第6話「決断の刻」
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
第6話では、レンが初めて“自分自身の正義”を言葉にする、物語の大きな転機となる場面を描きました。
悩み、揺れながらも自分で一歩を踏み出す姿を、丁寧に描けていれば嬉しいです。
いつも応援してくださる読者の皆さまに、心から感謝しています。
銃声の余韻が路地裏に響いていた。
僕、レン・アマギは、濡れたコンクリートの上に立ち尽くしていた。
手の中の端末が表示する正義スコアは、99.998――わずかに下がっていた。
「レン、早く!」
ユナの声が飛んでくる。敵の包囲は目前。
しかし、僕の足はその場から動けなかった。
なぜ、僕が追われているのか。
なぜ、“正義”であるはずの僕が、“反逆者”としてマークされるのか。
それは、正義スコアのシステムがすでに歪んでいるからだ。
この世界では、数字がすべてを決める。
正義も、信頼も、生死さえも。
けれど――
「僕は……僕自身の正義で、決める」
そう、初めて言葉にした瞬間だった。
誰かに刷り込まれた正義じゃない。
自分の心から湧き上がる、本物の想いを信じてみたくなった。
僕はユナとシンジを見た。
それぞれの信念と苦しみを抱えながら、ここにいる。
バラバラだったはずの僕たちが、今、同じ場所に立っている。
「反撃を始めるぞ」
その一言が、戦いの火蓋を切った。
端末に残されていた“正義アルゴリズム”の構造ファイルを解析し、
ユナが突き止めた弱点をシンジが拡散する。
そして僕は、“真の正義”とは何かを全世界に問いかける――
それが、僕にしかできない戦いだった。
スコアはさらに下がっていく。
99.997。
でも、もう数字なんて怖くなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この回から、レンたちはようやく“守られる側”から“立ち向かう側”へと動き始めます。
彼らの葛藤や成長を、少しずつ積み重ねながら描いていけたらと思っています。
次回も、少しでも楽しんでいただけるよう心を込めて書いていきます。
引き続き、よろしくお願いいたします。