何エロゲソングの歌詞なんて思い出してるのよ私は!

何?遂に頭がイカれちゃったってこと?作者に続いて私も異常者の仲間入りって事?

まぁ元々この小説の登場人物なんて大抵オタクか奇人変人ばっかりだから、別にどうって事も無いけど、それでも何か負けた気がする乗って気のせいかしら…。

っだぁぁぁぁもう!今は博士だって多忙なのに私ってば何を落胆しているのよ?

そうよ!作品自体がもう完結に向かってるんだから、私もそろそろ本領発揮しなきゃならないのよ!

そうと決まれば早速作戦を…って、残存戦力が無いに等しいときに私が作戦なんて考えても無駄よね……良いわ、もうシンプルに行ってやるわよ!」


決意を固めた不二子・コガラシ総統。

果たして彼女の本領発揮とは、一体何なのか?

次回予告

直美「次回『とんでもない一言』。絶対読んでよ~ん…って、またやっちゃったわ…」

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