08.交渉
(威圧感がすごいわ……けれど、負けてはだめ。このゲーム内で、リアーナの攻略キャラ対象外で――最後には彼女の敵として、ラスボスになる彼こそ……私にとっては必要な味方なのだから)
そう、このレインという男は、ゲーム内でリアーナに立ちはだかる敵なのだ。
舞台となるこの国で、国王側と一線を引いており――司法の権限を持つエヴァンス家の当主。
(ゲーム内の物語が順調に進むと……私はこの人に裁かれて処刑されるのよね……)
ゲーム内では、基本的に罪人を公正に裁く裁判官のような振る舞いをしているが、実のところ国王との権力分立によって、しがらみが多く悩んでいる。
建前としては、国王が国のトップだと言われているが――その実、公爵家にも並々ならぬ権力があるのは、この国でも公然の秘密だ。
そんなしがらみの中、もともとの当主だった父を数年前になくし、若くして公爵家の当主になったのがレインだ。確か今年で、22歳になっていたはず。
そして現在は、病弱な母を支えながら公爵家の当主として君臨している。
そんな彼が、何故ラスボスになるのか――それは、国王側に睨まれていて、次第に権力の対立が激化してしまうから。
リアーナの攻略対象キャラクターはみな……国王に忠誠を誓う者ばかりだからこそ、彼と対立してしまうのだ。
現に舞踏会の出席は、権力の構造を刺激しないために、地味な装いでわざわざ出席しているのだ。
そんな彼が、私をじっと見つめながら――探るように声を出す。
「しかし不思議ですね……この魔法を見破られるとは思ってもみなかったですし――どうして国王に深く忠誠を誓うフローレンス伯爵家のあなたが近づいてきたのかも……疑問が残ります」
「……」
「ここには僕とあなたしかおりませんので……なんでも言えますし、逆に……」
レインはニコッと、感情の見えない笑みを浮かべて。
「不審な動きをしたら――分かりますよね?」
「……っ!」
明確な脅しをしてきた。ここの国で、王族の次に偉い公爵家であるがゆえに――相手の悪意に対して、容赦がないのだろう。
ここで意思がくじけてしまったら、もう彼とは一生会えないだろう。
もしくは、ここで私の命運はジ・エンドだ。
私の運命はずーっとリアーナに振り回され続け――死ぬ運命になる。
(だから、私は――)
前世では浴びたことのなかったプレッシャーに挫けないように、顔を頑張って彼のほうへ向けながら、私は口を開いた。
「公爵様……私は、あなたと交渉がしたくて、ここにやってきたのです」
「交渉?」
「はい。私は――公爵様に貢献できる力があると思っているのです」
「ふむ?」
「だから、私を公爵家の庇護下に置いていただけないでしょうか?」
「庇護下ってそれは……」
レインが疑うように言葉を口にするのと同時に、私は両手を開いて自分の胸元に持っていく。
そんな私の様子に、レインは視線を向けていた。
(魔法の使い方はもう十二分にわかった。だから、あの使い方を思い出すように……)
氷と炎を手のひらに出すイメージで、集中をする。すると――。
「へぇ……あなたは、二つの属性の魔法が使えるんですね? 僕の母と――同じ属性だ」
彼の目の前で私は自分の手のひらの上に、炎と氷を浮かべてみせた。
レインは私の魔法を見て、何かを思案するように顎に手を置いて考えているようだった。
二つの属性の魔法が使える魔力こそ、レインと話ができる材料だと私は思ったのだ。
もちろん、魔法の力でレインを守るボディガードになりたいとか――そういう意味ではない。
(ラスボスのレインが持つ――悲運な過去を私は攻略本で知っている)
というのも――先ほど彼が言った通り、レインの母親も二つの属性の魔法を操る。
しかし病弱な彼女の身体には、過ぎた力だったがゆえに、その魔法の力の源……魔力がまるで病魔のように彼女を蝕んでいたのだ。
レインは、考えを巡らせながら――ぽつりと独り言を言う。
「目の前の彼女なら――母上の魔力を……」
