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第9話「眠らぬ街と目覚めた声」

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


今回の第9話では、主人公レンたちの言葉が、少しずつ社会に波紋を広げていく様子を描いてみました。

まだ世界がすぐに変わるわけではありません。けれど、「声をあげること」によって、人の心が動く瞬間がある――そんな希望をこめたつもりです。


地味かもしれませんが、大切な転換点になる回です。

ぜひ、最後までお付き合いください。

夜明けの前。

都市は眠らない。眠れなかった。


レンが命を懸けて流した配信は、一晩で数千万回再生された。

“正義スコアの不正操作”――それは人々がうすうす感じていた違和感を、はっきりとした「言葉」に変えていた。


「やっぱり操作されてたんだ」

「“正義”って、数字じゃないよな」

「アイツ、生きてるのかな……?」


SNSでは「#正義は誰のものか」「#レンを探せ」「#見えない支配」がトレンドに。

だが、政府はなおも沈黙を続け、公式発表はない。

ただ静かに、各地で“何か”が変わり始めていた。


「……ここ、どこだ……?」


痛みとともに目を覚ましたレンは、病院ではなく、地下の古びた施設のベッドに寝かされていた。


「気がついた!」


ユナの目に涙がにじむ。

シンジも顔を見せ、「まだ言葉を話せるか」と小さく笑う。


「正義スコアのシステム、一部停止された。お前の配信が決定打になったよ」


「……本当に?」


「でもそれだけじゃない。政府が“お前を危険人物として隔離する可能性”を発表した」


「逃げる?」


「違う。……今度は“戦う”」


3人は再び街へと出る。

顔を隠しながら、しかし堂々と歩く。

すでに彼らの名を知る人々が、街中の至るところにいた。


「あなた……レンさんですか?」


震えるような声で女子学生が近づいてきた。


「私、あなたの動画で救われたんです。父が不当なスコア操作で仕事を失って……誰も信じてくれなかった。でも、あなたが言ってくれたから」


彼女の後ろから、大人たちも次々と集まってきた。

誰もが“何か”を信じようと、レンの言葉に耳を傾けていた。


突然、街の上空にホバードローンが現れる。

政府の無人機だ。


一瞬、空気が凍る。

誰かが叫ぶかと思った――だが、違った。


「この人を、渡すな!!」


叫んだのは、さっきの少女だった。

「彼が嘘を言う理由なんてない!政府こそ隠してる!」


若者たちが一人、また一人と立ち上がる。

その中心で、レンは静かに言う。


「……ありがとう。でも、僕は逃げない。これから“正義”を話しに行くんだ」


その言葉は、拡声器よりも遠くに、深く、響いていた。


その夜、SNSに新たな動画が投稿される。

タイトルはただ一言。


「正義は、誰かのためにあるものじゃない。全員のために、あるべきだ。」


それはかつて静かだった社会に、“答えではなく、問いかけ”を届けるメッセージだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回、レンの言葉に共鳴する人々が少しずつ現れ始めたことで、「正義スコア」という制度のひずみに、社会全体が目を向け始めます。

主人公の行動は小さなものであっても、誰かの心に届き、そしてそれが次の人の背中を押す。そんな連鎖が描ければと思っています。


次回は、いよいよ“正義”という言葉が試される展開になります。

引き続き、読んでいただけたらとても嬉しいです。

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