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魔女フローラとレムル-1

魔女フローラとレムル-1




一人の女性が、火山の麓の森の中を歩いている。スタイルの良い体型に、軽くウェーブの掛かった、肩ほどまである赤髪。筋の通った鼻に、青い目。白いローブを身にまとっている。

彼女の名前はフローラ。この近くに屋敷を構え、日夜、魔術の研究に明け暮れる魔女だ。

その日は、屋敷の近くを散歩してぼんやりしていたところだった。ここの所、研究が上手くいっていない。彼女は周りの景色を眺めながら、ため息を付いた。いまいち、研究に集中できないのだ。原因は分かっていた。


彼女には、悪癖があった。黒髪の美女が大好物だったのだ。

かつて彼女は、力を得るために、高潔で高飛車で高い魔力を持つ、黒髪の美魔女に近づいた。その魔女を誑かし、そそのかして、その魔力を奪った。その時に互いにドロドロになりながら、黒髪の美女の魂を貪った時の快感が、未だに忘れられないのだ。


その快感が忘れられないフローラは、再びそれを得るために、時折屋敷から出て、黒髪の美女を漁っていた。しかし、満足できない。何かが、違う。

何故なら、かつて喰らったほどの、高潔で高飛車で高い魔力を持つような美女など、そんなに居ないからだ。フローラは満たされない。こんなことなら、全部貪らずに、少しだけ残しておけばよかったと、後悔していた。


そんな感じで、彼女は悶々としていた。研究が捗らないのは、このためであった。


そんなことを考えながら散歩をしていると、どこからともなく、子供の泣き声が聞こえてきた。普段の彼女であれば絶対に無視するのだが、その日は、何となく泣き声の方に歩いて行った。

歩いて行った先に、その子供は居た。小さな幼い少女だ。泣きじゃくっている。フローラは腰に手を当てて少女を見下ろしながら、少女に聞いた。

「アンタ、どうしたの?迷子?」

少女は、泣いたまま、フローラを見上げた。フローラは少女を見つめる。栄養状態が悪いのか、やせ細っている。フローラは少しイライラしながら、少女に言う。

「泣いていたら、分からないでしょうが!どうしたのよ?親はどこに居るの?」

少女は泣きじゃくりながら、少しづつ説明をした。

説明をまとめると、余りの貧困に耐えられなかった両親が、少女を森の中に置き去りにしていった、という事らしい。昨今では、国中が内乱状態であり、こういった事はよくあった。

「ふーん」

そう言いながら、フローラは少女の顔を見つめる。これまで見てきた通り、フローラは博愛主義みたいなものからは、とても遠い女だ。いつもなら、ここでそのまま帰ってしまっても、おかしくはない。

しかし、フローラは考えていた。なぜなら少女は黒髪で、成長したら美しくなりそうな顔立ちをしていた。彼女は閃いた。


高潔で高飛車で高い魔力を持つような美女など、そんなに居ない。だったら、自分の手で作り出せばいいのだ!


フローラは、この時ほど自分を天才だと思ったことはなかった。・・・まあ、常日頃から、自分を天才だとは思っている女ではあるが。

フローラは少女に言う。

「アンタの名前はなんていうの?」

少女は、少し俯いて、自分の名前を呟く。

「・・・レムル・・・」

フローラは高飛車に言う。

「よし、分かった!レムル!アンタは私に付いてきなさい!」


フローラの新たなる計画は、こうして開始された。




・・・そして十数年が過ぎた



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