「……」
安易な返事はせずに、私は無言で彼の方を見つめた。
そう、この世界の魔力は同じ属性同士なら、譲渡ができるのだ。
扱うエネルギーが一緒のため、使っていないガソリンを他の器に入れるように……貰うことができる。これこそが、私はレインに交渉を持ち掛けた理由だ。
(ただし、リアーナだけは――誰からでも魔力をもらえて、与えられる……変な特性を持っているのよね。イレギュラーな魔法に続き……本人は全く知らないようだけど)
そのため魔力の受け渡しについては、たびたびこの物語でよく出てきていた。その魔力についてこそ……今この場では重要だ。
どうしてレインがラスボスになったのか――それは、国王がレインの母親の病魔の治療を理由に、レインを脅していたからだ。
「レインの母親の魔力と同じ者がいる――もし今後、王城に一生の忠誠を誓うのなら、その者が母親の魔力をすべて取り払ってやろう」と。
母親の回復の希望もあり、ギリギリまでレインは王城からの打診を受けなかった。
しかし母親の容態が悪くなり、もう手段が選べなくなった彼は――国王の提案を受け入れるのだが……。
(全部、国王サイドの罠だったのよね。彼の母親を治せる者なんておらず、そのまま母親は無残に亡くなり――彼は理性のタガが外れたように、王国に復讐をする。これを知ったのは、あくまでこのゲームの攻略本が出てから……キャラクターの背景で見て知ったのよね)
だからゲームをプレイしている時には、レインの事情なんてプレイヤーが知ることはできず――国王に反旗を翻した反逆者として映ったのだ。
しかし攻略本を読んでからは、まるっきりイメージが変わってしまって……。
(なんなら、国王の方がなんてあくどいんだろうって、不快に思ったのよね。けれど……今のレインはまだ、国王の提案を受ける前の時期だから……今こそがチャンス)
ここまでイメージが本当に変わってしまうのも珍しい気がしたが――今思えば、オリビアも父親と兄から教育虐待などといった酷い対応を受けて、暮らしているので……レインにはシンパシーを感じてしまう。
一方のレインは、私の真意を探るようにじっと見つめて来たかと思うと。
「あなたほどの有力な貴族が、どうして――今の生活を捨てる提案をするのでしょうか?」
「え?」
「フローレンス伯爵家は、魔法では秀でた家門だ。不自由な暮らしもなく、僕に頼るメリットがないように思うのですが……」
レインは、まったく理解ができないとばかりに私の瞳をじっと見る。
そんな彼の様子を見ると、先ほどのゴシップで沸いていた会場の様子は眼中になかったのだと察した。
(他人を噂では判断しない――公平な人、なのね)
でもだからこそ、すぐに納得させるのが難しいのだろう。
こうして、自分の目で見たことしか信じないような――そんな雰囲気を感じた。
そんな彼に対してだからこそ、私は、嘘偽りなく――レインを前にして言葉を紡ぐ。
「……有力な家が、必ずしも快適な家とは限らないと思いませんか?」
「まぁ、貴族におけるしがらみなどは――あるかもしれませんね」
私の言葉に、レインは一定の理解を示してくれた。
そんな彼に、私は畳みかけるように言葉を続ける。
「私は、自分が選択した場所こそ……何よりも代えがたい素敵な場所に思うのです。それが私にとって――公爵家の庇護下だと思っております」
「……ふむ。つまりは、伯爵家を捨てて――公爵家に養女として入りたい、と?」
「養女にするのかどうかは、公爵様にお任せします。私としては、服従の魔法を受けて――侍女として仕えることも厭いません」
「……」
「ただ――伯爵家には有無も言わせない……そんな場所で、自分らしく生きられたら、それ以上の望みはないと思っているのです」
「……まぁ、伯爵家によって害されず――安泰な生活はおくれるでしょうね。もしかしてあなたの望みはそこですかね?」
レインの問いかけは、私の望みをぴしゃりとあてるものだった。
