第11話「揺れる光と決意の行方」
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
第11話では、物語が新たな局面に入ります。
レンの言葉が届いたあとも、すべてが順調に進むわけではないという現実。
「制度の闇」が個人に牙をむく中で、それでも希望を捨てない主人公たちの姿を描いています。
地味だけど大事な“転がりはじめた歯車”の音を、ぜひ感じ取ってもらえたら嬉しいです。
“変わったはず”だった。
社会は動き、制度は見直され、少なくともレンの言葉は届いたはずだった。
けれど現実は、そんなに甘くはない。
――その夜、レンたちが身を寄せていた施設が、正体不明のグループに襲撃された。
「ユナ、伏せろ!」
ガラスが砕け、煙が充満する。
レンはユナの手を引きながら、非常口に駆けた。
「これって……スコア至上派の残党か……?」
「たぶん。でも、それだけじゃない気がする」
施設の外、監視カメラが一斉に沈黙し、ネットも不通になっていた。
まるで“新たな力”が裏で動き出しているかのように。
その後の調査で、襲撃に使われた機材が“旧政府軍の廃棄リスト”から外れていたことが判明した。
つまり、誰かが組織的に動いている。
――正義スコアは、ただの制度ではなかった。
膨大な個人情報、心理解析、行動予測……裏で回っていたシステムは、軍事転用も可能だったのだ。
レンは知る。
自分たちが“信頼”だと思っていた数値が、実は“支配”の道具にもなりうることを。
「逃げるか?」
シンジが問う。
「逃げても、また誰かが代わりに狙われる」
「戦うってのか、今度は影と」
「……戦うんじゃない。暴く」
レンは自分の端末を開いた。
そこには、未公開だった正義スコアの中枢システムのログ――
ある人物が命を懸けてリークしてくれた、最深部のデータが残されていた。
「真実は、僕たちの手の中にある」
夜が明けた。
都市のビルの一つが、謎の大規模データ漏洩によって混乱していた。
それはレンたちが仕掛けた“告発”だった。
誰もが見えるように。
誰もが考えられるように。
「これは、正義という言葉に支配された時代の記録です」
そう始まる配信映像は、やがて“真実”と“闇”の境界を消していく。
ユナがそっとつぶやいた。
「私たち、いま……何と戦ってるんだろうね」
レンは静かに答える。
「“信じたい気持ち”と、“信じるふり”の違いかもしれない」
風が吹いた。
彼らはまだ旅の途中。
でもその足元には、確かに“希望”が残っていた。
最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。
今回は、物語の「裏側」にある動きが見え始める回でした。
主人公たちの前に立ちはだかるものは、もう“数値”ではなく、もっと複雑で得体の知れない存在です。
それでもレンは、“暴力”ではなく“真実”で立ち向かおうとしています。
読んでくださる皆さまにとっても、考えるきっかけになれば嬉しいです。
次回はいよいよ、物語が核心に近づいていきます。
引き続き、どうぞよろしくお願いします。