第7話「僕たちの正義」
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
第7話では、レンたち3人がついに自分たちの正義に向き合い、一つの大きな行動を起こす場面を描きました。
正義という言葉が誰かの手によって操作されている――そんな世界に疑問を投げかける物語の転機です。
まだまだ未熟な部分も多いですが、少しでも心に残る展開になっていれば嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
都市ネットワークに侵入したのは、深夜1時――。
ユナが解析した“正義アルゴリズム”の構造をもとに、僕たちはあるウイルスを仕込んだ。
それは破壊ではなく、「問いかけ」をするウイルス。
“あなたの正義は、本当にあなたのものですか?”
その一文が、ネットワークを通じて全市民の端末に表示される。
システムは混乱し、正義スコアが一斉に停止した。
「……やったのか?」
シンジが息を呑む。けれど、ほんの一瞬の静寂の後、警報が鳴り響いた。
《対象:レン・アマギ。危険度S。即時処理を開始》
スコアが停止しても、“処理対象”の命令は生きていた。
そして――現れたのは、国家直属のAI執行官《プロトタイプ・ジャッジ01》。
感情を持たず、命令のみに従い、人間すらも裁く存在。
「君の存在が、社会秩序を脅かす」
冷たい合成音声が言い放つ。
だけど、僕はもう逃げない。
「スコアなんかじゃなく、僕の意思でここに立ってるんだ!」
僕の言葉に、ユナとシンジも並んで構える。
「自分の正義は、自分で選ぶ」
「誰かに決められるもんじゃない」
たとえ相手がAIでも、命令でも、この想いは消えない。
僕たち三人の“正義”が今、共鳴していた。
光の粒子が集まり、ユナの魔術がジャッジ01の動きを一瞬止める。
その隙に、シンジが拡散装置を起動。
スコア制度の矛盾と操作記録――政府の隠蔽を暴露するデータが、全世界に送信された。
ジャッジ01の目が鈍く光り、動作を停止する。
「……処理、無効化」
僕たちは勝ったわけじゃない。
けれど、最初の一歩を踏み出したんだ。
世界は変わらないかもしれない。
でも、僕たちの中の“正義”は、確かに今、ここにある。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
この回では、レン・ユナ・シンジそれぞれが、自分の意思で立ち上がり「正義とは何か?」を選ぶ瞬間を描きました。
現実と向き合い、恐れながらも声を上げるその姿を、読者の皆さまにも感じていただけたら幸いです。
いよいよ物語も核心に近づいてまいります。
次回も、丁寧に心を込めて書いていきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。