彼の言葉を聞いた私は、彼の瞳をまっすぐに見つめて。
「欲を憚らずにいえば――まさしく、そうです。公爵様」
安泰な生活をおくりたいがために、この交渉を持ちかけました――と彼に言いきった。
すると彼は目を少し見開いたのち。
「ふ……そうですか……」
「公爵様……?」
「ふ、ふふっ、ここまであけすけに言われると――そうか……服従の魔法を受けてまでも、願うこと、ですか……」
レインは、面白いものを見つけたかのように笑みを浮かべた。
そしてその笑みから、真顔にかわったかと思うと――私に話しかけてきた。
「あなたには、未だに疑問が残っていて……正直なところ、懐疑的な気持ちが消えたわけではありません」
「……は、はい」
「確かにあなたが二つの属性の魔法を使えるのは、珍しくて――希少価値は高いですが……どうして僕に見せて来たのか、とても怪しく感じました。まるで、僕がそうした性質を求めていることを知っていて話しかけたのか――と」
「……っ」
レインの視線は鋭く、私の姿を射抜いた。その後彼は、言葉を続けて。
「そう思う一方で、あなたからは正直な態度も感じました。これほどまでに、直球な言葉を言われるなんて……なかなかないですからね」
「そ、そうですか……」
「僕としては、国王側の人間が公爵家に潜り込んでくるのが嫌なんです。しかしどうやら、あなたは服従の魔法を受ける覚悟もあるようだから……その前提があるのなら、あなたの魔法の素質における交渉をしてもいいと思ったんですよね」
レインの話を聞きながら、私は背中に嫌な汗をかく。
だって、彼が公爵として国王側の人間について否定的な意見を――彼は今ここで言っているわけだ。
(そんな政治的な発言を、私が聞いてしまっていいのかしら……)
不安を抱えつつも、私はレインに交渉を持ち掛けていることもあり、彼の答え――ないしは温度感を聞きたいと思っていた。
(もし考える時間が必要なら、これからの――私の伯爵家でのスケジュールも含めて、考えていきたいし……)
そう思いながら、私はレインの言葉を聞き続けていた。
すると彼は、自身の両手を合わせるようにしたかと思うと――。
「今話したことを踏まえて……あなたとの交渉について、決めました」
「!」
「提案通り、あなたを――公爵家の庇護下におきましょう」
その言葉を聞いて私は、嬉しくなって目を見開いた。
これで、伯爵家からの呪縛から逃げられると――そう思っていれば。レインは、言葉を続けて――。
「ただし……庇護下というのは――僕の妻になること、が条件です」
「……え?」
「僕の最愛の人……という立場になってほしい。そう言えば、分かりますか?」
「サ、サイアイの……ヒト……」
レインの言葉に私の頭は真っ白になる。彼は何を言ってきたのだろうか。
(そもそも服従の魔法を受ける覚悟はあるって言っているのに、どうして彼は私に妻になることを求めて……)
そうぐるぐると考えていれば、レインは私の姿を見て面白そうに目を細めたのち。
「もちろん、服従の魔法で僕に仕えてくれるのも魅力的だったんですが……僕は絶対の保証が欲しいんです」
「絶対の保証……?」
「服従の魔法はたしか、魔力量が大きいものが小さいものにかけられる魔法ですよね。あなたほどの魔法の才能があれば、成長によって――僕が持つ魔力量よりも大きくなる可能性がありますよね?」
レインの言葉を聞いて、私はハッとなる。
確かに魔力量の大きさによって、服従の魔法の効力が効かなくなることがあるが――それはほとんど起こりえないことだと思っていた。
現にレインのほうが魔法の手腕は上であり、私よりも魔力だって大きいはずだ。
「でも、僕の妻になる――婚姻の儀式をすれば……指輪にお互いの魔力を込めて、一生をかけての誓約ができるでしょう?」
「!」
(そうだ……この世界では結婚で指輪を交換することで……一生外れない契約ができるんだった……!)
