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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

反省はする、後悔はしてない

作者: こうじ

「うちの畑で採れた野菜、良かったら貰ってよ」


「ありがとうございます」


「いつも村を護ってくれてるからね、これぐらいはお礼しないと」


 村の見回り中にお婆ちゃんから野菜を貰い袋に入れた。


 毎日何かしら頂いていて恐縮なんだけど厚意は嬉しい。


 王都にいた頃とは違う充実した気持ちになる。


 私がこの村に来て1年が経つ。


 最初は見えない壁があったけど、今ではすっかり打ち解けている。


 まさか私が田舎の村で警備兵になって満足しているなんて思わなかった。


 1年前までは私はこの国の貴族学院に通いつつ王太子の警護をしていた。


 私の父親は騎士団長で私も将来は父の跡を継ぎ騎士団に入る予定だった。


 しかし、その予定が大きく狂わされる事になったのは私が学園内で殺傷沙汰を起こしてしまったからだ。


 別に気が狂った訳ではなく王太子に近づこうとした男爵令嬢を背後から斬り捨てたのだ。


 この男爵令嬢は王太子に度々近づき馴れ馴れしい態度をとっていた。


 何度も警告をしていたのだが聞き入れる事は無かった。


 私としては怪しい人物から王太子を守る為に止むなく斬った。


 ただ、その場所は生徒の多くが集まる場所で目撃した生徒達はパニックを起こす事になった。


 目の前で人が死んだんだから当然だろう、と思う。


 私は事情を説明してお咎めは無かった、しかし混乱を起こしたという事で最初は停学処分となった。


 でも最終的に私は自主退学を選択する事になった。


 更に私は実家から勘当される事になった。


 お気に入りだった男爵令嬢を目の前で殺された事が王太子は気に入らなかったらしい。


 更に言えば私の悪評が立ち社会に出ても見る目はかなり厳しいだろう、と父親が判断した。


「お前が間違った事をしていないのは分かっている。 儂が小さい頃からそう教育してきたからな。 ただ例え正しい事をしたとしても時に理不尽な事が降りかかるのも世の常だ。 決して不貞腐れるではないぞ、信念を持っていれば正しさは必ず証明される。今は修行の時と思え」


 父からそんな言葉を貰った私は家を出て冒険者ギルドに登録した。


 そして依頼の中で田舎の村の警備の仕事を引き受ける事にした。


 畑を襲う魔獣を退治したり泥棒を捕縛したりと忙しい日々を送っていたが感謝される事で心が満ちていく事に気がついた。


 そういえば王太子や周囲から感謝の言葉を言われた事なんて一回も無かった。


(そうか、王太子の警護をしていても余りやる気が出なかったのはそういう事か)


 その事に気がついただけでもこの村に来て良かった、と思っている。


 そんな日々を過ごしていたある日、突然父が訪ねてきた。


「久しぶりだな、1年前よりも良い顔をしているじゃないか」


「お久しぶりです、騎士団長殿」


「儂は騎士団長の座を降りたんだ、妻とも別れた」


「えぇっ!? 母上とですかっ!?」


「あぁ、辞める辞めないで揉めてしまってな……」


「まさか私のせいで……」


「違う違う、ただ単に仕事に疲れてしまっただけだ」


 しかし、父は騎士団長の仕事に誇りを持っていた、それなのに自ら辞めるなんて……。


「あぁ、そうだ。 王太子だがな死んだぞ」


「死んだっ!?」


「あの後別の男爵令嬢が言い寄って来てな、甘い言葉に誘惑された結果、毒を盛られて呆気なく死んだ。 お前の後に別の警護が付いたんだが責任を取らされて処刑された」


 私がいなくなってからそんな事があったなんて……。


「だから、お前が男爵令嬢を斬り捨てた行為は正しかった事が証明され貴族内でもお前の悪評は消えつつある、それで勘当を解いた方が良いんじゃないか、という声が出たんだ。 なんとも勝手な話だよ、『家に傷が付く』とか言って勘当を勧めたんだぞ、それで貴族なんて勝手なもんだ、と嫌気が出てしまってな」


 こうして私は父と再び暮らす事になった。


 その後、王国は緩やかに衰退していく事になるのだが私には関係の無い話だ。


 私は私を認めてくれる人達に囲まれその人達を護る為に今日も剣を振るっている。


 


  


 



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