私はあまり気にしていなかったゲームの設定を思い出す。
というのも、乙女ゲーム内で、「結婚」というのは、もはや物語のゴールであり、登場人物たちの今後の幸せを感じられるフレーバーのような存在だった。
きっとこれからは、お互いを思いやって暮らしていくんだろうな……素敵だな。そんなイメージなのだ。
その結婚で結べる契約を、レインはこの場に持って来たのだ。
「僕はその方が安心できまして……それなら、あなたとの交渉を受けたいのですが――いかがでしょうか?」
「……!」
「もちろん、妻となっても――あなたが望む安泰な暮らしを提供しましょう。それを指輪に願って、僕が守る誓約としてかければ……あなたも安心するでしょう?」
レインはニコニコとそう言った。まさか新しい提案を受けることになるとは、思ってもみなかった。
(結婚と聞いて……想像がつかなくて、焦ってしまったけれど……公爵家の庇護が受けられるのは、今の私にとって必要なもの)
伯爵家から出ていったあとも、暮らしを保証してくれる条件は願ったり叶ったりなのだ。
しかし結婚は……互いに夫婦という関係になるという意味もあるし、そう簡単に返事をしていいものなのか……。
「そ、その公爵様、失礼を承知ですが……夫婦になるということは、妻の務めも必要になるのでしょうか……?」
「妻の務め……ああ、跡継ぎのこととか、ですかね?」
「え、ええ……そのこととか……」
私は緊張感を持ちながら、おずおずと疑問を口にした。
公爵家で安泰に暮らせるのは、嬉しいが――レインが求める妻の理想像には応えられるか、自信がない。
そんな私の感情を理解したのか――彼は、柔らかな笑みを浮かべて。
「結婚は……手段であり、契約だと考えてます。僕が必要とする協力を、あなたが裏切りがなく――応えてくれること」
「契約……」
「だから、今回の契約でいうと――あなたの魔法の素質を利用できること、そして公爵家……ひいては僕を裏切らないこと。それを指輪で、契約したいと思っています」
「な、なるほど……」
「ゆえにあなたは――妻の務めをしなくても、構わないのです」
「!」
「もし契約違反を、僕の方から起こしたら――離婚したってかまいません。その時に、すでにあなたへの求めが完了していたのなら、その分の金銭面や庇護といったものを差し出してもいいでしょう」
レインの話を聞き、私は――あまりにも虫のいい話に、心が躍っていた。
つまり、レインの要望としてある……彼の母親の病状を回復させたら、その後の生活を保障してくれるという訳だ。
しかも妻の務めが義務ではないし、離婚だっていつでもできる。なんて最高な話なんだ。
(自分が生きていける保証があって、快適な暮らしを手に入れられる……こんなの、断る理由が一つもないわ……!)
それに伯爵家に縛られる身分が、結婚によって解放される。
もちろん、縁を切ったらそれまでだが――結婚して公爵家に籍を置くことで、不可逆的に伯爵家に戻ることは無いと言っていい。
そこまで考えた上で、私はレインの提案について――。
「公爵様の妻になりたく存じます……! なんなら、本日からでも……!」
前のめりで、答えた。するとレインは、一瞬だけ目を見開いたのち、笑みを深くしたかと思うと。
「ならば、交渉成立ですね。あらためて――」
「え?」
レインは、私の方へずいっと近づいてきたかと思うと。
ゆっくりと、私の片手を掬い取って、手の甲に優しくキスを落とした。
「……!」
「よろしくお願いしますね、僕の最愛の人――オリビア」
まさかの距離感に、私の心臓は驚いてしまって――鼓動が乱れまくった。
しかし目の前の公爵様に、変な態度を取ってはいけないと思い……顔が赤くなっていくのを感じながらも、なんとか私は口を開いて。
「よ、よろしくお願いいたします……公爵様」
「……あんなにも、疑う必要なんて……なかったかもしれませんね」
「え?」
「いえ、なんでも。ところで、先ほど言っていた……本日から結婚したいというのは、本気で言ってくれたとみて――いいんですよね?」
レインは私の手をゆっくりと放したかと思うと、不敵な笑みを浮かべながら、そう言葉を紡いだ。
そんな彼にたじたじになりながらも、私は返事をする。
「! は、はい……!」
「ふっ……そうですか。結婚は両者間の合意が取れていれば、問題ないので――本日に行うことは可能なのですが……ふむ、伯爵家への挨拶はした方がいいでしょうか?」
彼は私の目をじっと見つめてから、続けて。
「いや、しない方が――あなたの希望のようですね?」
彼の問いかけに、私は否定を言えなかった。
「……公爵様のおっしゃる通りです。一般的な結婚の進め方とは異なってしまうのですが……フローレンス家への挨拶をせずに、進めたいと思っております」
(今日の舞踏会のあとは――私が悪女だと糾弾されて家から追放される……つまり……)
そこまで計画をあらためて思い出した私は、レインの方を真っすぐと見つめて声をあげた。
「本日中には、きっともう――私は伯爵令嬢ではなくなっていると思いますが……あ……」
「どうしたのですか?」
先ほどは、魅力的な提案過ぎて忘れていたが――レインと結婚する時には、伯爵令嬢という身分がない私になる。
この世界では、貴族社会であり――こんな何者でもない私と結婚なんてできるのだろうか。
「そ、その……伯爵令嬢でもない私が、公爵様と結婚してもいいのでしょうか……?」
今更ながらの不安を、レインに伝えた。最初から、こうした不安を聞いておけばよかったと、後悔しつつ――おずおずと彼の方を見てみれば。
「全く、問題ありませんよ」
「……え?」
「もちろん身分があれば、周囲からの評判はよくなるのかもしれませんが――大事なのは、いかに魔法が使えるかについてです。だからフローレンス伯爵家も、魔法が使える養女をとったのでしょう?」
「……!」
「それにあなたは――これからは公爵夫人となるのですから、伯爵家の身分など考えなくていいのです」
レインは当然といった態度で、言い切った。
そんな彼の言葉を聞いて、私は背中を押されるような勇気を感じる。
(そうよね、この世界では魔法を重視している――身分や家族関係だけがすべてではないわ)
そう思い至った私は、しっかりとレインの方を見つめる。すると彼は、なんだか嬉しそうにほほ笑んでから。
「では、舞踏会が終わったあとに――伯爵家へあなたを迎えに行きます。指輪の準備もしなくてはいけませんから、少し遅い時間になりますが……よろしいでしょうか?」
レインの言葉を聞き、私はすぐに返事をした。
「はい……! 問題ありません……!」
「ふふ、良い返事ですね。では、またのちほど――再会しましょう、オリビア」
「は、はい! 公爵様……!」
レインは、そう言うと――バルコニーの手すりに足をかけて、宙へふわっと浮いた。
そして、上空に魔法陣を浮かべると……スッとその場からいなくなってしまう。
(い、今の魔法って、何かしら? 瞬間移動とか……? レインについては、過去背景しか本には載ってなかったから……)
彼が使い続けるイレギュラーな魔法の数々に、私は圧倒されていた。
さすがは、ラスボス。属性というくくりに縛られることなく、圧倒的な魔法の力があるようだ。
少しの間だけ、レインの魔法について考え込んだのち。
「公爵様が迎えに来る前に……私もしっかりと準備をしなきゃね……!」
ようやっと伯爵家から出ていった後の安心が――具体的に見えてきたのだ。
あとは伯爵家から、ちゃんと出ていくだけ。
(レインとの交渉が上手くいかなかったら、今日の追放イベントは起こさないように、最善を尽くす予定だったけれど――)
話がまとまったこともあり、私はバルコニーから廊下へと戻る。行くべきは……王城の庭園へ。
「しっかりと――追放イベントフラグを起こすために、悪女にならなきゃね」
私は前世で見た王城のマップ知識を活かして――リアーナがいるであろう庭園へと向かうのであった。




